「聖闘士星矢」「リングにかけろ」などで知られる漫画家・車田正美氏が代表を務める会社が、元マネージャーらに約46億円を流用されたとして、東京地裁に損害賠償請求訴訟を起こしました。
この問題が発覚したきっかけは、社内監査でも経営者によるチェックでもありませんでした。2024年に行われた東京国税局の税務調査だったとされています。
車田氏側の説明によると、国税局は不審な資金の動きを調べ、車田氏本人宛てに質問状を送りました。ところが元マネージャーは、その税務調査について車田氏に知らせず、車田氏名義の回答書を作成して国税局に提出したとされています。その後、国税局と車田氏本人が直接やり取りするようになったことで、それまで本人が把握していなかった巨額の資金流出が明らかになりました。
すでに約18億円は回収されたものの、車田氏側は残る約28億円の賠償を求めています。もちろん現段階では民事訴訟における車田氏側の主張であり、事実関係は今後の裁判で確定していきます。
それにしても気になるのは、46億円という金額以上に、なぜこれほど巨額の資金流出が約6年間も発覚しなかったのかという点です。
「信頼できる人」に全部任せていた
元マネージャーは出版社時代から約25年間、車田氏を支えてきた人物でした。車田氏は漫画制作に専念するため、経理や出納、著作権管理、取引先との交渉などを幅広く任せていたとされます。
しかし、売上を把握する人、契約する人、送金する人、帳簿を管理する人が事実上同じなら、不正をチェックする人がいません。
内部統制とは「人を信用しない」ことではなく、「誰か一人を信用しなくても会社が回る仕組み」をつくることです。
46億円より怖い「チェックする人がいない」状態
車田氏側は、元マネージャーが類似名称の会社を設立してライセンス料を受け取ったり、会社口座から関係先へ送金したりしていたと主張しています。
銀行残高や契約書、入金記録を別の人物が定期的に確認していれば、異変に気づけた可能性があります。今回、問題を発見したのが会社ではなく国税局だったという事実は重いでしょう。
信頼するほど仕組みが必要になる
オーナー企業では、長年付き合ってきた人物に経理を任せることは珍しくありません。しかし、信頼が厚いほど権限も集中しやすくなります。
一定額以上の送金を複数人で承認し、経営者自身も定期的に銀行残高を確認する。それだけでもリスクは下げられます。
ビジネスは人を信頼しなければ成り立ちません。しかし、信頼だけでも成り立ちません。46億円という被害は、「信頼」と「内部統制」を混同する怖さを改めて示しているのではないでしょうか。








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