高市首相の財務省いじめは徹底的で陰湿:バラマキ財政にブレーキなし

高市早苗首相と財務省の対立が、かなり異様な様相を呈している。報道によれば、高市政権の消費税減税などに慎重だったとされる財務官僚が相次いで主要ポストから外され、「粛清人事ではないか」と霞が関で受け止められている。

もちろん財務省はこれを否定しているので「報復人事」だったと断定することはできないが、幅広く人事に手を突っ込む異例の人事であることは間違いない。

主計局だけでなく内閣府からも排除

象徴的なのが、一松旬・前主計局次長の人事である。一松氏は岸田政権で首相秘書官も務め、将来の事務次官候補とみられていたが、8月7日付で東京税関長に異動した。一松氏は財政規律を重視し、消費税減税に慎重だったと報じられている。

それだけではない。マネーポストWEBによれば、財務省では次官コースとされる主計局次長3人が全員交代した。さらに一松氏と同期で将来の次官候補とされる大沢元一氏は、主計局次長ではなく主税局担当の官房審議官に配置されたという。

内閣府では、財務省出身の井上裕之事務次官が退官し、阿久沢孝政策統括官も財務省に戻された。内閣府は政権の中枢ではないが、経済財政諮問会議などを抱え、予算・財政政策を調整する拠点である。

さらに陰湿なのが、宇波弘貴・前主計局長の事務次官昇格をめぐる経緯である。東洋経済によると財務省幹部人事は例年より大幅に遅れ、宇波氏の次官昇格を含む人事が半年近く事実上「宙づり」にされた。

最終的には7月31日に決まり、宇波氏は8月7日付で事務次官に就任したが、その異例の遅れは高市首相の事介入だったという見方が霞が関に広がった。高市首相が宇波氏の次官昇格を「人質」にして財務省側に人事案を飲ませたとの財務省OBの見方もある。

財務省支配を壊すことと官僚を黙らせることは違う

財務省が、首相官邸と並ぶ巨大権力であることは事実である。法律上は内閣の専管事項である予算編成を代行して各省庁をコントロールし、「財務省支配」と批判されてきた。

それに対して安倍政権は、内閣人事局で各省庁の審議官以上を首相と官房長官が任命するルールにした。だから左遷も優遇も官邸の裁量だが、政治主導とは官僚を黙らせることではない。

政治家が「食料品の消費税を減税する」といえばその財源を考え、必要なら国債を発行することも財務省の仕事だ。そのブレーキを人事で排除すると、財政のコントロールがきかなくなる。

財務省なしで誰が財政をコントロールするのか

今はアベノミクスの時期とは経済環境がまったく違う。日銀は金融政策の正常化を進めており、9月にも政策金利が1.25%に引き上げるとの予想が強まっている。その一方で政府が減税や大型予算でアクセルを踏むと、金融政策と財政政策が正反対の方向を向くことになる。

IMFも今年の対日審査で、日本の短期的な財政政策について「これ以上の緩和を避けるべきだ」とかなり明確に警告している。消費税減税についても、財政余力を損ないリスクを高めるとして否定的である。ベッセント財務長官も「アベノミクスは卒業すべきだ」と言っている。

高市首相の「財務省いじめ」が恐ろしいのは財務官僚がいじめられるからではない。財務省のブレーキを壊した後で、政治家がアクセルを踏み続けたときである。首相に助言するのが「国債は借り換えれば無限に発行できる」という素人でいいのか。インフレや金利や円安が暴走したとき、そのツケを払うのは財務官僚ではない。国民である。

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