ベルリンのLGBTQ+イベントに車両が突入

7月25日午後10時頃(現地時間、日本時間26日午前5時)、ベルリン市中心部にあるティ―アガルテン公園周辺で開催されていた性的少数派のイベント「クリストファ―・ストリート・デー」(CSD,プライド・パ―ティ)に参加していた群衆に向かって白色のバーンの車両が猛スピードで突入し、死傷者が出る事件が発生した。警察側の発表では、1人の若い女性が死亡し、29人が負傷、そのうち数人は重傷を負った。

ベルリンのCSDイベントの風景、CSD公式サイトから

ドブリント連邦内相は26日午後2時過ぎ、現場で記者会見を開き、「事件は明らかにイスラム過激派によるテロ事件だ」と指摘した。警察側は21歳のドイツ国籍を有する男アブドゥル・B(Abdul B.)を容疑者として特定し、犯行後逃げた男の行方を追っている。

容疑者は2005年ドイツ生まれのドイツ国籍者で、レバノンにルーツを持ち、母親は2002年にドイツ国籍を取得している。ドイツのメディアによると、男はシリアでイスラム過激テロ組織「イスラム国」(IS)に入ろうとしたことがあったという。容疑者は以前、懲役1年10ヶ月(執行猶予付き)の判決を受けたが、今年5月に保護観察付きで釈放されたばかりだ。

警察の広報担当者は、「男は身長約190センチ、黒髪で、黒いパーカーと白いズボンを着用している。武器を携帯している恐れもある。警察の捜査対象として以前から知られており、男はベルリンのイスラム過激派のコミュニティと関わりがある」と述べた。

警察の発表では、犯人はレネー通り(Lennestrase)と並行して走るアーホルンシュタイク(Ahornsteig)という通路をバンで走行した。そこで数人に衝突し(あるいは轢いた可能性もあり)、その後、車両は木に激突した。運転手は車から降り、行方不明のまま逃走したという。

事件は、車が木に衝突して動かなくなった後、車外に出て刃物(刃物状の武器)で周囲の数人をさらに切りつけたという目撃証言が相次いでいる。目撃者の証言によると、数人が刺されて負傷しており、黒い服を着てマチェーテ(大型の刃物)を持った男を見かけたという。容疑者Bのほか、別の男がいた可能性も排除できない。

ドイツ民間放送ニュース専門局ntvによると、車両にイラン国籍の男の同乗者がいたという。警察側は25日夜、その男を逮捕した。逮捕されたイラン人男性が今回のテロ計画にどの程度関与していたのか、あるいは単なる同乗者だったのかについては、警察が調査中という。

同事件を受け、ベルリン市内には2,200人以上の警察官が動員され、重武装した部隊や私服警官も投入された。さらに、市内全域で数百人の警察官が警備にあたった。特殊部隊がシェーネベルク地区にある容疑者Bのアパートらの捜索を行った。

ドイツ通信社(dpa)によると、容疑者はベルリンに家族がおり、実際に車両を運転していたのか、あるいはその白いバンの所有者が誰なのかは不明。警察の広報担当者は、その車両がレンタカーではなく自家用車であったという。

約70万人がゲイやレズビアンの権利運動を記念する「クリストファー・ストリート・デー」に参加していたが、事件発生後、主催者はイベントの中止を決定した。

事件直後、メルツ連邦首相は今回のテロ行為を強力に非難し、「我々の社会への攻撃だ。この恐ろしい行為が徹底的に捜査され、犯人が厳罰に処されるよう強力に推進する」と声明を出した。また、カイ・ヴェグナー・ベルリン市長は26日の記者会見で、「自由で開かれた明るいベルリンが昨夜、暗躍の中に陥った」と憤りを表明した。

ドイツの主要メディアは、事件の凄惨な状況や目撃者の証言を速報するとともに、「多様性と寛容さ」への標的リスク、数十万人が集まるヨーロッパ最大級のLGBTQ+イベントの終着点(ティーアガルテン公園付近)が狙われたことから、多様性を尊重する開かれた社会そのものがテロの標的にされたと重く受け止めている。

今回の事件は、2016年に12人が死亡した「ベルリンのクリスマスマーケット襲撃事件」や、2025年に近くのホロコースト記念館付近で起きたシリア人男性による刺傷事件を想起させる、といった論調も聞かれる。

なお、クリストファー・ストリート・デー(CSD)という名称は、1969年にニューヨークの「クリストファー通り」で起きた、LGBTQ+当事者による権利擁護を求めた反乱に由来している。

ちなみに、容疑者Bはシュパンダウ地区にある市民農園で警察官によって射殺された。ドイツのメディアによると、ベルリン市(州)の内務当局および同市警察は容疑者Bの死亡を確認した。警察によると、容疑者は刃物を持って警察官に襲いかかってきたが、警察官に撃たれ、蘇生措置が講じられたものの、26日午後6時34分(日本時間27日午前1時34分)に死亡が確認された。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年7月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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