沖縄県民は「所得倍増」に投票しました。
でもその前に。なぜ沖縄の賃金は安いのか。怠けているからではありません。非正規が43%と全国一多く、大学等進学率は46.3%で全国最下位、そして稼ぐ力の低い産業に雇用が集中しているからです。基幹産業である宿泊・飲食サービス業の労働生産性は全国46位。ここを動かさない政策は、名前が何であれ効きません。
玉城デニー知事も経済政策はやっていました。アピールが下手で、結果が県民の実感にならなかっただけで。そして新知事の計画も、中身は前県政と大きくは変わりません。
同じ延長線でやるかぎり、4年後に倍増していないのはほぼ確実です。
じゃあどうするか。わたしの答えは規制改革です。補助金は効果が出るまで10年かかって、外れても誰も責任を取らない。規制緩和はタダで、1年で効いて、やったかやってないかが誰の目にもわかる。
数字も出します。ライドシェアで年268億円(うち家計に201億円)、富裕層の受け入れ整備で618億円、高級ナイトクルーズ・公認ガイド貸切・釣り・自然ガイド・別荘で167億円。合わせて年1,053億円。観光客1人あたりにすると、たった9,632円の上乗せです。
ただし最後に厳しいことも書きました。制度が変わっても、あなたが動かなければ1円も来ません。補助金と違うのはそこです。
※ただし観光依存はさらに深まります。この記事はそれを承知のうえの話です。
2026年9月13日、沖縄県知事選で前那覇市副市長の古謝玄太さん(42)が初当選しました。自民・維新・国民・参政・日本保守の推薦。3期目を目指した玉城デニーさんに約14万7000票差をつけての勝利で、投票率は61.57%。12年ぶりの保守県政です。
「基地から経済へ」と各紙が書いています。それはそのとおりなんですが、まず両者が何を掲げていたのかを並べます。
| 玉城デニー氏(前知事・落選) | 古謝玄太氏(新知事・当選) | |
|---|---|---|
| 全体の数値目標 | 掲げていない。個別目標のみ(待機児童ゼロ、2050年脱炭素など) | 1人当たり県民所得 231.5万円→500万円(10年)/子育て予算 552億円→1,000億円/観光収入 1兆747億円→2兆円。会見で「年7〜8%の経済成長が必要」と説明 |
| 観光 | 2027年2月導入の宿泊税を活用し、観光の質向上と受け入れ環境の整備 | 観光消費2兆円をめざし「量」と「質」の双方を充実。海外航空路線の誘致(アジア+欧米)、MICE・リゾートウェディング・フライ&クルーズで高単価客を増やす。宿泊税は観光インフラ強化と閑散期「県民割」の恒常化に充当 |
| 産業育成 | 「稼ぐ力」の強化、6次産業化、スタートアップ・創薬・半導体企業の集積、県内企業への優先発注と県産品の優先使用 | 新5K経済(観光・健康・環境・海洋・起業)、GW2050 PROJECTS、スタートアップアイランド構想、ブルーエコノミー、OIST・産総研と連携したAI・量子、既存産業のAI導入(AX化) |
| 賃金・雇用 | 非正規雇用の待遇改善と正規雇用化支援、中小企業従業員の奨学金返済支援 | 中小企業への伴走支援を通じた賃上げ促進、社会保険料の引き下げを国へ要望、食料品の消費税ゼロを全国知事会と連携して要求 |
| 交通 | 「次世代交通ビジョンおきなわ」を年度内策定。鉄軌道、モノレール延伸、BRT、LRTの早期導入 | 「沖縄移動革命」。南北縦断の鉄軌道、ゆいレール3両化・延伸・環状化、BRTの実証・実装、LRT・デマンドタクシー、自動運転の実証・実装、那覇空港の機能強化と北部空港の検討 |
| 規制改革 | 本記事では未精査(8年やって結果が出ていないため) | 企業立地を促進する税制優遇の拡充や規制緩和等を国へ要望・交渉(120政策中1項目)/市街化調整区域の見直しなど都市計画の改善 |
| 家計支援 | 「おきなわゆいまーる基金事業(仮称)」創設(規模は非公表)、高校3年まで窓口医療費無料化の拡大 | 子育て予算を552億円から1,000億円へ、保育料・教育費・給食費の完全無償化、物価高世帯へのクーポン給付 |
| 辺野古 | 反対の民意を守り抜く | 現実的な解決策として容認し、移設を進める |
| 公約の規模 | 3つの約束+7つの柱・具体策264項目 | 3つの約束+120政策 |
出所:古謝げんた公式サイト「政策」および政策集PDF「沖縄を前に進める120の政策」、玉城デニー氏公式サイト「2026年玉城デニー政策」。両陣営が公表した一次資料を筆者が読んで整理しました。
並べてみると、はっきりします。産業政策の中身は、驚くほど似ています。高付加価値化、新産業の集積、DX、企業誘致、賃上げ、観光の質向上。言葉の順番が入れ替わっているだけで、やろうとしていることはほぼ同じです。新しいアイデアがないんですよ。
交通なんて、ほとんど同じことが書いてあります。鉄軌道、モノレール延伸、BRT、LRT、デマンドタクシー。どっちも同じ。名前と順番が違うだけです。
本当に違うのは3つだけ。①全体の数値目標を出したかどうか ②家計支援を基金でやるか無償化でやるか ③辺野古。このうち県民の給料に効きそうなのは①ですが、これは目標であって手段ではありません。
つまり「所得倍増」という数字だけが、この選挙で新しかった。県民はそこに投票したわけです。

古謝玄太氏Xより
倍増できるかどうかを議論する前に、片づけておくべき前提があります。沖縄の賃金はなぜ安いのか。ここを外すと、政策の当たり外れが判定できません。
先に結論を書くと、沖縄県民が怠けているからではありません。むしろ労働時間は全国平均より長いくらいです。
図1:沖縄の賃金が安い構造。非正規が多く、進学率が低く、稼ぐ力の低い産業に雇用が集中しているりゅうぎん総合研究所の分析が、この点をはっきり言っています。1人当たり県民所得が全国より低い理由は、2010年度前後までは「就業率の低さ」だったが、近年は「労働生産性の低さ」に変わった、と。
しかも産業別に見ると、基幹産業である宿泊・飲食サービス業の労働生産性は全国46位。観光に次ぐ情報通信業ですら39位です。
沖縄振興開発金融公庫のレポートも同じことを指摘しています。就業者数が多い産業(卸売・小売、医療・福祉、宿泊・飲食、サービス)は、どれも労働生産性が低い産業ばかりだと。逆に生産性が高いのは電気・ガス、金融・保険、情報通信ですが、沖縄ではそこの雇用が薄い。
つまり、働き方の問題じゃなくて、働き場所の中身の問題です。
沖縄の第3次産業のウエイトは約84%で、東京都(約86%)に次いで全国2位。第3次産業は労働集約的で、製造業に比べると1人当たりの付加価値が低くなりやすい。
ここが「観光立県」の裏側です。観光は雇用をたくさん生むけれど、1人当たりの稼ぎは大きくない。この記事のあとのほうで出てきますが、沖縄の観光は付加価値ベースでは県内総生産の約13%、雇用では約2割です。1人当たりの付加価値が低い産業に、県民の5人に1人がぶら下がっている。
沖縄の非正規雇用比率は約43%(2017年)で、全国平均の約38%を大きく上回り、全国最高水準です。背景として指摘されているのは「産業構造の特性」と「企業体力の低さ」。
非正規が多いと、昇給しない、賞与が出ない、社会保険に入りにくい、技能が蓄積しない。賃金が上がらない仕組みが、雇用の形そのものに埋め込まれているということです。
令和5年度の沖縄の大学等進学率は46.3%で全国最下位。全国平均は60.8%です。男子はワースト2位、女子はワースト1位。平成10年度から18.6ポイント上がっているのに、全国との差は縮まっていません。
そして沖縄振興開発金融公庫は、この資料でこう書いています。県民所得は全国平均の7割で推移していて、所得が低いことを理由に子どもが進学を断念することがないよう、生産性を上げて稼ぐ力を高める必要がある、と。
