- ノーテルは通信需要の拡大を見込みすぎ、顧客へのベンダーファイナンスまで使って設備投資を膨らませた結果、通信バブル崩壊で過剰設備・貸倒れ・巨額赤字に直面した。
- NVIDIAもAI需要を先取りしてGPUやデータセンター供給が急拡大し、顧客への出資や購入保証を通じて需要拡大を支えている点で、ノーテルとの類似がある。
- 共通する最大のリスクは「技術の未来を読み違えること」ではなく、需要の伸びを正しく見ても供給を先回りしすぎ、供給過剰で投資採算が一気に崩れることである。
ノーテル・ネットワークスといっても、今では知っている人は少ないだろう。カナダの通信機器ベンダーで、一時は世界最大の光ファイバーメーカーだった。2000年には年間売上高は約280億ドル、時価総額が3000億ドル近くに達し、カナダの株式市場の3割以上を占めた。

2000年ごろのノーテル本社
顧客に購入代金を貸す「ベンダーファイナンス」
ノーテルが急成長のために多用したのがベンダーファイナンスだった。通信会社に設備を売るだけではなく、その購入資金までノーテルが融資する仕組みである。1990年代末、世界中で光ファイバー網への巨額投資が始まり、ノーテル、ルーセント、シスコ、エリクソンなどは、コモンキャリアや通信ベンチャーからの設備受注を奪い合った。
そこで使われたのがベンダーファイナンスだった。通信ベンチャーには十分な現金も信用力もないが、ノーテルが資金を提供すれば、数億ドル規模のネットワークを発注できる。2000年末の顧客向け融資は、売り掛け債権を含めて合計52億ドルに達し、同年の売上高280億ドルの18%にのぼる。
つまりノーテルは、通信機器メーカーであると同時に、顧客に信用を供与する金融会社(ノンバンク)になった。この仕組みは好況期には驚異的な威力を発揮する。設備を買えない顧客に100億円を貸せば、ベンダーには100億円の注文が入り、顧客も売り上げを増やせる。
融資残高の66%が貸し倒れ
しかし経済全体から見れば、需要が増えたわけではない。メーカー自身の信用で未来の需要を前借りしただけだ。顧客が売り上げで返済できなければ、機器を売った利益よりはるかに大きな貸倒損失が発生する。
ノーテルは当初、債権を銀行や資本市場へ移し、それによって資金を回転させるつもりだったが、通信バブルが崩壊すると、債権の買い手が消えた。2001年末にはノーテルの貸倒引当金(不良債権)は8.9億ドルに倍増し、融資残高の約66%にのぼった。
融資を支えていた本業の売り上げも、2000年の279.5億ドルから2001年には175.1億ドルに激減し、最終赤字は実に273億ドルに達した。これによってベンダーファイナンスも維持できなくなり、経営は破綻した。最終的に破産法の申請を出した2009年には、会社はほぼ存在していなかった。
ではNVIDIAのベンダーファイナンスはどうだろうか。
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