なにも決めないとどんどん円安に戻りますよ
高市さん、食品の消費税を1%にする財源、まだ決まっていませんね。これではまたどんどん円安が進んでアメリカは怒りまくります。
先日の介入で155円台まであげたのにすでに3円戻しました。

ベッセントは「我々は時間稼ぎをした。この間に日本は素晴らしい政策を進めてくれ」と生粋の京都人のような上辺は隠してぐいぐい来る言い方をしましたが、それからなにもしてないのでどんどん円安です。政策金利をすぐあげることも決めてないし消費税減税の原資についても何の発表もしなければすぐに元に戻ります。これだけ警告されてなにもしないとなると、こうなるんじゃないですかね。

さすがにこうなっては大変ですから、本日はわたくしが髙市さんに「こうすれば食品の消費税を2年と言わずずっと1%にする原資はできるし、同時に社会保障改革もできますよという提案」をいたします。朝までかかって読み込んで理解してくださいね
それでははじめます
先に結論を言います
提案は4つです。
② いま非課税の医療に消費税10%をかけ、それを患者が全額払う
③ 低所得の高齢者には、給付で補償する
④ かかりつけ医を入口にする医療に作り替える
→ 高齢化の医療拡大で消費税収がどんどん増えていく
②で、窓口の負担はこうなります。いま3割の人は4割。いま1割の高齢者は2割。
なぜ保険組合ではなく患者かというと、健保組合の約7割がすでに赤字で、払う体力がないからです。
そして、この提案の狙いは財源ではありません。本体は「窓口負担を全世代いっせいに約10ポイント引き上げる」ことです。国民医療費全体でならした患者負担率は、11.8%から21.8%になります。
正直に、3つ先に書いておきます。
1. 財源としては足りません。医療費48兆円に10%かけても、仕入税額控除で国庫に残るのは2.6兆円。必要な4.2兆円に1.6兆円届きません。

2. 高齢者は損します。75歳以上は年9万5,380円の負担増に対して、食品減税の恩恵は約3万4,000円。差引で年6万円のマイナスです。65歳未満は逆に、年1万2,000円の得になります。これは高齢者から現役への所得移転です。
3. だから③がなければ、この提案はただの逆進的な増税です。私も支持しません。
それでも出す理由は、日本の医療がすでに国際的な説明のつかない水準にあるからです。外来受診は年12.1回。OECD平均は6.5回、スイスは4.5回。病床はOECD平均の3倍。それでいて平均寿命はスイス84.3歳に対し、日本84.1歳で負けています。
しかもこの受診回数は、患者が病院好きだから生まれているのではありません。OECDが指摘しているとおり、出来高払いという支払方式の産物です。
ならば本筋は支払方式の改革です。しかしそれこそ、医師会が絶対に飲まない。正面からの負担増も、2025年3月に高額療養費の見直しが患者負担ベース5,300億円の規模で潰れたとおり、世論が飲まない。今回はその9倍です。
だから迂回します。「食品が恒久で安くなる」と「医療機関の倒産を止める」という2枚看板で押し切る。
これは賭けです。何を賭けているのかも、最後に全部書きます。
以下、根拠です。数字はすべて原典に当たっています。
8月5日の臨時閣議で基本方針は決めた。2027年4月から2年間、飲食料品の消費税を8%から1%に下げる。1989年の導入以来はじめての減税です。ただし財源は「赤字国債に頼らずに確保する」と言っただけで、中身がない。外為特会という案が漏れ聞こえてくるくらいです。たまたま入った収入をあてにしていたらたまたま起きた熊本の震災の対策はどうするんですか。いままでの震災の復興費用から試算して3兆円くらいは必要ですよ。
では、こちらから出します。ただし最初に、いちばん嫌な部分から言います。
消費税免除だった医療に消費税をかけてください。これで3兆円近く原資ができます
健康保険組合負担分の消費税は患者が払い事とします。保険組合にもう払う体力がないからです。
健保連が今年4月28日に出した令和8年度の予算早期集計。全国1,364組合の経常収支は▲2,890億円の赤字で、約7割の組合が赤字です。賃上げで保険料収入は3.8%(+3,549億円)増えたのに、それでも赤字。保険給付費が3.4%増、高齢者等拠出金が2.2%増(後期高齢者支援金だけで+662億円)と、支出のほうが先に走るからです。
しかも平均保険料率9.32%に対して、収支を均衡させるのに必要な実質保険料率は9.90%。すでに0.58ポイント足りていない。健保連の副会長自身が「保険料率の引き上げは避けられない」と言っています。