所得が低い → 進学できない → 高い賃金の仕事に就けない → 所得が低い。これが沖縄のループです。ここを断ち切らないかぎり、何年経っても同じ選挙をやることになる。
で、この4つを踏まえたうえで、両陣営の政策をもう一度見てください。どれか1つでもまっすぐ効くものがありますか。
まずフェアな話をします。「オール沖縄は基地反対しかやってなかった」と言われがちですが、数字を見るとそんなことはありません。
沖縄県が2026年8月6日に公表した令和7年度の観光収入は1兆747億円。前年度比プラス9.4%で過去最高、ついに1兆円の大台です。入域観光客数も1,093万5,300人で過去最高。令和5年度の1人当たり県民所得も前年度比プラス5.1%で伸びています。2027年2月から始まる宿泊税だって、総務大臣の同意を取り付けたのは玉城県政です。
やることはやっていた。ただアピールが致命的に下手で、しかも県民の給料という形で結果が出なかった。だから8年の停滞と言われて負けた。ここを「基地の是非で負けた」と読むと、次も同じことになります。
そもそも共産党って基本的に「みんなで貧乏になれば平等だ」という政党ですから経済政策はメチャクチャ。大企業や富裕層への課税強化を財源に、消費税の減税や大幅な賃上げという支離滅裂な感じで投資や規制改革は反対です。労働者の権利を守れですからね。と、さりげなくディスりました。
8年間で暮らしがよくならなかった人にとって、具体的な金額を言い切ってくれる候補がひとりだけいた。気持ちはわかります。わかるんですが。
手段が前県政とほぼ同じなのに、目標だけ倍増になっている。これで数字が届くなら、前の8年でもっと近づいていたはずです。
そして4年後に給料が上がっていなければ、県民はまた革新に振り戻す。そういう構造になっている。
なぜ無理なのか。数字で見ていきましょう。
図2:沖縄の観光収入は過去最高の1兆747億円。しかし観光客1人当たりの県内消費額は令和4年度の10万3,706円をピークに、3年連続で下がっているこれが今回いちばん見てほしいグラフです。
棒グラフ(観光収入)はきれいに伸びています。マスコミもここしか報じない。ところが赤い線(観光客1人当たり消費額)を見てください。令和4年度の10万3,706円をピークに、9万9,699円 → 9万8,672円 → 9万8,281円と3年連続で下がっている。平均泊数も3.02泊まで短くなりました。
つまり増収の中身は、ほぼ全部が客数の増加です。単価はむしろ下がっている。円安で海外に行けない日本人や中国・韓国からの団体に頼っているからです。
ちなみに令和7年度の外国客(空路)の単価は10万5,222円で、前年度比マイナス5.2%。インバウンドが増えれば単価が上がる、という話でもないんですね。安い客が増えているだけ。
図3:沖縄の1人当たり県民所得は令和5年度に231万5千円まで回復したが、全国を100とした水準は70.7→67.2→65.7と3年で5ポイント悪化した令和5年度の1人当たり県民所得は231万5千円。前年度からプラス5.1%です。数字だけ見れば健闘している。
問題は比較です。全国を100としたときの沖縄の水準は、70.7 → 67.2 → 65.7。3年で5ポイント下がっています。全国平均との差は約120万円。
沖縄が止まったんじゃない。全国のほうが速く走ったんです。これが「頑張ってるのに追いつかない」の正体。
古謝さんの公約は「10年で1人当たり県民所得を500万円に倍増」「手取り2倍」。観光は「8年で収入倍増、消費単価1.5倍」。新5K経済(観光・健康・環境・海洋・起業)。
年率に直します。
・観光収入1兆747億円 → 2倍(8年)= 年率9.1%
・消費単価9万8,281円 → 1.5倍(8年)= 年率5.2%
古謝さん自身、所得倍増には経済成長率7〜8%が必要だと説明しています。名目でこれを10年続けた都道府県は近年の日本に存在しません。つまり具体案のない妄想の数字です。
もうひとつ、地味だけど効く指摘を。「1人当たり県民所得」はあなたの給料ではありません。県民の給料(雇用者報酬)に企業の利益と財産所得を足して、県の人口で割ったマクロ指標です。
だから、県外から年収2000万円の経営者や研究者が100人移住してくれば、この数字は上がります。恩納村のホテルで働いている人の時給が1円も上がらなくても、上がる。
これ、わたしが勝手に言ってるんじゃなくて、琉球新報が選挙中のファクトチェックで指摘しています。「手取りを2倍」という表現について、倍増の対象は企業所得を含む1人当たり県民所得であって、個人が使える手取りとは概念が違う、注釈なしでこう書くのはミスリードだ、と。まったくそのとおりです。
つまり公約の物差しそのものが、県民の実感とズレている。ここを直さないまま「倍増」を追いかけると、統計だけ改善して生活は変わらない、という4年になります。
古謝さんの構想の中心は、外から人と企業を呼ぶことです。アジアからの企業誘致、OISTと産総研を核にしたAI・量子、スタートアップアイランド構想。前県政も高度IT人材のUIJターンを進めていました。方向としては正しい。沖縄の人材だけで先端産業を作るのは、率直に言って無理があります。
ただ、「誰の所得が上がって500万円になるのか」を問わないと、政策評価を根本から間違えます。
いま沖縄県民100人の平均所得が250万円だとします。そこへ東京から年収1,000万円の高度人材を10人呼んできた。平均はどうなるか。
(250万円×100人 + 1,000万円×10人)÷ 110人 = 約318万円
平均は250万円から318万円へ、一気に68万円も上がります。
しかし、元からいた100人の所得は250万円のままです。
これが「1人当たり県民所得」という指標のカラクリです。誰ひとり給料が上がらなくても、目標は達成できてしまう。
もちろん、高度人材誘致が正しく回れば話は別です。理想はこうです。
外部の高度人材を誘致 → 沖縄企業に技術移転 → 地元人材を教育 → 地元企業の生産性が上がる → 地元従業員の賃金が上がる → 子どもの教育水準と進学率が上がる → 次の世代は県内から高度人材が出る
本土から高所得者を誘致 → 高所得者向けの住宅とサービスが増える → 統計上の平均所得だけ上昇 → 地元のホテル・飲食・小売の賃金は低いまま → 住宅価格だけ上がる
東京から来たAIエンジニアが年収1,200万円もらっているだけなら、恩納村のホテル従業員の年収300万円は1円も変わりません。その人が沖縄で会社を作って、地元エンジニアを50人、営業や事務や技術補助を100人雇い、取引先にも高付加価値の仕事が回る。そこまで行って初めて、県民の所得が上がる。
どちらに転ぶかは、運ではなく設計の問題です。そしてどちらに転んでも「1人当たり県民所得」は上がってしまう。だから、この指標だけで判定してはいけない。
OISTは沖縄の強力なカードです。世界中から研究者を集める本物の研究大学で、令和7年9月時点でOIST発スタートアップ35社、ライセンス契約30件まで来ています。これは誇っていい。ちなみに友人にココの講師をしているアメリカ人がいます。サーフィンとスノーボードの友達です。
ただ、規模の話をします。仮にOISTから大成功したバイオ企業が生まれて、研究者・技術者500人、平均年収1,000万円になったとします。素晴らしい。県にとって大ニュースです。
でも雇用は500人です。いっぽう宿泊、飲食、小売、介護には、何万人、何十万人という県民が働いている。観光関連だけで15万人です。
500人と15万人。300倍ちがう。「先端産業を誘致すれば県民所得500万円」というストーリーは、この桁の差を無視しています。
