玉城デニー知事「3万票を取るため告示前に電話を」公選法を無視する遵法意識

沖縄県知事選を前に、8月22日に宜野湾市で開かれた総決起大会で、現職の玉城デニー知事は「この選挙は3万人の勝負。3万票を取るため、告示日までに電話をかけて選挙に入る準備の声掛けをしてほしい」と支持者に呼び掛けた。

ところが県知事選の告示日は8月27日である。公職選挙法では、立候補届け出前の選挙運動、いわゆる「事前運動」は禁止されている。このためネット上では、「告示前に3万票を取るため電話をかける、というのは事前運動ではないのか」との指摘が続出した。

もちろん、告示前に一切の活動が禁止されているわけではない。事務所を準備したり、運動員と打ち合わせたりする「選挙運動の準備行為」は認められている。政治活動も原則自由である。

しかし今回は「3万票を取るため」という目的までご丁寧に説明したうえで、「告示日までに電話をかけて」と呼び掛けている。

これで「選挙運動ではなく、選挙に入るための準備です」と説明するのであれば、公選法とは実に便利な法律である。

「勢いで出た」は万能の免罪符なのか

玉城氏は24日、この発言について「勢いによって出てしまった言葉」と釈明した。

政治家が問題発言をすると、「言葉足らずだった」「誤解を招いた」「真意が伝わらなかった」という定型句が登場するが、今回は新たに「勢いで出た」が加わった。

だが、公選法違反になるかどうかは、本人が勢いよくしゃべったか、慎重にしゃべったかで決まるものではない。重要なのは、誰に電話をかけ、何を伝えるよう求めたのかである。

単に「27日から選挙が始まりますのでよろしく」とスタッフに準備を促す電話なら問題は小さい。しかし「玉城デニーに投票してください」と有権者へ告示前に働き掛ければ、話はまったく違ってくる。

「3万票を取るため」は選挙運動ではない?

さらに不可解なの点は、玉城氏自身が発言の中で「3万票を取るため」と言っていることだ。政治活動と選挙運動の境界はしばしば曖昧だが、「票を取る」というのは、選挙運動の目的をこれ以上ないほど分かりやすく表現した日本語でもある。

それでも「これは準備活動です」というのなら、世の候補者は今後、告示前に「票を取るために電話してください。ただしこれは準備です」と言えばよいことになりかねない。そんな理屈が通るなら、公選法129条はかなり寂しい存在になってしまう。

もっとも、今回の発言だけで直ちに違法と断定することはできない。事前運動に当たるかどうかは、実際の電話の内容や対象、時期などを総合して判断されるからだ。

だからこそ、玉城氏側は「勢い」ではなく事実を説明すればよい。

「勢い」が沖縄県知事選で公選法を無効にする恐れ

玉城氏は2018年から沖縄県知事を務めている。新人候補ならともかく、選挙を何度も経験してきた現職知事である。選挙運動と政治活動の区別について、知らなかったでは済まされない。

しかも公職選挙法は、与党候補にも野党候補にも等しく適用される。政治的立場によって「これはセーフ」「あちらはアウト」と都合よく解釈していいものではない。

ネット上の批判に対して「勢いで出てしまった」と済ませるより、電話で具体的に何を呼び掛けるつもりだったのかを明らかにしたほうが早い。

選挙は3万票の勝負かもしれない。しかし、その3万票を集めるためのルールもまた選挙の一部である。「勢い」が公選法を無効にするような沖縄県知事選にならないことを願いたい。

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