7人が死亡した「イオンモール熊本」の爆発事故をめぐり、事故後の説明を覆す重要な事実が明らかになった。
イオンは8月11日、地震後にいったん避難した従業員について、現場で「一時入館を認めた事実があった」と発表した。事故翌日の会見では、イオンの吉田昭夫社長が再入館の許可を「一切ございません」と明確に否定していただけに、説明が覆った形だ。
7人もの命が失われた以上、誰がどのような判断で再入館を認めたのかは検証されなければならない。
ただし、事故の本質を「イオンが従業員を戻したから悪い」とするだけでは、より重要な教訓を見失うのではないか。

爆発したイオンモール熊本のようす
「補償できない」と言われ、店内へ戻った
当時の混乱を示す証言も出ている。
あるテナント従業員は、避難後、レジの現金や貴重品についてイオンモール側から「補償できない」という趣旨の説明を受け、店内に戻ったと証言している。その後、建物内で身動きが取れなくなったものの、間一髪で脱出し、爆発を免れたという。
イオンの調査でも、車の鍵や携帯電話、身分証の回収、トイレの使用、レジ締めなどを理由に再入館を求める人がいた。同社は、こうした避難後の状況を想定した具体的な規程や運用体制がなかったことを認めている。
「現金や私物を失っても補償されない」と考えれば、危険を承知で取りに戻る人が出ることは十分想定できる。
しかし「再入館=あり得ない判断」だったのか
一方で、結果を知った今の視点から、再入館を認めた判断そのものを単純に断罪するのも公平ではない。
巨大地震の直後、約4500人が避難した。車の鍵を持たずに出た人、携帯電話を店内に置いた人、トイレを必要とする人もいたはずだ。
もちろん、安全確認ができていない建物へ自由に戻してよいわけではない。しかし現場が「少しだけ荷物を取りたい」という要求にどう対応するかは、実際には難しい判断だっただろう。
問題は再入館という行為そのものよりも、何を根拠に建物へ戻してよいと判断するのかというルールが明確でなかったことにある。
本当の問題は「ガス」という見えない危険
そして、さらに重要なのは、なぜ再入館がこれほど悲惨な結果につながったのかという点だ。
事故はLPガスの漏えいによる爆発だった可能性が高いとみられている。どこからガスが漏れ、何が着火源になったのかについては、なお調査が続いている。
ここで問われるのは、再入館を許可したことだけではない。
建物内部でガスが漏れているという致命的な危険を、施設管理側が把握できなかったことではないか。
地震で建物に被害が出ていることは目で確認できる。しかしガスは見えない。建物が立っていて、人が歩ける状態でも、内部には爆発性のガスが滞留している可能性がある。
もし現場で「館内はガス漏れの恐れがある」と認識されていたなら、財布やレジ金を取りに戻ることを許可したとは考えにくい。
今回の事故の恐ろしさは、まさにそこにある。
「戻した人」を探すだけでは再発防止にならない
今後、「誰が再入館を認めたのか」という責任の検証は必要だ。事故翌日にイオン社長が再入館を否定しながら、後に説明が覆った経緯も明らかにすべきだろう。
しかし、その担当者を特定して処分すれば事故原因が解明されたことにはならない。
必要なのは、大地震後に建物の倒壊だけでなく、ガスの遮断状況や配管の損傷、ガス濃度、火災などを確認し、安全が確認されるまでは誰も戻れない仕組みをつくることだ。
同時に、従業員が現金や私物のために戻らなくて済む制度も必要になる。
イオンの判断は、結果を知ってからなら何とでも言える。大地震直後の混乱の中で、現場が迫られた判断は簡単ではなかったはずだ。
だからこそ、本当に問われるべきなのは、**「誰が戻したのか」だけではなく、「なぜ爆発するほどのガス漏れを把握できなかったのか」**である。
7人の犠牲を再発防止につなげるためにも、事故調査ではその根本原因まで踏み込む必要がある。







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