教育を改善して、いまの小中学生が大学や大学院を出て、AI・バイオ・創薬の高度人材になるまでに10年から20年かかります。任期は4年、公約は10年です。
つまり古謝さんが短期間で産業構造を変えようとすれば、当面は外部人材に頼るしかない。そして外部人材に頼るほど、さっきの失敗パターンに落ちるリスクが上がる。
しかも高度人材誘致には、沖縄固有の弱点があります。子どもの教育環境です。東京の40歳のAI研究者に「沖縄で年収1,200万円」と言っても、小学生と中学生の子がいたら、配偶者の仕事、学校、高校・大学進学、塾、医療、東京へのアクセスまで全部考えます。独身なら「海の近くに住める」は強力ですが、教育熱心な子育て世帯では、選択肢の厚い東京・神奈川・大阪・福岡と競争することになる。移住支援金を一度払っても、そこは解決しません。
結局、沖縄の産業構造改革は産業政策だけではできません。「教育政策+人材誘致+地元企業の生産性向上」を20年くらい同時に走らせるプロジェクトです。4年でも10年でもない。
古謝県政の成否を見るなら、「県民所得500万円になったか」ではなく、こう見るべきです。
もともと沖縄に住んでいた人の実質賃金の中央値が、全国との差をどれだけ縮めたか
あわせて見る指標
・大学等進学率(いま46.3%。全国60.8%)
・全国学力調査の推移
・高校卒業後の県外進学と、県外へ出た若者のUターン率
・正規雇用比率
500万円という数字そのものより、誰の所得が上がって500万円になるのか。ここを問わない政策評価は、必ず間違えます。
新知事の政策メニューを読んで、わたしが最初に思ったのは「これ、骨太の方針じゃん」でした。
似ているのは言葉づかいだけじゃありません。構造が同じなんです。
骨太の方針と沖縄の新政策に共通する3つの型
① すぐには効果が出ないものに、多額の予算をつぎ込む
大型MICE施設、J1スタジアム、潮乃森計画、北部の新空港、防災機能つき地下道、国立自然史博物館の誘致、南北縦断の鉄軌道。どれも立派だが、効くとしても10年後。
② その財源を自分で作らず、他人に頼る
国は赤字国債。沖縄は沖縄振興予算と一括交付金。どちらも「増額を強力に要望・交渉します」で終わっている。
③ そして、外れても誰も責任を負わない
10年後には知事も担当課長も入れ替わっている。「環境が変わった」で終わり。検証もされない。
②について、これは意地悪で言っているんじゃありません。古謝さんのサイト自身が、そう書いているんです。
公式サイトは「沖縄の現状3」として「未来への投資低下」=ハード交付金がピークの2014年約932億円から現在は約390億円へ、4割以下に減ったことを挙げています(出所は内閣府「令和8年度沖縄振興予算について」と記載)。
で、120政策に書いてある答えが「沖縄の発展のために必要な沖縄振興予算・一括交付金の大幅な増額を国へ強力に要望・交渉します」。
減った原因も国、対策も国。これ、国が赤字国債でなんとかするのと構造は同じですよね。自分の手で動かせるレバーの話が出てこない。
任期は4年です。公約の時間軸は8年から10年。この差が全部リスクなんですよ。倍増の期限は次の選挙より後にある。つまり選挙時点では誰も答え合わせができない。
クールジャパン機構でも国のGX投資でも、この型は何度も見ました。大きい字はだいたい効きません。
ここからが本題。わたしの提案です。
沖縄の観光が儲からない理由を「知名度が足りない」とか「高級ホテルが足りない」と説明する人がいますが、違うと思います。1,093万人も来ていて知名度が足りないわけがない。高級ホテルも死ぬほどあります。
足りないのは高く売れる商品と、それを売れる状態にする規制の緩さです。
ここで、120政策のPDFを最初から最後まで読んだ結果をお伝えします。
「沖縄を前に進める120の政策」を全部読んで数えた結果
・「規制緩和」という言葉が出てくるのは1か所だけ。しかも「企業立地を促進する税制優遇措置の拡充や規制緩和等を国へ要望・交渉します」
・「ライドシェア」は0回。一度も出てきません
・二次交通の主役は、鉄軌道・ゆいレール延伸・BRT・LRT・デマンドタクシー・自動運転
・県が自分の権限でできる規制改革として書かれているのは、実質「市街化調整区域の見直し」だけ
つまり、「沖縄移動革命」と名づけられた交通政策13項目のうち、来年から効くものがほぼない。鉄軌道なんて何十年も議論している話です。BRTもモノレール延伸も、計画と用地と莫大な予算がいる。自動運転は進めるべきですが、営業として回るのはまだ先。
いっぽうライドシェアは、制度さえ変えれば来年から車が走ります。財源ゼロで。それが1文字も出てこない。ww
補助金と規制改革を比べてみてください。
補助金:財源が要る/効果が出るまで数年〜10年/外れても責任者不在/既存事業者の延命に流れやすい
規制改革:財源ゼロ/早ければ1年で効く/やったかやってないかが一目でわかる/新規参入が増えて競争で単価が上がる
政治家が規制改革をやりたがらないのは、効かないからじゃありません。既存業界に嫌われるうえに、成果が出ても手柄が地味だからです。補助金は配った瞬間に感謝されますからね。ww
「観光で経済を立て直す」なんて絵空事じゃないの、と思う人もいるでしょう。調べました。あります。ただし、成功例と失敗例の分かれ目がはっきりしていて、そこが沖縄の話にそのまま効きます。
2011年、ポルトガルは債務危機でEUとIMFから780億ユーロの支援を受けました。日本でいえば財政破綻寸前です。
そこからの主力が観光でした。国の統計局(INE)の観光サテライト勘定によると、2025年の観光の経済への総寄与は362億ユーロ、GDPの11.8%。日本円で6兆円規模です。
で、ここからが本題。ポルトガルはライドシェアを法律で正面から合法化しています。
2017年12月にはUberは違法と判断されていました。ところが2018年、「Lei 45/2018(通称Uber法)」でTVDEという新しい営業カテゴリーを作った。禁止でも放任でもなく、新しい箱を法律で作ったんです。
・運転者は運転者証明(CMTVDE)が必要。免許保有3年以上、健康診断、犯罪歴証明、研修の受講
・車両とプラットフォームの運営事業者も、それぞれ国の交通当局からライセンスを取得
・プラットフォームは仲介手数料の5%を規制・監督コストとして拠出
・2026年8月には改正法(Lei 59/2026)が成立し、研修時間を50時間に引き上げ、車両年齢に上限、法人向け罰金は最大4.4万ユーロに強化
見てのとおり、ぜんぜん「野放し」じゃない。むしろ日本のタクシーより厳しい部分すらある。それでも「タクシー会社の管理下でしか走れない」という縛りは置かなかった。だからドライバーが集まって、事業として回った。
日本版ライドシェアが低調な理由は、たぶんここです。安全基準が厳しいからじゃなくて、新しいカテゴリーを作らず、既存業界の中に押し込んだから。
正直な但し書きも書いておきます。ポルトガルは今、リスボンとポルトでドライバーが過剰だと報じられていて、2026年の改正はその引き締めでもあります。解禁したら終わりではなく、その後の調整までがセットです。
もうひとつ。観光がポルトガルの実質GDP成長に寄与した幅は、2022年の3.6ポイントから2023年1.2ポイント、2024年0.4ポイント、2025年0.3ポイントへと下がり続けています。観光は再建の主役にはなるけれど、永久機関ではない。沖縄が「短中期は観光、長期は多角化」の二階建てで考えるべき理由でもあります。
外務省の基礎データによると、モルディブの2024年の観光客数は205万人。沖縄(1,093万人)の約5分の1です。それで観光がGDPの21.5%を占めている。1965年の独立時は後発開発途上国で、2011年にLDCを卒業しました。
