出口里佐です。

老人ホームの近くで咲いていた、夏の花、むくげ。
故郷・青森へ帰るたび、最後に食べたくなる味があります。

青森の老人ホームの玄関に飾られた、ねぶた。ねぶたのお囃子も流れていました。
外出できない入館者を少しでもなごませてくれる工夫が嬉しいです。
今回の帰省も、老人ホームで暮らす母を訪ねる一泊二日の旅でした。母と一緒に買い物へ出かけ、青森駅周辺を歩き、短い時間でしたが穏やかなひとときを過ごしました。
青森は、まもなく一年で最も賑わうねぶた祭を迎えます。しかし私が訪れたのは、その数日前。街には祭りを待つ静かな空気が流れていました。

JR青森駅改札口までの階段横の金魚ねぶた。静かに夏祭りを待っています。
JR青森駅に入ると、金魚ねぶたがガラス窓に沿って可愛らしく飾られています。数日後には街中がお囃子と「ラッセラー」の掛け声に包まれるのでしょうが、この日は夕暮れの光の中で、金魚ねぶたが静かに揺れていました。その穏やかな風景に、故郷ならではの夏の始まりを感じます。

青森駅ビル、ラビナ1階の青森食堂。外の玄関。
1日目の夕食に訪れたのは「青森食堂」です。

手前から時計回りに、イカメンチと青森りんごの黒酢餡、ほやポン酢、けの汁、嶽きみの天ぷら
注文したのは、津軽の郷土料理「けの汁」と、いかメンチ、ほやポン酢など。

けの汁。わらびなどの山菜、たけのこ、人参、大根、こんにゃくなどが、味噌汁のなかに入っています。
毎年お正月が終わる頃、いただいていた懐かしい味です。
けの汁は、大根や人参、ごぼう、山菜などを細かく刻んで煮込む津軽を代表する家庭料理です。私にとっては、母の味でもあります。毎年一月七日になると母が作り、東京で暮らすようになってからも具だけを冷凍して送ってくれました。私は自宅で味噌汁を作り、その中へ入れていただいていました。祖母は、乾燥させたみかんの皮を削って陳皮として加えると香りが良いと教えてくれました。
料理には、その土地の記憶だけでなく、家族との時間まで閉じ込められているのだと改めて感じます。

ライトアップされた八甲田丸。
青森駅ビルの青森食堂での夕飯の後、少しお散歩。
翌日、東京へ戻る前に夕飯に立ち寄ったのが、青森空港のレストラン「ライアン」です。
ここへ来ると、いつも迷います。
長谷川牧場の豚ロースステーキにするか、それともポークジンジャーにするか。今回は豚ロースステーキを選びました。

長谷川牧場豚ロースステーキ(1750円)。
味噌汁、漬物、ご飯の定食(プラス500円)にもできます。
焼き色の美しい厚切りの豚肉は、しっとりとやわらかく、脂には上品な甘みがあります。添えられたわさびを少し付けると、後味がさっぱりとして、最後まで飽きることなく楽しめます。空港のレストランとは思えないほど、青森らしい食材の魅力を感じられる一皿でした。
もう一品、「青森サーモンのバジルソースカクテルサラダ」もいただきました。

青森サーモンのカクテルサラダ、バジルソース。見た目よりも、野菜たっぷり。
バジルソースが本格的な美味しさ。
正直なところ、サーモンの量は想像より少なめでしたが、新鮮な野菜と爽やかなバジルソースの相性が良く、添えられた香ばしいバゲットも美味しく、前菜として満足できました。豪華さを競う料理ではありませんが、地元の食材を丁寧に味わわせてくれる一品でした。
青森空港に向かうバスに乗る直前、JR青森駅2階のNewDays東口待合では、ねぶたの花笠をかぶった「あおもり 跳人パンダバウム」を見つけました。

あおもり跳人パンダバウム(594円)。
頭の花笠がモコモコと可愛い!
東京でも見かける、「型ぬきしながら、食べるバウム。」
しかし、青森限定という言葉と、どこか愛嬌のある表情に思わず足を止めます。祭りは山車だけではありません。駅の金魚ねぶたや、こんなお菓子にも、街全体が少しずつ祭りの装いを整えていく様子が表れています。
世界には、美味しい料理を味わえるレストランが数え切れないほどあります。
それでも故郷には、「また帰ってきた」と思わせてくれる味があります。

青森空港に向かうバスからの、夏の夕焼け。
祭りを待つ静かな青森で、母と過ごした時間、郷土料理、そして地元の食材を味わいながら、故郷には派手さではなく、心を穏やかにしてくれる豊かさがあることを、改めて実感しました。

青森ねぶた祭は8月2日〜7日。来週からはこんな風に賑やかになるのでしょう。
iStock/smoke







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