黒坂岳央です。
SNSでは「20〜30代は海外旅行や体験にお金を使え」という意見と、「若いうちから資産形成を始めないと手遅れ」という意見がよく対立する。
筆者の結論は「20代は仕事に全力を注ぎ、そのうえで生活防衛資金と最低限の積立だけ確保したら、残りの時間とお金は遊びに使うべき」と思っている。理由は3つある。

LeoPatrizi/iStock
若さには締切がある
金融資産は後から増やせるが、20代という時間は二度と戻らない。20代でしか出来ないことはあまりにも多いのだ。「楽しみは後で取っておく」が出来ないのが人生である。
例えば語学留学は、お金さえ払えば何歳でも参加できる。しかし現実には、40代、50代になって10代20代の輪へ飛び込む心理的ハードルは高い。仮に自分がそうしたくても、若者が中年を受け入れるかはまた別の話だ。そして恋愛も年齢とともに難易度は上がるし、長期旅行は体力の問題が出てくる。
筆者は現在40代で筋トレを続けており、20代より体力には自信がある。毎年、長期休みに子どもを連れて数週間のバカンス旅行へ行くのだが、4〜5日を過ぎた頃から明らかに疲労が蓄積する。小学生の子どもですら途中で息切れする。もし60代なら、同じ旅行はとてもできない。
筆者が沖縄で夜の月と星を見に行くオプショナルツアーに参加した際、家族連れで参加していたグループの高齢女性が「ごめんなさい。私はここまで。これ以上体力がもたない」と棄権してずっと車で待機していた。おそらく、この家族の祖母なのだろうが、年を取るとこういうことは誰の身にも起こる。
お金で買えるのは飛行機の座席やホテルの快適さであって、若さや体力そのものではない。20代にしか楽しめない遊びには、明確な締切がある。
遊びは「未練」を消してくれる
筆者が遊びを勧める最大の理由はここにある。
筆者は10代でニートになり、20代前半は派遣で働きながら、稼いだお金をほとんど旅行に使った。青春18きっぷで日本中を回り、友人と朝まで語り、車中泊もしながら、とにかく遊び尽くした。毎月、給与はすべて遊びに使い尽くしてまったく貯金はなかった。
すると数年して遊びに飽きたのである。「もっと遊びたい」という欲求が自然に消え、「やるべきことから目をそらして、頑張らずに遊んでももう面白くない」と感じるようになった。そこで初めて、勉強や仕事へ本気で集中できるようになった。
一般に遊びは「消費」と考えられがちだ。しかし筆者は違うと思っている。本気で遊ぶことは、「遊びへの未練」を消す投資でもある。満足するまで経験した人ほど、次のステージへ進みやすい。
逆に遊びきれなかった人は、社会人になってからも「もっと遊びたかった」という気持ちを引きずりやすい。
投資は30代からでも十分追いつける
もちろん、資産形成を早く始めた方が有利なのは事実だ。
例えば25歳から35歳まで毎月5万円を年5〜7%で積み立て、その後65歳まで運用すれば、数千万円規模の資産になる。この数字自体は否定しない。
ただし比較すべきなのは金融資産のリターンだけではない。遊びによって得られる経験、人脈、価値観、そして仕事への集中力といった人的資本へのリターンも考えるべきだ。
筆者自身、20代はほとんど貯金をしなかった。社会人になってからは資格取得、専門スキルの習得に使い、30歳くらいから週末起業を始めた。何度も失敗しながら30代半ばで事業が軌道に乗り、その後は会社員を辞め、資産形成も一気に進んだ。
「起業という再現性のない話を持ち出すな」と怒られそうだが、自分が仮に起業しなくても、転職による年収アップと投資を間違いなく継続していたので、30代から資産形成を加速させることは十分可能だったと思っている。そして着実なスキルアップと転職は他の人もやろうと思えば再現性がある話だろう。
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若いうちは、お金の複利ばかりが注目される。しかし20代の時間にも複利では取り戻せない価値がある。体力、多感さ、恋愛、市場価値、同世代との一体感。これらは金融商品では買えない。
だから筆者は、生活防衛資金と税制優遇制度による積立だけ自動化したら、残りは思い切って遊ぶことを勧めたい。遊びは本気でやれば、いつか飽きる。飽きて未練が消えたとき、人は初めて次のステージへ迷いなく進める。だから20代は、仕事に全力を尽くし、その余剰は迷わず遊びに使えばいい。
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