1島1リゾートという徹底した規制で、客数ではなく単価で稼ぐモデルです。「客を増やさずに観光で食う」は、実在します。
ただしこれも但し書きつき。モルディブの1人当たり名目GDPは2024年で13,379ドル(世銀)で、日本や沖縄より上ではありません。そして観光依存が極端なぶん、コロナでは経済が壊滅的に落ちました。単価モデルは万能ではないし、依存のリスクは沖縄より重い。
2008年の金融危機で破綻寸前になったアイスランドは、クローナ暴落と観光で回復しました。IMF支援を2011年に卒業し、2017年には8年半ぶりに資本規制を解除しています。
ただ、これは通貨安と客数で戻した回復です。単価を上げて戻したわけではない。
そして沖縄がいま置かれているのは、まさにこの形です。円安と客数で観光収入は1兆円を超えた。でも単価は3年連続で下がっている。アイスランド型のままだと、円が戻った瞬間に終わります。
3つ並べて見えてくるのは、こういうことです。
・逆に、為替と客数だけで戻した回復は続かない(アイスランド、そして今の沖縄)
・そして、どこも補助金を配って観光が伸びたわけではない

沖縄がやるべきなのは、ポルトガルがやったこと、つまり新しい営業カテゴリーを法律で作ることです。以下、具体案を7つ。
沖縄の観光消費が地域に落ちない最大の理由は移動です。ファミリーカー主体の廉価なレンタカーを運転できない外国人がホテルから出られなければ、名護も本部も今帰仁も南城も糸満も、1円も受け取れない。ホテルの中で全部完結して終わりです。ザル経済ですね。
日本版ライドシェアは2024年8月から沖縄本島・宮古島・石垣島で走っています。が、全国的にはまるで低調。タクシー事業者の管理下でしか運行できず、地域と時間帯も限定されるので事業として成立しにくい。国の規制改革推進会議は2026年の夏も全面解禁を見送りました。
ここです。沖縄が国家戦略特区の枠組みを使って、日本版の範囲を超えた沖縄型ライドシェアを国に提案する。目的はタクシーを潰すことじゃない。季節と時間帯で激しく振れる需要の山を埋めて、県民の遊休車両と空き時間を所得に変えることです。
これが重要なのは、家計に直接カネが落ちる、ほぼ唯一の即効策だからです。ホテルの新規雇用と違って、育児や介護や漁業や農業や別の仕事と組み合わせて、空いた時間だけ稼げる。県内居住者1万人が月6万円稼げば年72億円、3万人なら216億円が家計に入る。
しかも安売りする必要がない。通常車、ワゴン、車いす対応、高級SUV、英語ガイド付き貸切とカテゴリーを分ければ、移動そのものが高単価商品になります。琉球王国史、沖縄戦、空手、泡盛、やちむん、サンゴ礁、やんばるの生態系を英語で語れるドライバーの8時間貸切。これ、普通に10万円クラスの商品です。売れます。永江塾での実績もありますので具体的に説明もできますよ。海外の高級リゾートホテルの周りには客待ちのライドシェアの車がたくさんいて、その中から好きなのを選べます。
(令和7年度の実績値を基準に、控えめな利用率を置いています)・外国人客の通常ライド:外国空路客207万9,100人の半分が滞在中4回、1回3,500円 → 約146億円
・国内客の通常ライド:国内客799万4,400人の1割が3回、1回2,500円 → 約60億円
・英語ガイド付き貸切:外国空路客の3%にあたる約6万2千件が1回10万円 → 約62億円合計 年間 約268億円
うちドライバーとガイドの取り分(手数料25%を引いた75%) 約201億円
この201億円を3万人で分けると1人あたり年67万円、月5.6万円。1万人なら年201万円です。副業として現実的な水準でしょう。
ここで注目してほしいのは、268億円という数字を観光客1人あたりに直すとたった2,450円だということです。単価9万8,281円が10万731円になるだけ。単価をわずか2.5%上げるだけで、200億円が家計に直接落ちる。
ホテルの新規雇用でこれをやろうとしたら何年かかるか考えてみてください。しかも補助金はゼロです。
もちろん安全条件は一切妥協しない。運転歴と違反歴の確認、対人対物無制限の保険、車両点検、運行記録、事前確定運賃、酒気帯び確認と1回でも酒気帯びで捕まったドライバーには資格を与えない。事故データの公開、重大違反者の排除、プラットフォームの共同責任。ポルトガルのTVDEがやっているのと同じことをやればいい。ここを緩めたら制度ごと吹き飛びます。
「高付加価値観光」という言葉はみんな使いますが、数字で定義している人はほとんどいません。定義はあります。
観光庁とJNTOは「高付加価値旅行者」を訪日1回あたりの総消費額が1人100万円以上(国際航空券代を除く)と定義しています。この層は訪日客全体の1〜2%しかいないのに、総消費額の14〜20%を占めるとされています。
では沖縄はどうか。外国人客(空路)の単価は10万5,222円。定義の10分の1です。しかも前年度比マイナス5.2%で落ちている。
ここに伸びしろがあります。仮に沖縄が、外国空路客207万9,100人の5%にあたる約10万人を、県内消費70万円クラスの層に置き換えられたとします。
これが10万人 = 年間 約618億円観光収入1兆747億円の5.8%が、客を1人も増やさずに増える計算です。
「インバウンドを増やす」では戦略になりません。どこの国の、いくら使う客を、何人取りにいくのか。ここを決めるのが政策です。
図4:国籍別の1人当たり旅行支出。沖縄の外国客(空路)の県内消費額は10万5,222円で、訪日客のなかで最下位の韓国とほぼ同水準にある観光庁の調査で、訪日客1人当たりの旅行支出を国別に見るとこうなります。韓国10万9千円、台湾18万8千円、全体平均22万7千円、香港24万9千円、シンガポール29万1千円、米国33万2千円、オーストラリア38万円、英国38万1千円。
そして沖縄の外国客(空路)の県内消費額は10万5,222円です。
(訪日客の数字は日本滞在中の総支出、沖縄の数字は県内消費額なので概念は違います。ただし水準の差はそのまま効いています)
なぜこうなるか。沖縄が来てもらっている客層が、いちばん単価が低いところに偏っているからです。令和7年4月の確定値では、台湾36.9%、韓国17.7%、中国本土14.9%、香港8.7%、アメリカ2.3%。近距離アジアで9割です。
りゅうぎん総合研究所の分析でも、2023年度は台湾41.8%、韓国22.3%、香港11.8%、中国6.3%で上位4地域が8割強。中国は2018年度の23.2%から6.3%まで落ちています。
台湾と韓国が悪いという話ではまったくありません。沖縄観光を支えてくれている大事なお客さんです。ただ「この構成のまま単価を1.5倍にする」のは、算数として無理がある。だから客層を足す。そして台湾と韓国の中でも富裕層に来てもらう工夫をする。
①香港(24万9千円) いちばん現実的。飛行時間は台北とほとんど変わらず、すでにグレーターベイ航空が那覇-香港を季節運航している。構成比8.7%をまず倍にする
②シンガポール(29万1千円) 訪日客のなかでも買物代が10万1千円で全国トップの層。なのに沖縄への構成比は1%前後とほぼゼロ。伸びしろしかない
③欧米豪(33万〜38万円) 単価が最も高く、平均滞在も13〜14泊と長い。アメリカは構成比2.3%
で、施策です。ここも「呼ぶ」ではなく「取れる状態にする」の順で書きます。
この2つは飛行時間が短く、直行便が成立しうる距離です。着陸料の減免、就航初期の座席保証、グランドハンドリングの人員確保、深夜早朝枠の運用。ここは県と国の権限でできます。古謝さんの公約にも「海外航空路線の誘致」と「那覇空港の機能強化」が入っている。方向は同じです。