ここに医療への消費税10%を乗せて、保険者に半分持たせたらどうなるか。健保組合は確実に潰れます。だから全額、患者負担にするしかない。
つまり、こうなります。
いま3割負担の人は、4割払う。
いま1割負担の高齢者は、2割払う。
消費税10%を患者が全額負担する設計なので、窓口で払う割合は3割→4割、1割→2割になります。ただし国民医療費全体でならした患者負担率は11.8%→21.8%で、「4割」にはなりません。高額療養費に月ごとの上限があること、生活保護の医療扶助など公費負担医療があること、高齢者の負担割合がもともと低いことが理由です。逆に言えば、これまで守られてきた人ほど負担の増え方が大きくなります。この点は後半で詳しく扱います。
高齢者は猛反対するでしょう。当たり前です。
だから同時に3つを出します。
・食品の消費税1%を2年ではなく恒久にすること。
・低所得の高齢者には給付で補償すること。
・かかりつけ医を入口にする医療の作り替えを本気で進めること。
これで高齢者を説得でき、医療は全てではないですがだいぶん健全化されます。
寝ないで読んでください。3万字は使いません。
1.先に白状します。財源としては失格です
まず必要額です。
報道によれば、飲食料品の消費税1%分の税収は約6,000億円。政府はこの1%相当分を中低所得者に現金給付して「実質ゼロ」にすると言っています。8%を1%に下げるということは7ポイント分ですから、減収はざっと年4.2兆円。給付の6,000億円を足せば約4.8兆円。産経が「実質ゼロの実現には年約5兆円の財源を要する」と書いているのと、だいたい合います。
ちなみに消費税収は令和8年度予算で地方分と合わせて34兆円余り、国分だけで約26兆7,000億円。国税収入の約3割です。そこから毎年4.2兆円を抜く。軽い話ではありません。
では医療に10%かけたらいくら入るか。
令和5年度の国民医療費は48兆915億円。10%なら4兆8,090億円です。4.2兆円の穴に対して4.8兆円。ぴったり足りるように見えます。
見えるだけです。
消費税は仕入税額控除がセットの税金です。医療を課税取引にすれば、医療機関はこれまで払いっぱなしだった仕入れの消費税を控除できるようになる。厚労省が中医協に出した資料によれば、総医療費に占める課税仕入れは47.73%(医薬品22.55%、特定保険医療材料3.19%、委託費等21.99%)。残りの52.27%が人件費などの非課税仕入れです。
税抜きに直して計算すると、控除額はおよそ2兆1,900億円。
仕入税額控除 ▲2兆1,900億円
国庫に残る純増収 2兆6,200億円
必要額 4兆2,000億円
→ 1兆5,800億円、足りない
消えた2.2兆円はどこに行ったか。医療機関の手取りになります。いわゆる「損税」の解消です。国庫には入りません。
しかも、もっと悪い話があります。
国民医療費の財源構成は、公費37.5%(18兆331億円)、保険料50.2%(24兆1,383億円)、患者負担11.8%(5兆6,865億円)。この構造のまま医療費が1兆円増えると、何が起きるか。
- 消費税の純増収 +522億円
- 公費(国・地方) +3,750億円
- 保険料 +5,020億円
国庫が受け取るのは522億円、払うのは3,750億円。差引で年3,228億円のマイナスです。
政府の「医療費の将来見通し」で見ても同じです。国民医療費は2018年度の45.3兆円(対GDP8.0%)から2040年度に80.2兆円(同10.1%)へ。このとき医療課税の純増収は2.4兆円から4.2兆円に、1.8兆円増えます。一方で公費は16.8兆円から36.3兆円へ、19.5兆円増える。税収が1.8兆円増える間に、支出が19.5兆円増える。約11倍です。医療で財政は破綻しますよね
だから最初に言いました。単純な財源論として、この提案は落第です。
それでも読んでいただきたいのは、この提案の本体が財源ではないからです。
2.本当の狙いは、税収ではありません
もう一度、患者負担の数字を出します。
現在の患者負担は5兆6,865億円で、国民医療費の11.8%。ここに消費税4兆8,090億円が乗ると、患者が払う総額は10兆4,955億円、比率で21.8%になります。
つまりこの提案は、実質的にこう言っているのと同じです。
窓口負担を、全世代いっせいに約10ポイント引き上げる。
