ドイツ東部ライプツィヒ・ハレ空港で先月5日未明、空港職員が正体不明の爆弾搭載ドローン(UAV)を発見した事件について、ドイツのドブリント内相は1日、ロシアの関与を初めて名指しで批判し、ロシアに対し制裁を実施する意向を明らかにした。ドイツの著名な軍事専門家トーマス・イェーガー氏は「ライプツィヒ空港の爆弾搭載無人機未遂事件はロシアがハイブリッド戦の枠を超えて(ドイツへ)攻撃を始めたのだ」と指摘、同事件の深刻さを改めて強調した。

欧州連合(EU)の非公式外相会議で「ロシアの脅威に対して欧州は結束を」と訴えるヴァーデフール独外相、2026年9月2日、ドイツ外務省公式サイトから
ドイツ政府が決めた対ロシア制裁には、ボンにあるロシア総領事館の閉鎖、ベルリンの「ロシア・ハウス」との契約解除、そしてロシア人に対する入国管理の強化措置が上がっている。また、ロシアのいわゆる「シャドー・フリート(影の船団)」に対しても、より厳しい措置を講じる方針だ。
ちなみに、ベルリンにある「ロシア・ハウス」はクレムリンのスパイ活動の拠点として利用されてきた。また、ロシアのウクライナ侵攻以来、ドイツはこれまで4か所のロシア領事館を閉鎖させてきた。今回閉鎖されるボンの総領事館は最後のロシア領事館だ。
一方、ロシア側はドイツ側の制裁に強く反発している。ロシアのプーチン大統領は1日、訪問先のキルギス(ビシュケク)での記者会見で、ドイツ政府の「ロシアの責任」に対し、「ライプツィヒでの証拠は捏造されたものだ」と強く非難し、「ドイツ側がロシアへの批判を強めるのは、(メルツ現政権)の国内政治の支持率低下といった問題を解決するためだ」との見方を示した。
ロシア外務省のザハロワ報道官は1日、ウジロストクで「ドイツの非難には根拠がない」と全面否定した上で、ロシア側として相応の報復措置を取る」と強調した。それに先立ち、ロシア外務省はモスクワ駐在のドイツ大使館臨時代理大使を呼び出した。
そして3日、ラブロフ外相は最初の対抗制裁措置を発表した。それによると、モスクワにあるゲーテ・インスティトゥート(ドイツの文化機関)の拠点を閉鎖する方針だ。同外相は「この措置はベルリンにある『ロシア・ハウス』の閉鎖発表に対する報復だ」と述べた。ロシアのボン領事館の閉鎖に対しては、サンクトペテルブルクにあるドイツ領事館の閉鎖が考えられている。
ゲーテ・インスティトゥートはモスクワの本部のほか、サンクトペテルブルクやエカテリンブルクにも文化センターを置いている。ウクライナに対するロシアの侵略戦争をめぐり西側諸国との緊張が高まる中でも、ロシアが活動を認めてきた数少ない機関の一つだった。
ところで、ロシアが爆弾搭載無人機を独空港に侵攻させた狙いは、ドイツによるウクライナ支援を縮小させることだ。ドイツ政府は長年にわたりウクライナ支援の先頭に立ってきた。また、北大西洋条約機構(NATO)同盟の結束を試すことにあったことも間違いないだろう。
イェーガー氏は「ロシアは‘ハイブリッド戦‘の領域を超えつつある。導火線が切断されていたためにドローンに搭載された爆発物が起爆しなかったことや、他の2機のドローンに積まれた爆薬も不発に終わったことは幸運だったが、もしそれらが爆発していれば、使用された高性能爆薬の量から見て、死者を伴う大惨事になっていたことはほぼ確実だった。ライプツィヒ空港でのドローン攻撃はもはやハイブリッド戦の枠を超え、戦争の始まりだ」と受け取っている。
ドローン攻撃は不発だったが、ロシアにとって無駄ではなかったはずだ。ドイツ国内で社会的な議論を巻き起こす可能性があるからだ。例えば、「ロシアによるさらなる攻撃のリスクを考慮するとウクライナへの継続的な支援は危険すぎるのではないか」、「ドイツ当局は国民を適切に守ることができるか」、あるいは「今回の攻撃をクレムリンの仕業とする見方は信頼に足るか」、等々の声がドイツ国内で既に聞かれるからだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年9月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。







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