ただし路線だけ引いても単価は上がりません。いま台湾便を週70便飛ばしていて単価が10万円なのが、その証拠です。便を引くのと同時に、①のライドシェア、②の受け入れ体制、④の高単価商品を用意しないと、また安い客が増えるだけになります。
欧米直行便は公約に入っていますが、正直に言って何年かかるかわかりません。待つ必要もない。
欧米豪の客は平均13〜14泊、日本を周遊します。東京と京都で1週間過ごしたあと、最後の3泊を沖縄で取る。これなら羽田・関空からの国内線で足ります。狙うのは「沖縄行きの飛行機」ではなく「日本周遊の最終章」というポジションです。
しかも欧米豪の長期休暇は年末年始と夏、オーストラリアは南半球なので季節が逆。沖縄の閑散期とかみ合います。稼働率の谷を埋める客層でもある。
富裕層は、SNSの広告では動きません
彼らが使うのはラグジュアリー専門の旅行アドバイザーです。半年から1年前に、担当アドバイザー経由で全部押さえる。だから県がカネを使うべきなのは、インフルエンサー招請でも動画広告でもなく、この業界ネットワークに入り込むことです。国際的なラグジュアリートラベルの商談会に県として継続出展し、アドバイザーを沖縄に招いて実際に体験させ、手数料と予約導線を整える。
そして「1年先の予約が英語で取れる」状態にする。ここまで書いてきた高級クルーズも釣り船も自然ガイドも、いま英語で1年先の予約は取れません。商品があっても、売り場がないんです。
結局これも規制と制度の話です。広告費ではありません。
で、そのために何が要るか。ここが本題です。
・大型ヨットが着けられるマリーナと、そこからの二次交通
・空港からの専属ドライバー、高級SUV、EV、ミニバン、オープンカー
・英語・中国語で琉球史や自然を語れる認証ガイド
・多言語対応の医療とコンシェルジュ
・貸切できる文化施設、少人数の体験、非公開の工房訪問
この一覧に、補助金で買えるものはほとんどありません。駐機枠も、入管の運用も、ガイドの資格も、営業許可も、全部「制度」の話です。カネではなく規制と運用の問題。
逆に言えば、いま沖縄がやっていることの矛盾もはっきりします。富裕層を呼びたいと言いながら、空港に着いたら移動手段が低価格帯のコンパクトカーのレンタカーしかない。それで1人100万円使ってもらおうというのは無理があります。
正直な但し書きを1つ。高付加価値旅行者の統計は調査ごとに定義も手法も違い、「訪日59万人・消費1兆円」といった数字には編集部試算が混ざっています。桁の感覚として使うべきで、精密な予測として扱うべきではありません。
ここは規制改革ではなく、はっきり公共投資でやるべきだと思います。
沖縄でいちばん深刻なのは、西海岸のリゾート帯です。高級ホテルが並んでいるのに、バスが来ない。
わたしの身内が2026年8月に現地で体験しました。バス停の時刻表を見て、これは無理だと思った。
感覚で書くのは嫌なので、沖縄バスが公表している時刻表を実際に数えました。万座ビーチ前のバス停、平日、那覇方面。20番・名護西線と120番・名護西空港線の合計です。
| 時 | 発車(分) |
|---|---|
| 6時 | 07 / 31 |
| 7時 | 01 / 31 |
| 8時 | 01 / 31 |
| 9時 | 50 |
| 10時 | 30 |
| 11時 | 10 / 45 |
| 12時 | 20 / 45 |
| 13時 | 10 / 35 |
| 14時 | 10 / 45 |
| 15時 | 19 / 49 |
| 16時 | 1本もなし |
| 17時 | 10 / 47 |
| 18時 | 40 |
| 19時 | 35 |
| 20時 | 35 |
沖縄バス「20名護西線・120名護西空港線」時刻表(令和5年10月16日実施)の平日・上り、万座ビーチ前の欄を筆者が集計。数字は同社公表の時刻表による。
1日23本。平均すると39分に1本です。
ただ、平均の話ではないんですよ。8時31分の次は9時50分。79分空きます。15時49分の次は17時10分で、81分空く。16時台は1本もありません。
ANAインターコンチネンタル万座ビーチリゾートが建っている、沖縄でもっとも有名なリゾートの目の前で、これです。名護方面も同じく23本で、最大54分空く。
チェックアウト後に少し散歩して、昼過ぎにどこかで食事して、夕方に戻る。この当たり前の動き方が、バスではできません。だから客はホテルから出ないし、レンタカーを借りられない外国人はなおさら動けない。
15分間隔なら、話がまるで変わります。
ここで「じゃあ鉄軌道を」となるのが沖縄のいつものパターンです。やめたほうがいい。用地買収と建設で何十年、費用は桁違い。しかも両陣営とも公約に書いていて、何十年も議論だけ続いている。
那覇空港―北谷―恩納―名護―美ら海の幹線に、小型の自動運転シャトルを15分間隔で流す。既存の道路を使うので用地買収がいりません。
目的は運転手を減らすことじゃない。本数を維持することです。いまのバスは「利用者が少ない→減便→さらに不便→もっと減る」という悪循環に入っている。運行コストを下げられれば、この輪を逆に回せます。15分待てば来るとわかれば、人は途中で降ります。途中で降りればカネが落ちる。
技術と制度はもうあります。茨城県境町は2020年11月から、自治体として全国で初めて自動運転バスの定常運行を始めました。2024年9月時点で累計乗車は3万1,632人で、町の人口約2万4千人を超えています。日立市の「ひたちBRT」は中型バスを使った営業路線として、2025年2月から運行中。
ただし、ここは正直に書きます。
日本初のレベル4は、止まりました
福井県永平寺町は2023年3月に国内初のレベル4認可を取得し、遠隔監視のみの無人運行を実現しました。ところが2026年4月から当面運休。町の説明は「車両およびシステム等の保証と保守の期間が満了するため」で、報道では開発企業の一部撤退が背景とされています。
認可も制度も整った。実証も立ち上げも支援された。でも、10年動かし続ける保守の面倒を誰も見なかった。
これがまさに、公共投資でやるべき理由です。実証実験を補助金で回すからこうなる。沖縄がやるなら、車両の調達と10年単位の保守契約を最初から公共側が抱える。走らせて終わりではなく、走り続けさせる契約にする。ハコモノに何百億も突っ込むより、こちらのほうがはるかに安く、はるかに早く効きます。
そして、ここが今回いちばん言いたいところです。沖縄には高単価の観光商品が決定的に足りない。
これは規制だけでも補助金だけでも解決しません。船も設備も人も要る。でも県内の中小事業者に、数億円の船を買う体力はない。だから県が公共ファンドを作って、投資と融資でリスクを取る。補助金の垂れ流しではなく、出資と回収です。
具体的に4つ挙げます。
まず現状を見てください。ホノルルと沖縄の比較です。
| 商品 | 内容 | 大人料金 |
|---|---|---|
| Star of Honolulu Pacific Star |
2時間・ビュッフェ・マイタイ1杯・ハワイアンショー | $128.88 約1万9千円 |
| Star of Honolulu Three Star |
2時間・5コース(メイン州ロブスター1尾+テンダーロイン)・乾杯+プレミアム2杯・生ジャズ | $178.95 約2万7千円 |
| Star of Honolulu Nova |
2時間・5コース(ロブスター+USDAプライム・トリュフマッシュ)・最上階の専用ルームと専用テーブル | $218.82 約3万3千円 |
| 那覇港の ディナークルーズ |
2.5時間・ビュッフェまたはBBQビュッフェ・生演奏 | 7,000円 |
(1ドル150円で換算。ホノルル側は公式サイトの表示料金)
同じ2時間で3倍から5倍。これが沖縄の観光単価が上がらない理由の縮図です。船の大きさでも景色の良さでもなく、売り方の設計が違う。
