「収入増でも生活費を上げない」が難しすぎる理由

黒坂岳央です。

SNSでは繰り返し「収入が上がっても生活レベルを上げるな、一度上げたら戻せない」という話がある。

自分はこの助言を真に受け、徹底した側の人間だった。サラリーマン時代の10倍以上の年収になってもまったく家賃を上げず、むしろ地方の田舎町に移住して生活費が下げたくらいだ。

しかし、今はかなり生活費を上げた。これは「せっかくだから贅沢を楽しもう」などと思ったわけではない。「生活費を上げないのは経済的合理性のため」と思っていたが、実はその逆なのだ。持論を述べたい。

環境への投資

なぜ所得の増加に伴って自然に生活費を上げるのか?その理由はシンプルで「贅沢」ではなく「環境への投資」になるからだ。

たとえば家族が増えれば、車を持つようになる。その気になればベビーカーを押したり、徒歩と電車を駆使すれば移動は従来のまま可能だ。だが、収入が増えるということは時間単価が上昇することを意味するので、「車で時短する方が自動車メンテ費より合理的」ということになる。

また、割高な国産野菜を購入して健康投資をするほうが、外食をして健康を損なうよりトータルでは得をする。この場合、「所得が増えたからおいしい食事にもこだわろう」などと思っているのではなく、「栄養価の高い野菜豊富な食事をして、病気を避けることで稼働時間を最大化する」というリターンを取りに行くことを意味する。

このように「総合的な環境への投資」という側面が出ることで「生活費を上げる方が合理的」というブレークイーブンポイントが見えてくるわけだ。

マイホームへの不動産投資

筆者は引っ越しに際してハイグレードな家を購入した。これは「見栄をはって自慢するため」というより、「トータルで最も得する」と考えたからだ。

たとえば築35年ボロ戸建てで土地値だけの家を買う、というおすすめをする人がいる。こうなるとウワモノ価格はゼロになるので土地がインフレすれば損をしない。極めてディフェンス力が高い投資なわけだ。

筆者はこれを知っていたが、今のハイグレードな家を買った。その理由は「35年ボロ戸建てで実質コストゼロ」より得をするからだ。

実は今の家は前の売主が売り急いでいたのでほぼ購入価格で売ってもらえた。だが昨今の建築費高騰や土地のインフレを考慮し、周辺の家相場を考えると「どんなに少なく見ても1000万円くらいは含み益が出ているでしょう」と言われた。買った時から含み益が出ているので、ボロ戸建てより得する。このように流動性が高く、ニーズのある条件の物件は探せば同じような事ができる。

また、自分昔、仕事に集中するために有料の自習室やレンタルオフィスを借りて外に仕事場をしていた時期がある。だがこれは移動時間はかかるし、弁当の準備も要る。だが、今は防音工事を施した家で仕事をしているので、雑音はゼロ、移動ゼロ、弁当準備ゼロとなった。これで外部のレンタルオフィスよりも生産性が高く仕事が出来るようになった。

当時の自分は、安い家に住み続けることを倹約だと信じていた。だが実態は、防音も作業環境も欠いた住居に居続けることで、レンタルオフィス代や移動の手間という余計な支出を毎日払い続けていた。節約のつもりが逆だったわけだ。

環境への投資

また、生活費は子供の成長と強く結びついている。子供は受ける教育レベル、周囲の子供のレベルにとてつもなく大きな影響を受けるため、良い教育を求めるのがどの親も意識することだ。そうなると、必然的に生活費は上がることになる。

筆者が前の家に住んでいた頃、子供に英語を教えているというだけで周囲から驚かれた。「意識が高い!」と言われ、英検を取らせれば「すごい」と評価された。周囲では珍しく見えたようだった。

だが今の家は違う。両親が医師や経営者という家庭が珍しくない環境で、子供は週6で習い事、塾、家庭教師に通う子はチラホラいる。英語も同様で、以前は息子が完全にトップを独壇で走っていたが、今は多くの子が必死に勉強して、今やトップの座を追われる立場になった。結果として息子自身が「絶対に負けたくない」とこれまで以上に必死に勉強するようになった。

本人は周囲のレベルが上がったことでプレッシャーもあるだろうが、若い頃は圧力は高めくらいが頑張る動機になるのでちょうどいい。これは環境と教育への投資なのだ。

「生活費を1円でも減らしたい」となれば引っ越しなどしなければいいわけだが、自分は「子供への教育や環境を整える」という視点で生活費を上げることがトータルで合理的だったのだ。

もちろん、生活費を上げる必要がないものもある。スマホの通信キャリアは無理して大手を選ぶ必要もないし、車も背伸びして高級車を買う必要もないだろう。だが、何でもかんでも「値札さ一番安いもの」は逆にコスパが悪くなる。

ある程度、収入が増えたらブレークイーブンは今より上がるのだ。だから所得が増えたら生活費は上げないと、機会損失となってむしろ損をする。

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Z世代を甘やかすな」(著:黒坂岳央)

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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