備蓄米を売ったら今度は買い戻す? 鈴木農政はコメ価格を下げたくないのか

農林水産省が、2025年に市場へ大量放出した政府備蓄米を、今度は買い戻そうとしている。

鈴木憲和農相は7月28日の記者会見で、2026年産米の全国の作柄がおおむね分かる8月末をめどに、買い戻しの時期や数量を判断すると説明した。

政府備蓄米は現在約32万トン。適正水準とされる100万トンを大きく下回っており、災害や不作への備えとして在庫を戻す必要がある。

しかし今回の買い戻しには、別の意味もある。

小泉農政の「増産」から方向転換

2025年のコメ高騰を受け、小泉進次郎前農相は備蓄米を大量放出し、コメの増産へとかじを切った。

一方、鈴木農相は就任後、「増産ありき」ではなく「需要に応じた生産」を強調している。

2026年5月時点の主食用米の生産意向は733万トン相当で、農水省が想定する最大需要711万トンを上回っていた。供給過剰による価格下落を警戒し、生産量を抑える方向に政策が戻りつつあるようにも見える。

コメはすでに余り始めている

実際、足元ではコメ不足よりも在庫増加が問題になり始めている。

農水省によると、6月末の2025年産米の集荷量は前年より増えた一方、販売量は減少。民間在庫は194万トンと前年より72万トン増えた。つまり、コメは集まっているのに売れていない。

通常なら、供給が需要を上回れば価格は下がる。しかし、そこで政府が数十万トン規模のコメを備蓄用として購入すれば、市場に出回るコメは減り、価格下落にはブレーキがかかる。

政府がコメ価格を下支えするのか

元農水官僚の山下一仁氏は、今回の買い戻しについて、民間に積み上がった在庫を政府在庫へ移し替え、米価を維持する政策になると批判している。

【参照リンク】小泉進次郎の政策を全否定…鈴木農水大臣がコメ増産を止めさせ、備蓄米の”買い戻し”を狙う本当の理由 プレジデントオンライン

小泉進次郎の政策を全否定…鈴木農水大臣がコメ増産を止めさせ、備蓄米の"買い戻し"を狙う本当の理由
コメの民間在庫が過去最大級まで積み上がる一方、店頭価格はなお高止まりしている。元農水官僚で武蔵野大学国際総合研究所研究主幹の山下一仁さんは「与野党の農林族議員は備蓄米の買い戻しを求め、鈴木憲和農水大臣も前向きだ。しかし、これはJAが抱えた在...

もちろん、政府には備蓄を回復する必要がある。しかし、2025年には「コメが高すぎる」と備蓄米を約59万トン放出し、2026年には価格が下がりそうになると買い戻すのであれば、政府自身がコメ価格を調整しているようにも見える。

鈴木農相はコメ価格について「民間の取引環境の中で決まる」と説明してきた。だが、政府が巨大な売り手にも買い手にもなる以上、もはや市場の傍観者とは言えない。

小泉農政は供給を増やして価格を下げようとした。それに対して鈴木農政は、生産を「需要に応じた水準」に戻し、余ったコメを政府が買い上げようとしている。

備蓄米の買い戻しは本当に食料安全保障だけが目的なのか。それとも、下がり始めたコメ価格を支えるためなのか。8月末以降に示される買い戻し数量が、鈴木農政の本当の方向性を示すことになりそうだ。

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