財源はその副産物にすぎません。本体はこちらです。
ここで必ず出てくるのが「受診控えで健康被害が出る」という反論です。当然の心配です。エビデンスを見ましょう。
UCLAの津川友介准教授が2023年12月に公表した論文レビューがあります。日本のデータを使って自己負担割合と医療サービス消費量・健康の関係を評価した研究を検索し、38本の論文を同定したもの。結論はこうです。
高齢者および成人においては、自己負担割合が高くなることで、(軽症な疾患の治療である)外来受診は減るものの、(重篤な疾患の治療である)入院回数や在院日数は減らず、健康に対する大きな悪影響はないと考えられる。小児においても同様。
※津川氏自身が冒頭で「この記事は論文検索をしてその内容をまとめて紹介したものであり、システマティックレビューやメタアナリシスではありません」と明記しています。そのうえで読んでください。
ここで重要なのは「外来は減るが、入院は減らない」という部分です。
令和6年度の概算医療費48.0兆円の内訳は、入院19.2兆円(39.9%)、入院外16.3兆円(33.9%)、歯科3.4兆円、調剤8.4兆円(17.6%)。抑制が効くのは外来と調剤の約25兆円で、入院の19兆円は動かない。命に関わる部分は減らないということです。
逆に言えば、財政効果は私が最初に見積もったよりずっと小さい。外来と調剤が1割減っても2.5兆円、公費ベースで1兆円弱です。それでも消費税の純増収2.6兆円と同じくらいの規模になる。
この提案の本体は、税収2.6兆円ではなく、受診抑制のほうです。
3.日本の外来は、患者のせいじゃない
では、日本の外来には削る余地があるのか。OECDが2025年11月に出した『Health at a Glance 2025』の数字を並べます。2023年、1人あたりの年間対面受診回数です。
| 国 | 年間受診回数 | 平均寿命 |
|---|---|---|
| 韓国 | 18.0回 | 83.5歳 |
| 日本 | 12.1回 | 84.1歳 |
| ドイツ | 9.7回 | 81.1歳 |
| OECD平均 | 6.5回 | 81.1歳 |
| スペイン | 5.9回 | 84.0歳 |
| スイス | 4.5回 | 84.3歳 |
| アメリカ | 3.5回 | 78.4歳 |
| スウェーデン | 2.4回 | 83.4歳 |
見ていただきたいのはスイスです。平均寿命84.3歳でOECD1位。日本より0.2年長い。その国の受診回数が4.5回。日本の3分の1強です。

スウェーデンの2.4回はもっと極端ですが、こちらは注意が要ります。スウェーデンは遠隔診療が全受診の25%超を占めるので、遠隔を含めると3.2回。日本の12.1回には遠隔分が含まれているので、正しい比較は12.1回 対 3.2回です。約3.8倍。それでも十分に大きい。
設備のほうはもっと露骨です。
- 病床 日本12.5床/千人(OECD平均4.2床)
- CT・MRI・PET 日本184台/百万人(OECD平均51台)
- 薬剤師 日本203人/10万人(OECD平均86人)
- 医療費 対GDP10.6%(OECD平均9.3%)
一方で、医師は2.6人/千人でOECD平均3.9人を下回ります。少ない医師が、1人あたり年4,500回超という高い頻度で外来をさばいている。
日本の医療は「人が薄く、モノが厚く、回数が多い」。これが国際比較から見える姿です。
そして、ここがいちばん大事なところなのですが——この受診回数は、患者が病院好きだから生まれているのではありません。
OECDの本文にこう書いてあります。医師が出来高払いで支払われている国(ドイツ、日本、韓国、スロバキア)は受診回数が高くなる傾向があり、給与制や人頭払いの国(デンマーク、フィンランド、メキシコ、スウェーデン)は低い傾向にある、と。
日本の12.1回は、支払方式の産物です。
この事実は、あとで効いてきます。
4.高知県が示していること(ここは正直に書きます)
国内にも同じ構造が出ています。

令和5年度の人口一人あたり国民医療費は、高知県が49万6,300円で全国最高。最低は埼玉県の34万2,500円。その差は1.45倍です。高知は人口あたり病床数も全国最多クラスで、病床数と一人あたり入院医療費の相関はきわめて強いことが知られています。
供給が需要を生む、ということです。