ついでに言うと、寄港するクルーズ船も同じです。MSCベリッシマのような大型船は乗客単価が低く、しかも寄港地での滞在は数時間。人数のわりに県内消費が薄い。県が誘致に力を入れる対象としては、優先順位が高いとは思えません。
沖縄が作るべきなのは、こういう船です。
・1人2万〜7万円($150〜500)
・シャンパン、ワイン、シェフが作るコース。沖縄の食材で
・DJではなくジャズ、サックス、三線の生演奏
・ドレスコードあり
・高級ホテルからの送迎つき
・英語コンシェルジュが同乗
・サンセット、花火、イルカ、島巡りなど「目的」を必ず1つ付ける
ポイントは乗合そのものを「社交の場」に変えることです。知らない客が大量に乗ってこない、という条件が価値になる。1人7万円払う客は、静けさと同席者の質にカネを払っています。
ちなみに沖縄にも芽はあります。ハレクラニ沖縄のカタマラン船サンセットクルーズは定員14名で50分・大人8,900円、ブセナテラスは45分・一般9,900円。方向は正しいが、まだ「食事も酒も演出もない短時間の乗船」です。ここに料理と酒と物語を載せれば、3万円の商品になります。
①で書いた英語ガイド付き貸切を、制度として立てます。県が認証する公認ガイドによる1日貸切ツアー特区。6時間で700ドル(約10万5千円)からスタート。
高いと思いますか。世界の相場ではこれが普通です。そして日本の通訳案内士制度は2018年に業務独占が外れていて、いま足りないのは資格ではなく「この値段で売れる品質だと客が信じられる仕組み」のほうです。県の認証は、そのための看板になります。
認証ガイドが300人、1人あたり年120日稼働すれば年3万6千件。年間約38億円の市場です。ガイド1人あたりの年間売上は1,260万円。手数料や経費を引いても、これは「観光業は低賃金」という常識を壊す数字でしょう。
これも世界ではとっくに成立しているビジネスです。ホノルルのWaikiki Sport Fishingは最大6人の乗合で、4時間300ドル、6時間350ドル、8〜10時間400ドル。1人あたり4万5千円から6万円です。知らない人同士の相乗りで、この単価が成立している。
沖縄はどうか。那覇発の半日船釣り体験が大人6,300円。嘉手納の乗合が4時間で6,500円、2時間で5,800円。貸切でも4名まで4万4千円、1人あたり1万1千円です。
同じ4時間で、ホノルルは沖縄の約8倍を取っている。魚が8倍釣れるわけではありません。
だから、こういうブランドを作ります。
・初心者歓迎
・高級タックル込み(手ぶらでOK)
・高級ホテルまで送迎
・サンセットドリンク付き
・釣った魚は提携レストランで調理
中身は前に書いたとおりです。15時出港、トーロリングとジギングを2時間、釣れた魚は船上で締める。夕方はそのままサンセットクルーズに切り替えて、シャンパンと泡盛とオリオンのプレミアム、沖縄食材の軽食。帰港したら提携する高級店で、自分が釣った魚をコース料理で食べる。船長かガイドは英語対応。
ここがいちばん大事な点です。
これ、船を買い替えなくてもできます。
いま6,300円で売っている船と、同じ船です。もちろん漁船に毛の生えたようなのでは無理ですが船体だけだとけっこういいのもあります。
違うのは、タックルと送迎とドリンクと提携レストランと英語対応、つまり「組み合わせ方」だけ。1便あたりの売上は6名で29万8,800円になり、単価では約8倍。仕入れが増えるぶん利益は同じ倍率にはなりませんし、高単価商品が毎日満船になるわけでもない。それでも既存の遊漁船業者の年間売上を、船を1隻も買い替えずに2〜3倍にできると思います。
設備投資がほとんど要らないのに単価が跳ねる。これが「高付加価値化」の本当の姿です。DXでもAIでもありません。
30隻が年250便動かせば年間約22億円。加えて提携飲食店と送迎にもカネが回ります。
やんばる、慶良間、西表。世界自然遺産と国立公園を持っていながら、沖縄の自然体験はいまだに「シュノーケル4,800円」の世界です。
世界の相場を見てください。ヨセミテ国立公園の民間ガイド会社が公表している2026年の料金は、4名までの半日(5時間)ツアーが1,000ドル、フル(9時間・昼食付き)が1,325ドル、ハイカントリーのフル(10時間)が1,500ドル。追加1名は185〜220ドルです。ヨセミテ・コンサーバンシー経由のネイチャリストガイドでも、1〜4名でハーフ500ドル、フル850ドル。
1グループ1日1,000〜1,500ドル。これが自然ガイドの世界価格です。日本円で15万〜22万円。
沖縄でこの値段が取れないと決めたのは誰でしょうか。やんばるは世界自然遺産で、ヤンバルクイナもノグチゲラもここにしかいない。慶良間の海は世界屈指です。足りないのは資源ではなく、値段と品質を保証する制度です。
やることは決まっています。少人数、専門ガイド、英語対応、入域制限つき。1人2万円のガイドツアーから始める。人数を絞るほど自然は守られ、単価は上がる。ここは規制を「緩める」のではなく「かける」ことが、そのまま商品価値になる典型例です。年20万人が使えば約40億円。
最後がこれです。県の公共ファンドが出資して、県外・海外の富裕層向けの別荘を建て、販売し、その後の運用まで面倒を見る。
なぜこれが観光政策になるのか。理由は4つあります。
4年で200棟、1棟平均1.5億円なら300億円の投資が県内に落ちます。ハコモノと違って、売れれば回収できる。②売って終わりではなく、継続雇用が生まれる
管理、清掃、リネン、警備、造園、シェフ派遣、コンシェルジュ。1棟あたり年200万円の管理受託でも、200棟で年4億円。しかもこれは通年の仕事で、季節変動が小さい。③所有者が来ない期間は、貸せる
別荘オーナーが年に使うのはせいぜい数週間です。空き期間を1泊15万円で年80泊回せば、200棟で年24億円の宿泊需要。④別荘オーナーは、最強のリピーターです
年に何度も来て、県内で消費し、友人を連れてくる。しかも広告費ゼロで。
ちなみにここでも宿泊税の設計ミスが効いてきます。1泊15万円の別荘レンタルでも、課税標準の上限が10万円なので宿泊税は2,000円、実効1.3%。高い宿ほど軽い、という話は別荘にもそのまま当てはまります。
で、正直な但し書き。これはこの記事の前半で警告した失敗パターンと、紙一重です。
本土から高所得者を誘致 → 高所得者向け住宅が増える → 統計上の平均所得だけ上昇 → 地元の賃金は低いまま、住宅価格だけ上がる
ニセコでも京都でもハワイでも起きたことです。何もしなければ沖縄でも起きます。
だから条件をセットにします。
・県民向け住宅の供給を同時に増やす。別荘だけ建てて住宅を建てないなら、やる意味がない
・県内事業者の受注比率を条件にする。本土のゼネコンが持って帰るなら県民の所得は増えない
・管理会社の県内設置を義務づける。継続雇用はここで生まれる
・短期賃貸は登録制にし、日数・区域・騒音・ごみを規制する
要するに、富裕層に売る場所と、県民が住む場所を、制度で分ける。これをやらずに別荘だけ建てると、4年後に「平均所得は上がったのに家賃だけ上がった」という最悪の結果になります。
公認英語ガイドの1日貸切(300人) 約38億円
OKINAWA SPORTFISHING CLUB(30隻) 約22億円
自然ガイド(年20万人) 約40億円
別荘の貸出(200棟) 約24億円
──────────────
合計 約167億円
+ 別荘の建設投資300億円(4年)と管理受託 年4億円①ライドシェア268億円 + ②富裕層の受け入れ618億円 と合わせて
年間 約1,053億円
観光客1人あたりに直すと 9,632円
前提はぜんぶ本文に書いたとおりで、隻数も棟数も稼働日数もわたしが置いた数字です。予測ではなく、規模感の見取り図として見てください。
