タワマン購入「2階建てローン」は日本版「サブプライムローン」になるのか

住宅価格が高騰し、若い世代には普通の住宅ローンでは手が届かなくなってきた。そこで金融機関が考え出したのが、いわゆる「2階建てローン」である。

借入額を1階部分と2階部分に分け、1階部分の元金返済を一定期間据え置く。借り手は利息だけ払えばいいので、毎月の返済額は軽くなる。なんとも親切な話に聞こえる。

住宅が高くて買えないなら、住宅価格を下げるのではなく、返済を先送りして買えるようにしてあげましょう、というわけだ。その代わり、最後には大きな元金が残る。

【参照リンク】若者のタワマン購入、返済先送りローンの誘惑「生活縛られたくない」 日経新聞

「買える」と「返せる」は違う

この仕組みは、住宅価格が将来も上昇するなら成立する。最後に残った元金を住宅の売却代金で返せばいいからだ。

しかし住宅価格が下がったらどうなるのか。5000万円の残債に対して、自宅が4000万円でしか売れなければ、1000万円は自分で用意しなければならない。しかも変動金利なら、これからの金利上昇で毎月の利払いが増える可能性も高い。

つまり借り手は、金利上昇リスクと不動産価格下落リスクの両方を引き受ける。それでも銀行は基本的に元金と利息を回収する立場だ。

住宅価格が上がれば借り手も得をする。住宅価格が下がれば借り手が損をする。そして銀行はどちらでも利息を受け取ることができる。実に見事な商品設計である。

心配なのは金融リテラシー

さらに問題なのは、こうした複雑な商品を利用する若い世代の金融知識である。

J-FLECの2025年調査では、金融知識に関する正答率は53.8%。とくに「ローン・クレジット」の正答率は2019年より6.2ポイント低下した。30代の低下幅は6.5ポイントで、年代別では最大だった。まさに住宅ローンを組む中心世代である。

「月20万円なら払える」と考える人は多いだろう。しかし住宅ローンで見るべきなのは月額だけではない。元金はいくら残るのか。総利息はいくらになるのか。金利が2%、3%になったらどうなるのか。住宅価格が2割下落したら売却で完済できるのか。

そこまで計算して初めて、「返せる住宅価格」が分かる。ところが不動産販売も銀行も、客に見せたいのは「総負担」より「月々のお支払い」である。月額を小さく見せれば、より高い物件を売れる。不動産会社は売上が増え、銀行は融資額が増え、利息収入も増える。そして、借り手だけが35年後の住宅価格に賭けることになる。

サブプライム危機から何を学んだのか

この構図を見ると、私は2000年代の米国サブプライムローンを思い出す。

もちろん同じものではない。サブプライムは信用力の低い人にも大量に融資し、それを証券化して世界中へばらまいた。2階建てローンは対象者や担保に一定の条件があり、現時点で金融システムを揺るがす規模でもない。しかし発想には不気味な共通点があるように思えてならない。

サブプライムローンでも、当初の返済額を小さくし、「そのうち住宅価格が上がるから売却か借り換えをすればいい」という期待があった。ところが住宅価格が下落すると出口が消え、大量の延滞と差し押さえにつながった。2階建てローンも、現在の負担を軽くして、将来の住宅価値に出口を求める点では似ている。

住宅価格が35年間上がり続ければ問題はない。では、そうならなかったら誰が損失を負うのか。銀行ではない。借り手だ。

アメリカは20年前、「住宅価格は永遠に上がる」という夢から目を覚ますために世界金融危機という高い授業料を払い、社会は荒廃した。日本の銀行は、その歴史を踏まえたうえで、今度は「2階建て」にしてみたのだろうか。

MASA Sibata/iStock

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