では高知の人は長生きなのか。令和2年の都道府県別生命表では、高知県の男性の平均寿命は80.79年で全国42位(全国81.49年)。医療費が最も高い県が、男性の寿命では下から6番目です。
ただし、ここは正直に書きます。高知県の女性は87.84年で全国18位、全国平均87.60年を上回っています。人口10万人あたりの100歳以上人口も全国2位です。男女差7.06年は全国2位の大きさ。
つまり高知は「医療費最高・男性42位・女性18位・100歳以上2位」という、単純な話にならない県です。所得水準や喫煙率といった交絡要因もある。
都道府県比較から言えるのは「病床が入院医療費を決めている」までで、「医療を削っても平気」までは言えません。この記事の主柱はあくまで津川氏の個票分析であって、国際比較と県別比較はその傍証です。そこは踏み外さずに書いておきます。
5.62年で652倍
もうひとつ、動かしがたい数字を出します。
厚労省が2025年9月に発表した100歳以上の高齢者数は9万9,763人。前年より4,644人増えて、55年連続の増加です。うち女性が8万7,784人で88.0%。
この調査が始まった1963年、100歳以上は全国で153人でした。1981年に1,000人、1998年に1万人、2012年に5万人、2022年に9万人を突破。

62年で652倍です。
令和6年簡易生命表を見ると、いまの日本では女性の50.2%が90歳まで生きます。男性でも25.8%。寿命中位数は男83.89年、女90.04年です。
高市さん、これは日本の成功です。誰も否定できません。
ただ、成功したということは、その仕事はもう終わったということでもある。ここからさらに寿命を延ばすために資源を投じることの限界効用は、はっきり下がっています。人は100歳を超えてまで生きたいとは、必ずしも思っていない。寝たきりのまま生かされることを望む人はもっと少ない。
いま必要なのは寿命の延伸ではなく、その長い後半戦を、破綻しない制度で支えることのはずです。
6.では、なぜ正攻法が通らないのか
ここまで読んで、当然こう思われるはずです。
「窓口負担を上げたいなら、消費税なんて迂回せずに、正面から負担割合を上げればいい」
そのとおりです。そして、それができないことは、高市さんがいちばんよくご存じのはずです。
2025年1月、厚労省は高額療養費の自己負担限度額の引き上げ案を社会保障審議会に出しました。財政影響の試算は保険料▲3,700億円、公費▲1,600億円(国▲1,100億円、地方▲500億円)、実効給付率▲0.62%。加入者一人あたりの保険料軽減は年1,100円〜5,000円という規模です。
結果はご存じのとおり。2025年3月7日、石破総理が患者団体と面会したのち、実施見送りを表明しました。総理は「検討プロセスに丁寧さを欠いたとの指摘を重く受け止めなければならない」と述べています。患者団体からは「それでも受診抑制につながるおそれがある」という意見が出ていた。
患者負担ベースで約5,300億円の案が、参院選を前にして潰れたのです。
今回の提案は4.8兆円。約9倍です。
正面から出せば、絶対に通りません。断言します。
そして、もうひとつ。第3章で書いたとおり、日本の受診回数12.1回を作っているのは出来高払いという支払方式です。原因に直接効かせるなら、支払方式そのものを変えるのが本筋です。
しかしそれこそ、医師会が絶対に飲みません。
本筋の改革は業界が飲まない。正面からの負担増は世論が飲まない。だから迂回路として消費税を使う——というのが、この提案の正体です。
隠しません。そのうえで、通す設計を書きます。
7.4本の柱で出してください
柱① 食品消費税1%を、2年ではなく恒久にする
いまの案は2027年4月からの2年限定です。これを恒久にしてください。
理由は単純で、医療への課税は恒久だからです。2029年4月に食料品が8%に戻って、医療の10%だけが残る。この絵は、どう説明しても持ちません。国民は「騙された」と受け取ります。
そして年金で暮らす高齢者ほど、支出に占める食費の割合は高い。恒久の食品減税は、高齢者にいちばん効く政策です。ここを2年で切ってしまうのは、政治的にも損です。
柱② 医療に消費税をかけ、患者が全額負担する
第1章のとおりです。健保組合に払わせれば潰れるので、患者が払う。窓口の掛け率で3割は4割に、1割は2割になります。
ここで、逃げずに書いておきます。高齢者は、この取引で算術的には損をします。
