日本の金利が、いよいよゼロ金利から普通の世界に戻ってきた。9月1日の債券市場では、長期金利の指標となる新発10年国債利回りが一時3.0%に達した。約30年ぶりの高水準である。
こうなると気になるのが住宅ローンだ。「これから金利が上がるなら、変動金利より固定金利にしたほうが得なのではないか」と考える人も多いだろうが、問題はそれほど単純ではない。

固定金利はすでにかなり上がっている
まず押さえておきたいのは、長期金利が上がると直接影響を受けるのは主として固定型住宅ローンだということだ。
三菱UFJ銀行の新規住宅ローンを見ると、変動金利は年1.195%なのに対し、10年固定は3.63%、全期間固定31~35年は4.30%となっている。住宅金融支援機構の「フラット35」も、返済期間21~35年の最頻金利は3.46%である。
つまり現在は、変動1.2%に対して固定3.5~4.3%という大きな金利差がある。5000万円を35年ローンで借りると、金利1.195%なら毎月返済額は約14万6000円だが、3.46%なら約20万5000円になる。差は月約6万円である。
固定金利とは、単に「高い住宅ローン」なのではなく、将来の金利上昇を銀行に引き受けてもらうの保険料込みの商品なのだ。
長期金利3%でも変動金利が3%になるわけではない
よく誤解があるが、10年国債利回りが3%になったからといって、住宅ローンの変動金利がただちに3%になるわけではない。住宅ローン金利に大きく影響するのは日銀の政策金利や短期プライムレートである。
いま日銀の政策金利は1.0%。6月に0.75%程度から1.0%に引き上げたが、10年国債ほど急激には動いていない。三菱UFJ銀行も短期プライムレート引き上げを受け、9月から変動型住宅ローンの基準金利を引き上げたが、それでも1.195%である。
つまり固定金利は長期金利の上昇を先回りして上がり、変動金利は日銀の利上げを追いかけて上がる。この時間差が重要なのだ。
では変動と固定のどちらが得なのか
将来の金利を正確に予想できるなら答えは簡単だ。今後も政策金利が上がり、変動型住宅ローンの金利が2%、3%、4%と上昇するなら、早めに固定しておいた人が得をする。逆に利上げが1~2%台で止まり、その後景気後退などで金利が低下するなら、変動のほうが有利になる。
現在の固定と変動の金利差は2%以上もある。これは大きい。固定金利を選ぶ人は、これから金利が上がると予想するだけでは足りない。変動金利が将来かなり上昇し、それが長期間続くことまで当たらなければ、固定金利の高い保険料を回収できない。したがって期待値だけで考えると、現時点では変動金利に分がある。
問題は「得か」ではなく金利上昇に耐えられるか
ただし住宅ローンは株式投資とは違う。5000万円、6000万円という借金を30年以上抱える以上、期待値だけで決めるのは危険だ。
金利が2%上がって毎月の返済額が数万円増えても家計に余裕がある人なら、変動を選び、その差額を貯蓄・運用するという戦略は合理的だ。反対に、現在の返済額で家計がギリギリなら固定金利の意味は大きい。固定金利で買っているのは「安さ」ではなく、35年間返済額が読める安心だからだ。
かつてのように「変動を選んでおけば間違いない」という時代は終わったが、長期金利が3%になったからといって、慌てて高くなった固定金利に飛び乗るのも考えものだ。
住宅ローンで重要なのは金利予想を当てることではない。金利がどこまで上がったら自分の家計が耐えられなくなるのか。「変動か固定か」を決める前に、まずその家計の未来を計算するべき時代になったのだ。







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