投資対象の価値を確信すれば投資で損をしないのだ

満期10年の国債があり、利息が満期時に複利計算で一括して支払われるとする。これを満期まで保有するとき、国家財政が破綻して償還不能にならない限り、投資時点で収益率は確定していて、損失の可能性はない。当然に、その間、市中金利の変動に応じて、価格は下落し得るが、そうした価格の下落は損失ではない。ただし、何らかの事由で現金化する必要に迫られ、投資対象の国債を売却せざるを得なくなったとき、価格が下落していれば、損失が発生し得る。故に、損失を回避するためには、現金化が強制される事態を回避しなければならないのである。

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現金化が強制される事態とは、典型的には、投資される資金に使途が予定されているのに、使途が具体化するまでの期間と投資の期間とが一致していないときである。例えば、投資対象の価格の一時的な下落は、遠い将来の老後生活のために若い勤労層が行う資産形成においては、損失にならないが、高齢者が年金の補完として定期的に取り崩している途上の資金においては、損失になり得る。

また、価格の下落が心理的動揺を惹起し、理性の冷静な判断能力を失わせて、狼狽のもとで現金化に至ることは、心理的強制と呼び得る事態であって、損失の原因の代表例になっている。更に、金融機関などでは、リスク管理手法として、価格が決められた範囲を超えて下落したときに現金化することを内部規則にしている事例が多く、この場合は、組織的強制が損失を確定させているのである。

故に、損失を回避するためには、資金使途との関係において、投資期間が適切に定められていなければならないほか、心理的動揺を克服することや、投資目的に適合した組織統制の設計など、様々な工夫が必要なのであって、そうした工夫を凝らすことが真のリスク管理なのである。

では、例えば、心理的動揺は、どうすれば克服できるか。その方法は、投資対象の価値について確信をもつこと以外にない。つまり、価格が下落したときに、改めて価値の評価を行い、価値の毀損に起因した下落ではないと確信できれば、安心して保有を継続できるわけだし、価値よりも低い価格を絶好の投資機会にすることができるのである。

投資において、投資対象の価値の分析が重要な意味をもつのは、第一に、価値のある投資対象を選択している限り、投資対象に内包された利益が自然に生成してくるからであり、第二に、価値に対する確信を形成することで、価格変動が発する雑音を無視して、一貫した投資方針を堅持できるからである。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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