75歳以上の一人あたり国民医療費は95万3,800円。10%なら年9万5,380円の負担増です。対して食品減税の恩恵は一人あたり約3万4,000円(4.2兆円÷人口1億2,436万人)。差引で年6万円の損。
65歳未満は逆です。一人あたり医療費21万8,000円なので負担増は2万1,800円。食品減税3万4,000円のほうが大きいので、年1万2,000円の得になります。
つまりこの提案は、高齢者から現役への所得移転です。そこは隠しません。
ただ、これは理由のある移転です。後期高齢者医療は約5割を公費、約4割を現役世代の支援金でまかなっています。健保組合の保険料収入に占める拠出金の割合は、令和8年度の41%から令和13年度には46%に上がる見通し。払った額に対して受け取りすぎている構造を、いま削らなければ、支える側が先に潰れます。現に7割の健保組合が赤字です。
柱③ 低所得の高齢者は、給付で補償する
ただし、全部の高齢者に6万円払わせろとは言っていません。
政府はすでに、食品消費税の1%相当分=約6,000億円を中低所得者に現金給付する枠組みを決めています。この給付の設計を、低所得高齢者の医療課税分の補償に振り向けてください。
これがないと、この提案はただの逆進的な増税です。高額療養費の上限の外側で定率課税がかかるので、いちばん重い負担を負うのは重症の患者と低所得層になる。生活保護の医療扶助は患者負担ゼロですから、そこに10%をかけるなら誰が払うのかも設計が要ります。
柱③がない柱②は、私は支持しません。セットで初めて成立する提案です。
柱④ かかりつけ医を入口にする
そして最後が、医療提供体制です。
消費税で受診が減れば、外来収入が減ります。誰が減るのか。前提として、厚労省が中医協に出した2023・24年度の補填状況調査を見てください。診療報酬による消費税負担の補填率は、全体100.3%に対して病院104.9%、一般診療所93.5%、歯科診療所90.1%、保険薬局103.7%。病院全体はすでに「もらいすぎ」で、診療所と歯科が不足しています。
一方、四病協の調査では大規模急性期病院の補填率は60%台にとどまり、8,000万円から1億7,000万円の損税が発生している病院もある。中小病院ほど厚く補填され、大規模急性期ほど不足しているという分布です。
ということは、課税転換で仕入税額控除を認めると、得をするのは大学病院と大規模急性期で、中小病院はむしろ失う側に回ります。「損税を解消すれば地方の病院が救われる」というのは、厚労省自身のデータで否定されるのです。
ここを解くのが柱④です。
厚労省はすでに「初期の治療は診療所、高度・専門医療は大病院」という機能分担を進めています。2015年の医療保険制度改革法を根拠に、2022年10月からは特定機能病院・200床以上の地域医療支援病院・200床以上の紹介受診重点医療機関で、紹介状なしの初診に7,000円以上、再診に3,000円以上の特別料金を徴収することになった。
入口はもう作ってあるのです。使い切っていないだけです。
ここを本気で進めると、3つの効果が施設ごとに逆向きに揃います。
| 仕入税額控除 | 消費税の受診抑制 | かかりつけ医化 | 差引 | |
|---|---|---|---|---|
| 大学病院・大規模急性期 | +大 | 外来減 | 外来をさらに失う | 入院に集中してプラス |
| 中小病院・診療所 | − | 外来減 | 一次診療が集まる | 外来増でカバー |
大病院は控除で得て外来を捨て、中小病院は控除で損して外来を得る。帳尻が合います。
2つだけ、正直に注記します。
ひとつ。ゲートキーパー制は受診を「減らす」制度ではありません。オランダは厳格なGPゲートキーパー制の国ですが、受診回数は10.1回でOECD平均を大きく上回っています。減らすのは価格(消費税)、振り分けるのは経路(かかりつけ医)。役割が違い、両方が要ります。
ふたつ。訓練を受けていない門番は、振り分けられません。欧州のGPは総合診療の専門訓練を受けた専門医です。日本の開業医の多くは専門科からの開業で、しかも医師数はOECD平均を下回る2.6人/千人。総合診療専門医の養成を並走させないと、「とりあえず紹介状を書く」だけになって、大病院の外来は減りません。
8.これは賭けです
最後に、この提案が何を賭けているのかを書きます。
賭けが当たる条件
- 受診抑制が外来に集中し、入院に及ばないこと(津川氏のレビューが示すとおりになること)
- 病院団体が、外来減に気づく前に体制転換を終えること
- 恒久の食品減税と低所得高齢者への給付が、患者団体の反発を相殺すること
