- 日本のソフトウェアが敗北した原因は多重下請け構造にあるが、その根本原因は文化ではなく、正社員を解雇できない日本的雇用慣行にある。
- 自動車産業では長期的な系列取引が競争力につながったが、水平分業が進むITでは多重下請けが技術蓄積やイノベーションを妨げ、レガシー化を招いている。
- 改革には、発注側がIT人材を抱えて標準パッケージや競争入札を活用するとともに、プロジェクト終了後のレイオフを可能にする解雇ルールの整備が必要だ。
また中島聡氏のITゼネコン批判が読売新聞に出ている。これは彼もいうように20年前から繰り返しているが、本質的な問題を取り違えているので話が深まらない。
「日本のソフト文化が根本的に間違っている」元MS開発者が指摘、「デジタル敗戦」状態の原因は「多重下請け構造」 https://t.co/wQ1bZVDWEX #検証デジタル・ニッポンの苦境 #中島聡氏 #経済ニュース
— 読売新聞オンライン (@Yomiuri_Online) August 17, 2026
多重下請け構造はなぜ直らないのか
日本のIT産業がだめになっている原因は多重下請け構造だという彼の指摘は正しいが、その原因は「文化」ではなく、産業構造にある。
米国のソフトウェアエンジニアは野球選手のような存在で、企業はストックオプションなどを駆使した魅力的な雇用条件を提供して優秀な人材を雇用し、プロジェクトが終わったら解散する。
これに対して日本のITゼネコンと呼ばれる大手ベンダーは、エンジニアを雇用しないで、下請け・孫請けに発注する多重下請け構造になっている。この結果、日本のソフトウェア開発には次のような特徴が生まれた:
- 労働集約型の作業:コストを「人月」で計算し、価格を「原価+適正利潤」で算出する
- 開発の下請け化:ソフトウェア開発のほとんどは下請けや派遣労働者が行ない、ITゼネコンは仕様の決定と工程管理を行なうだけ
- ウォーターフォール型:工程が階層型になっているため、所定の仕様にもとづいて下請け・孫請けに出され、イノベーションが生まれない

日本では中核業務であるソフトウェア開発が下請けに出されているため、エンジニアは低賃金・長時間労働を強いられ、技術が蓄積しない。全体設計はITゼネコンがやるので、そのアーキテクチャを変える革新的なソフトウェアが出てこない。
この構造の最大の原因は雇用慣行である。大企業は正社員を解雇できないので、プロジェクトベースで雇用できない。このためITゼネコンは何でも屋のサラリーマンを雇い、専門的な仕事は下請けにやらせるのだ。同じ構造は日本の製造業に広くみられる。
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