それでも言えることが1つあります。単価を4年で2万1,719円上げるという目標に対して、ここまでの積み上げで44%が埋まる。残りは宿泊税の設計、夜間消費、滞在日数です。1兆円企業を1社誘致するより、こっちのほうがよっぽど現実的でしょ。
2027年2月1日から沖縄県の宿泊税が始まります。定率2%、上限は1人1泊2,000円。市町村が併課する場合は県0.8%+市町村1.2%。県と5市町村あわせて年間約77億円を見込んでいます。定率制の都道府県は全国初で、方向はいい。
ただ、設計にミスがあります。
課税標準の上限が10万円なんですよ。つまり素泊まり10万円を超えたら税額は一律2,000円で固定。素泊まり20万円の宿なら実効税率1%、50万円なら0.4%。しかも課税標準は素泊まり料金なので、食事込みで売る高級旅館やオールインクルーシブのリゾートは、表示価格に対する実効税率がさらに下がる。
高付加価値観光を掲げながら、高付加価値の宿がいちばん税を払わない仕組みになっている。ww
導入から2年運用して、高額帯の上限引き上げか段階税率を検討すべきです。これ、条例改正でできます。国に頼まなくていい。新産業の育成と違って1〜2年で財源に反映される。
使途も一般財源に溶かさないこと。二次交通、自然と文化の保全、人材育成、観光従事者と住民の住宅・交通、観光危機管理に限定して、毎年度、事業別の支出と成果と受益地域を公開する。ここを公開しないと、5年後には何に使ったか誰もわからなくなります。いつものやつです。
ホテル改修、DX、車両、国際線誘致、コンテンツ造成。どれも補助金が出ますが、いまは基本的に無条件です。
これを全部、事後検証つきにする。県内雇用者の賃上げ、正規化、有給の研修時間、県内調達率、離職率。達成できなければ次はなし。
なぜかというと、外資や県外資本の高級ホテルが建って客単価が上がっても、予約は海外OTA経由で手数料が出ていき、食材は本土と海外から仕入れ、運営は県外本社が握り、現場の雇用は非正規のまま、というパターンが普通にあり得るからです。売上は増える。統計上の観光収入も増える。上がるのは地価と家賃だけ。県民は損をする。
ちなみに沖縄の最低賃金は2026年度に1,086円(プラス63円)と答申され、12月2日発効の見込みで全国最下位を脱します。方向は正しい。でも最低賃金だけ上げると価格転嫁できない零細を潰します。順番は、単価と稼働率を上げて粗利を作るのが先です。
これ、取材してて一番びっくりしました。
観光が県内にいくら残したかを示す「経済波及効果」の推計、沖縄県のサイトに載っている最新版は令和元年度です。その前は平成29年度、27年度、24年度。
つまり、観光収入が7,047億円から1兆747億円へ1.5倍になったこの6年間について、そのカネのうちいくらが県内に残って、いくら県外に漏れて、何人の雇用を生んだのかを示す公式の数字が存在しない。
売上(観光収入)は毎年8月に発表される。客数は毎月発表される。でも「で、県民にいくら届いたの?」は6年前で止まっている。いくらなんでもケニー、これは酷いよ
測っていないものは改善できません。新知事が最初にやるべきなのは倍増宣言じゃなくて、分母の測定を再開することです。
参考までに、その令和元年度の数字を置いておきます。旅行・観光消費額7,970億円に対して、直接効果が7,312億円、県外への漏出が658億円、生産誘発額1兆1,702億円、付加価値誘発額5,890億円、雇用誘発15万3,574人。
この付加価値5,890億円を同年度の名目県内総生産4兆6,333億円と比べると12.7%。よく「観光は県内総生産の2割」と言われますが、あれは売上と付加価値という別モノを割り算した数字です。正しく比べると13%弱。一方で雇用は15万人超で、労働力人口の約2割。
付加価値では13%、雇用では20%。1人当たりの付加価値が低い産業に、県民の5人に1人がぶら下がっている。ここを動かさずに所得倍増は無理です。
図5:入域客1,093万5,300人(令和7年度)を基準に、客数を増やさず単価だけ上げた場合の賃金原資。付加価値率73.9%は令和元年度の実績、労働分配率は仮定客数を1人も増やさず、単価だけ上げたらどうなるか。ざっくり計算しました。
単価プラス1万円で年間の追加消費が約1,094億円。プラス3万円で約3,281億円。公約どおり1.5倍(プラス4万9,141円)なら約5,374億円です。
ここに令和元年度実績の付加価値率73.9%と、労働分配率40%を当てると、賃金原資は約1,588億円。観光関連15万人で割ると1人あたり年106万円。控えめなシナリオでも38万円。
ただし、ここは正直に書きます。
・労働分配率は仮定です。県が出している数字ではありません
・付加価値率73.9%は令和元年度の実績値で、いまの数字は誰も持っていません(前述)
・追加の労働報酬には新規雇用ぶんも残業も社会保険の事業主負担も含まれます。人手不足のまま客数と業務量だけ増やしたら、増えるのは時給じゃなくて求人と残業です
だから、客数の抑制と単価の上昇と省人化と賃上げ条件を同時にやるしかない。どれか1つだけやると失敗します。
批判ばかりしていても仕方ないので、自分の案の答え合わせもやっておきます。前提を先に置きます。
・入域客数は増やさない。1,093万5,300人(令和7年度)で据え置き
・単価だけが、古謝さんの公約と同じ年5.2%ペースで4年間上がる(9万8,281円→12万369円)
・県内付加価値率60%(令和元年度実績の73.9%より低め)、労働分配率40%
・観光関連の対象就業者15万人
この前提で計算すると、こうなります。
・名目県内総生産 4兆6,430億円 → 約4兆7,879億円(+3.1%)
・1人当たり県民所得 231万5千円 → 約241万円(+9.9万円)
・観光関連15万人の賃金原資 1人あたり年+38.6万円
・ライドシェアに登録して月6万円稼いだ人 年+72万円(別枠)
図6:客数を増やさず単価だけを公約ペースで4年上げた場合の試算。県平均では+9.9万円、観光で働く人では+38.6万円と、同じ政策でも見る物差しで4倍近く違うちなみに、この試算が求める単価の上昇幅は+2万1,719円です。さっき積み上げた具体策、ライドシェア268億円、富裕層の受け入れ618億円、高単価商品5本で167億円。合わせて1,053億円で、1人あたり9,632円分。つまりここまでで必要な上げ幅の44%が埋まります。残りは宿泊税の設計、夜間消費、滞在日数です。絵空事の数字ではありません。
ここで、逃げずに書いておきます。
わたしの案でも、公約の倍増ペースには届きません。10年で所得を倍にするには4年時点で+83.5万円必要ですが、この試算は+9.9万円です。8分の1です。
さらに悪い話。全国も伸びます。1人当たり国民所得352万1千円が年2%で伸びれば4年後は約381万円。沖縄が241万円なら比率は63%で、いまの65.7よりむしろ悪化する。
つまり、観光の高付加価値化だけで所得倍増も格差解消も達成できません。それは古謝さんの案でも、わたしの案でも同じです。ここを「できる」と言う人がいたら疑ったほうがいい。
じゃあ意味がないのか。違います。図6をもう一度見てください。
県平均だと+9.9万円。でも観光で働いている15万人で見ると+38.6万円。ライドシェアで動いた人は+72万円。同じ政策なのに、見る物差しで4倍から7倍ちがう。
これがこの記事でずっと言っていることです。1人当たり県民所得という物差しは、暮らしを映していない。倍増しなくても、観光で働く人の手取りが年40万円増えれば、生活はまるっきり変わります。月3万円強です。
