台風上陸で感じる「過剰なリスク回避」報道

内藤 忍

Jong-eun Kim/iStock

今週本州に上陸した台風15号ですが、今回もまたメディアが事前に大騒ぎした割に風雨による大きな被害はありませんでした。東京でも一時期少し雨足が強くなりましたが、傘が飛ばされるような横殴りの暴風雨にはならず一安心です。

それにしてもこのような台風による大雨や冬の大雪などの際にいつも感じるのが、メディアの過剰な報道です。

今回も台風が発生した時から毎日のように台風の影響についての報道が続き、交通機関などへの影響やがけ崩れのような大雨に伴う災害に対する警告が続きました。

気候現象は人間には予測コントロールできませんから最悪の事態を想定してそれに対応しておくことはもちろん大切です。しかし、リスクを過剰に見積もり毎回大げさな報道を行っていれば、そのうちに視聴者は情報に対して鈍感になっていきます。いわゆるメディアの「オオカミ少年」状態です。

台風のような自然災害に対するリスク管理は、台風の規模や予想進路、地域の危険度に応じて合理的に判断されるべきものです。台風が過ぎ去って何も被害が出なければそれでよしとするのではなく、想定したような最悪の結果にならなかったならその理由を検証すべきではないでしょうか。

そうしなければリスクを常に過剰に評価して「大騒ぎ」するバイアスがかかりやすくなります。その方がメディアとして視聴率も稼げることになり、想定外の被害が発生した際も事前に警告したというアリバイ作りができ報道機関としての責任を取らされることもなくなるからです。

「過剰なリスク回避」はメディアに限りません。失敗や不祥事を絶対に許さない日本社会では企業にも「過剰コンプライアンス」のバイアスがかかっています。

最近はハラスメント問題などがメディアで大きく取り上げられ、ニュースになるとSNSでも炎上して強くバッシングされてしまう。そんなリスクを避けるために厳格過ぎるルールを策定する。そうなるとリスクは無くなるかもしれませんが経済性や効率性は犠牲になり社会全体のコストが大きくなることにつながる懸念があります。

またミスを許さない社会の価値判断は減点法による評価を広げることになります。これはチャレンジする意欲を削ぎ、無難で失敗しないことを優先する役人のような人たちを増やしていくことになりかねません。

人命を守るための取り組みを否定するつもりは毛頭ありませんが、過剰なリスク回避もできる限り避けるべきです。

メディアの報道にも企業のリスク管理にもリスクをゼロにすることばかりを追求する流れを断ち切りバランスの対応を模索する姿勢が必要だと思います。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2026年8月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。

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