賭けが外れる条件
- 高額療養費の上限の外側で課税されると気づかれること。医療費100万円の場合、いまは高額療養費21万2,570円が支給されて自己負担は8万7,430円ですが、ここに消費税10万円が別建てで乗る。実負担は18万7,430円、2.14倍です。2025年3月に動いたのは、まさにがん・難病の患者団体でした
- 過去の補填率が誤っていた前科があること。厚労省は2014年度改定の補填率算定を誤り、中医協の分科会が「誠に遺憾であり、再発防止の徹底を求める」と議論の整理に明記しています。数字への信頼が土台なので、ここは最初に説明が要ります
- 柱①か柱③のどちらかが落ちること。落ちた瞬間、これはただの逆進的増税になります
私の見立てを書きます。
この提案の最大のリスクは「通らないこと」ではなく、「通ったあと2年で崩れること」です。だから柱①の恒久化は譲れません。そして柱③がなければ、私はこの案を支持しません。
そのうえで、なぜ書いたか。
消費税は、消費税法第1条第2項で年金・医療・介護・少子化対策の社会保障4経費に充てると定められています。そして財務省自身が「社会保障4経費の合計額には足りていません」と書いている。足りない財布から、さらに食品減税分を抜こうとしているのが今の状況です。
財源を示さずに減税だけ決める。これが8月5日の閣議決定でした。中身は年末までに詰めるという。
高市さん、外為特会の運用益で毎年4.2兆円は出ません。赤字国債に頼らないと言った以上、どこかから取るしかない。取るなら、いちばん膨らんでいて、いちばん国際比較で説明のつくところから取ってください。
それが医療です。年48兆円、対GDP10.6%、病床はOECD平均の3倍、受診回数は2倍、そして寿命はスイスに負けている。
ここに手を入れずに、社会保障が持つと本気で思っているなら、その根拠を出してください。出せないなら、この提案を検討してください。
おわりに──この財源は、高齢化とともに育ちます
最後に、この提案のいちばん大事な性質を書きます。

第1章で私はこう書きました。医療に10%かけても国庫に残るのは2兆6,200億円で、必要な4兆2,000億円に1兆5,800億円足りない、と。
これはいまの数字です。
政府自身の「医療費の将来見通し」によれば、国民医療費は2018年度の45.3兆円から、2040年度には80.2兆円になります。対GDP比で8.0%から10.1%へ。高齢化で医療費は膨らみ続ける。それは避けられません。
ということは、こういうことです。
医療費が膨らむということは、医療から生まれる消費税も膨らむということです。
2040年度、医療への消費税10%
患者が払う消費税 年8.0兆円
仕入税額控除を引いた国庫の純増収 年約4.4兆円
食品消費税1%減税に必要な額 年4.2兆円
→ 医療から生まれる消費税は、その約1.9倍。純増収で見ても上回ります
いま足りない1兆5,800億円の穴は、放っておいても高齢化が埋めます。
これは、この提案がほかの財源案と決定的に違うところです。外為特会の運用益は増えるとは限らない。歳出削減はやるたびに抵抗が強くなる。ところがこの財源だけは、社会保障の負担が重くなるのと同じ速さで育つ。負担が増える理由そのものが、財源になる。
だからこそ、食品の消費税1%は恒久にできるのです。2年で切る必要はない。時間が経つほど、この制度は楽になっていく。年金で暮らす人が毎日買う食べものの税を、恒久で下げられる。
2年限りの減税と、恒久の減税では、国民が受け取る意味がまったく違います。
ただし、最後まで正直に書きます。
同じ22年間で、医療の公費負担は16.8兆円から36.3兆円へ、19.5兆円増えます。税収が育つ速さより、支出が育つ速さのほうがずっと速い。この提案だけで社会保障が救われるわけではありません。
救われるのは、始めた場合だけです。
受診が年12.1回から、スイス並みの4回台に向かって動き始める。病床がOECD平均の3倍から縮み始める。かかりつけ医が入口になる。そのすべてが、今日決めなければ2040年には間に合いません。
高市さん、財源は医療にあります。そして、その財源は年々育ちます。
あとは、始めるかどうかだけです。
出典
一次資料で確認したもの
- 厚生労働省「令和5(2023)年度 国民医療費の概況」(令和7年10月10日公表)/国民医療費48兆915億円、財源別・制度区分別・診療種類別・年齢階級別・都道府県別
