ベッセントが激怒したWSJの暴露:NY連銀を使って日本に融資

ベッセント米財務長官が、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の記者に激怒している。

ウォール街連邦準備制度のハイライトの一つは、WSJのニック・ティミラオスみたいな、ジャーナリストのふりをする速記者たちが、事前に情報をかみ砕いてもらわないと本物の経済や金融政策分析なんてできないから、連邦準備制度の裏方ゴシップを報道する羽目になるのを眺めることだった。

日本の円買いをNY連銀が融資

米財務長官が大手紙の記者をここまで露骨に攻撃するのは異例である。ベッセント氏を怒らせたのは、ティミラオス記者が書いた「ベッセントはなぜ日本円を支えるためFRBに圧力をかけているのか」という記事だった。

WSJによると、日本政府はFRBのFIMAレポ資金を利用してドルを調達し、そのドルを売って円を買う計画だという。ベッセント氏は、現在1か国当たり600億ドルとなっている利用上限を引き上げるようFRBに求めている。

正確には、日本がすでにNY連銀から資金を借りたことが確認されたわけではない。WSJが報じたのは、日本が今後この制度からドルを引き出す計画と、そのためにベッセント氏が利用枠の拡大を働きかけているという事実である。

しかしベッセント氏自身、CNBCのインタビューで、日本が制度を利用することを歓迎すると述べ、「相手国が担保を差し入れ、われわれが介入資金を貸す」と説明している。資金供給の構図そのものを否定しているわけではない。

コロナ危機用の制度を為替介入に転用

FIMAレポは、外国の中央銀行や通貨当局が保有する米国債をNY連銀に一時的に差し入れ、代わりにドルを調達する制度だ。

2020年のコロナ危機では、ドル不足に陥った各国が米国債を一斉に売却し、米国債市場が混乱した。その再発を防ぐ目的で設けられ、2021年に常設化された。

取引期間は原則として翌日物または7日間で、米国債が担保となる。したがって日本への無担保融資でも、米国民の税金をそのまま日本に渡す制度でもない。FRBも、担保と値洗いによって為替リスクや信用リスクは基本的に負わないと説明している。

問題はリスクではなく、何のために使うかである。本来は世界的なドル不足や米国債市場の機能不全に備える安全網だった。それを今回は、日本政府による円買い介入の資金調達に使おうとしている。WSJが「日本の円防衛への資金供給」と表現したのは、この用途変更を指している。

本当に守りたいのは円ではなく米国債

日本政府は約1兆1400億ドルの米国債を保有する世界最大級の債権者である。通常、円買い介入を行う場合、日本は外貨準備にあるドル資産を取り崩す。その過程で米国債を大量に売れば、米国債価格が下落し、米長期金利が上昇する可能性がある。

そこで日本は米国債を売却せず、それを担保にNY連銀からドルを借りる。そのドルで円を買えば、米国債市場への直接的な売り圧力を回避できる。

つまり、この仕組みで助かるのは日本だけではない。巨額の国債発行と長期金利上昇に直面している米財務省にとって、日本による米国債売却を防ぐことは切実な問題なのだ。

表向きは「日本円の安定化」だが、実態は米国債市場の防衛でもある。ベッセント氏が心配しているのは、円より米国債なのではないか。

なぜベッセントは激怒したのか

WSJの記事は、FIMAレポ利用の基本的な事実だけを暴露したわけではない。ベッセント氏はすでに制度拡大を公然と主張しており、日本政府が利用することも歓迎していた。

記事が突いたのは、米財務省が外交・為替政策のためにFRBのバランスシートを使おうとしているという、より政治的な問題だった。

FIMAレポの上限変更には、FRBの金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)の同意が必要になる。ベッセント氏が命令できる制度ではない。利用が膨らめばFRBの資産は一時的に増え、バランスシート縮小という方針とも矛盾する。

ベッセント氏は、WSJの記事のどの事実が誤っているのかを具体的に示していない。代わりに記者を「速記者」と呼び、情報源を「FRB内部のうわさ」と攻撃した。

これは推測だが、ベッセント氏が本当に不快だったのは、制度の存在を報じられたことではなく、財務省がFRBに圧力をかけているという舞台裏を描かれたことだろう。

これは日本政府にとっても重要な問題である。米財務長官が半年もかけて日本が為替介入で米国債を売らないように仕組んだのは、いま危機的な金利水準にある米国債をこれ以上売るなというメッセージである。「外為特会ホクホク」で財政バラマキや減税の財源はいくらでも出てくると思っていた高市首相にとっては痛手になるだろう。

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