- 厚生労働省「令和6年度 医療費の動向」(令和7年8月29日公表)/概算医療費48.0兆円と診療種類別内訳
- 厚生労働省 中医協 診調組 税-1-2(平成26年1月8日)/総医療費の課税仕入れ47.73%、非課税仕入れ52.27%、医科42.70%・歯科38.18%・調剤74.80%
- 厚生労働省 中医協 総-6(平成30年9月26日)/診療報酬の消費税対応(平成元年+0.76%、平成9年+0.77%、平成26年+1.36%)
- 厚生労働省 中医協「医療機関等における消費税負担に関する分科会における議論の整理」(平成30年11月21日・12月5日)/補填率算定の誤りへの分科会の指摘
- 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」第192回社会保障審議会医療保険部会 資料2(令和7年1月23日)/保険料▲3,700億円、公費▲1,600億円、実効給付率▲0.62%
- 厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」/医療費100万円の場合の支給212,570円・自己負担87,430円
- 首相官邸「令和7年3月7日 高額療養費制度見直しに関する患者団体との面会についての会見」
- 厚生労働省「医療費の将来見通し」(内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」平成30年5月21日に対応)
- 厚生労働省「令和6(2024)年簡易生命表の概況」(令和7年7月25日公表)/男81.09年・女87.13年、90歳生存割合、寿命中位数
- 厚生労働省「令和2年都道府県別生命表の概況」/高知県 男80.79年42位・女87.84年18位
- 厚生労働省「令和7年度 百歳の高齢者へのお祝い状及び記念品の贈呈について」(2025年9月12日公表)/100歳以上9万9,763人
- 健康保険組合連合会「令和8年度 健康保険組合予算編成状況-早期集計結果-」(2026年4月28日)/経常収支▲2,890億円、約7割が赤字、平均保険料率9.32%、実質保険料率9.90%
- OECD, Health at a Glance 2025(2025年11月)/受診回数(Figure 5.16)、平均寿命(Figure 3.1)、Country Note: Japan
- 財務省「消費税の使途に関する資料」/消費税法第1条第2項と社会保障4経費
- 政府広報オンライン「紹介状なしで大病院を受診すると特別の料金がかかります」/選定療養費の引き上げ(2022年10月)
- 津川友介「医療費の自己負担率(窓口負担)の引き上げにより、健康に悪影響があるのか?」note、2023年12月20日
報道ベース(一次資料未取得)
- 飲食料品消費税1%の閣議決定(2026年8月5日)、1%相当分約6,000億円、実質ゼロ化に年約5兆円、消費税収の規模=産経新聞・日本経済新聞・時事通信
- 施設類型別の補填率(全体100.3%、病院104.9%、一般診療所93.5%、歯科90.1%、薬局103.7%)=2025年11月28日の中医協総会・消費税分科会に関する報道
- 大規模急性期病院の補填率60%台=四病協調査に関する報道(2025年10月)
- 自治体病院の86%が経常赤字(2024年度決算)=全国自治体病院協議会の速報値に関する報道
本記事における筆者の計算
- 減税必要額4.2兆円(1%≒6,000億円×7ポイント)
- 仕入税額控除2兆1,900億円および純増収2兆6,200億円
- 患者負担21.8%、一人あたり負担増(全体3万8,670円/65歳未満2万1,800円/75歳以上9万5,380円)
- 食品減税の一人あたり恩恵約3万4,000円
- 医療費1兆円増に対する税収+522億円・公費+3,750億円の分解
- 2040年度の純増収4.2兆円(現状投影ベース)
- 2040年度の医療への消費税(グロス8.0兆円/純増収約4.4兆円)。政府「医療費の将来見通し」の現状投影80.2兆円に、本文第1章と同じ式を適用したもの
編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2026年8月7の記事より転載させていただきました。







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