ちなみに8年やれば、単価は1.5倍の14万7,422円で追加消費は年5,374億円。付加価値率65%・労働分配率40%なら賃金原資は約1,397億円で、15万人あたり年+93万円まで伸びます。倍増ではないけれど、全国最下位からは確実に抜けます。
で、いちばん言いにくいことを最後に書きます。
規制改革には、補助金と決定的に違う性質があります。機会を作るだけで、お金は配らない。
補助金は申請すれば来ます。何も変えなくても来る。だから政治家は配りたがるし、有権者も喜ぶ。でも規制改革は違って、制度が変わっても、動かない人のところには1円も来ません。
ライドシェアが解禁されても、登録しなければ月6万円は入ってきません。英語ガイドの認証制度ができても、英語をやらなければ8時間10万円の商品は担当できません。今までと同じ生活をしていて収入が増える方法は、残念ながらありません。
具体的に何をやるか、書いておきます。
沖縄の最低賃金は2026年12月から1,086円です。同じ1時間で、時給1,086円のままか、英語で琉球史とサンゴ礁を説明できて時給3,000円か。差はそこにしかありません。中国語でも韓国語でもいい。2. 空き時間を売れる状態にしておく
ライドシェアの登録、二種免許、ガイド認証。制度ができてから準備する人と、できた瞬間に走り出せる人では、最初の2年の収入がまるで違います。3. 技能に値札をつける
ダイビング、食のペアリング、文化解説、安全管理、レベニューマネジメント。「なんとなくできる」を「認証があって単価が説明できる」に変える。値段は資格につきます。4. 事業者は、安売りをやめる
単価が3年連続で下がっているのは、県のせいだけじゃありません。値上げが怖くて据え置いた事業者の合計がこの数字です。まず自分の商品を1割上げてみる。5. 動く
同じ職場で同じ仕事をしたまま給料が上がるのを待つのが、いちばん確率が低い。転職でも副業でも独立でもいい。6. 4年後に、数字で判定する
「頑張ります」ではなく、観光関連の賃金中央値と1人1泊消費額と県内調達率を公表しているかで判定する。測らない知事は、次は落とす。
厳しいことを書いている自覚はあります。でも、8年間「誰かがなんとかしてくれる」を待った結果が、全国比65.7です。
国に要望しても、知事が代わっても、あなたが去年と同じことをしていたら来年の給料は同じです。制度はチャンスを作るだけ。取りに行くのは自分です。
逆に言えば、動く人にとってはこれ以上ない4年になります。1,093万人の客が、すでに来ているんですから。
「観光依存がもっと強くなるじゃないか」
そのとおりです。台風、感染症、地政学、景気後退で吹き飛ぶ産業です。だから創薬もITも海洋も物流も農業も教育も、長期投資は続けるべき。ただ「依存を減らす」ことと「いま最大の輸出産業の単価を上げない」ことは別の話です。短期は観光の質を上げて、その税収と人材で多角化を支える。二階建てでいくしかない。
「富裕層優遇だろ」
目的は富裕層をもてなすことじゃなくて、県外から高い支払意思を引っぱってきて県民の賃金と公共サービスに変換することです。だから宿泊税の高額帯を機能させるし、補助金に賃上げ条件をつける。逆でしょう。富裕層からむしり取ろうと言ってるのです。
「県民向けの値段まで上がる」
観光価格と生活価格を分ける。県民割引、住民用交通パス、公営施設の住民枠、生活路線への宿泊税充当。観光地中心部の短期賃貸は登録・日数・区域・騒音・ごみの規制を強化して、住宅のホテル化を抑える。ここは規制を「緩める」んじゃなく「かける」ほうです。
「ライドシェアがタクシーを潰す」
供給不足の時間帯と地域から入れて、タクシーも同じアプリ・同じ事前確定運賃・高級車カテゴリーに参加できるようにすればいい。タクシー会社には運行管理も研修も整備も保険も売れます。守るべきなのは特定の業態じゃなくて、安全な移動と運転者のまともな所得です。
公約の期限は8年後と10年後。任期は4年。だったら4年後に見る数字を、いま決めておけばいい。
2. 1人1泊当たりの県内消費額(客数じゃない)
3. 県内調達率と、県内企業への予約・決済比率
4. 正規雇用比率と離職率
5. 経済波及効果の推計が毎年公表されているか
6. 北部・中部・南部・宮古・八重山の地域別、年齢別、性別、雇用形態別の内訳
平均値だけ見ていると、高所得の移住者が増えて企業利益が増えれば数字は改善します。でも生活は何も変わらない。前の県政の8年でも、新しい県政の4年でも、そこは同じです。
最後にひとつだけ。
客単価を上げて、県内に残して、付加価値に変えて、その増えた分を県民の労働者に配る制度まで作って、はじめて観光政策は賃金政策になる。
沖縄にはすでに1兆円の域外需要があります。足りないのは需要じゃない。分配の設計と、それを可能にする規制改革です。そしてそれは、10年待たなくても、カネをかけなくても、今年から始められる。
やらないなら、4年後にまた同じ選挙をやることになります。
このコーナーを楽しみにしてくれる方がいて嬉しいです。
さて沖縄と言えば泡盛。そして長年熟成させた古酒(クースー)は琥珀色でヤバい。昔は女の子が産まれたときに瓶を地中に埋めて、嫁入りするときに掘り出した。しかし沖縄戦の砲撃でほとんどだめになってしまったとか。
18年古酒でもこんなに安い。安すぎでしょ。3万円くらいのほうが富裕層には売れると思います。40ドルのワインなんて彼らから見たら安いもん。値段の付け方がおかしいですよ、沖縄
一次資料(原典を開いて確認)
・沖縄県 文化観光スポーツ部 観光政策課「令和7年度の観光収入」2026年8月6日公表 PDF
・同「令和6年度の観光収入」2025年8月21日公表(内閣府 沖縄振興審議会専門委員会 参考資料1所収) PDF
・沖縄県「令和元年度 沖縄県における旅行・観光の経済波及効果【推計結果】」 PDF
・沖縄県 統計課「令和5年度県民経済計算からみた県経済の動き」 PDF
・沖縄県 統計課「令和元年度県民経済計算からみた県経済の動き」(名目県内総生産4兆6,333億円) PDF
・沖縄県「宿泊税の制度の概要」 PDF/「沖縄県宿泊税」 県サイト
・沖縄県「観光収入・経済波及効果」(波及効果の最新推計が令和元年度である根拠。2026年8月6日更新) 県サイト
・厚生労働省 沖縄労働局資料(令和元年 労働力人口74万6千人) PDF・古謝げんた公式サイト「政策」(3つの約束と数値目標) サイト
・古謝げんた政策集「沖縄を前に進める120の政策」 PDF
・玉城デニー氏 公式サイト「2026年玉城デニー政策」(公約の柱と具体策) サイト報道ベース
・日本経済新聞「沖縄県知事選挙、古謝玄太氏が初当選 現職ら5人に大差で勝利」2026年9月13日
・NHK「沖縄県知事選挙 新人の古謝玄太氏が初当選 現職ら抑える」2026年9月13日
・沖縄タイムス「古謝玄太氏が政策発表 沖縄県知事選へ『10年で所得倍増』」2026年8月14日
・琉球新報「古謝氏『手取り2倍』は本当か?<2026知事選ファクトチェック>」
・沖縄タイムス「[社説]最低賃金1086円 賃上げ続く環境整備を」2026年9月4日
・日本経済新聞「日本版ライドシェア、『タクシー補完』制度に限界 大都市で浸透せず」2026年
・沖縄タイムス「日本版ライドシェア 沖縄本島・宮古・石垣で続々開始」(2024年8月開始)・りゅうぎん総合研究所「沖縄県と全国の所得格差についての分析」(労働生産性の低さ、宿泊・飲食サービス業は全国46位。沖縄タイムス2023年報道による) 記事
・沖縄振興開発金融公庫「うちな〜金融経済レビュー 沖縄県の所得水準」(第3次産業約84%、非正規雇用比率約43%。内閣府サイト所収) PDF
・沖縄振興開発金融公庫 記者発表資料(令和5年度の大学等進学率46.3%、全国平均60.8%、全国最下位) PDF
・沖縄振興開発金融公庫「沖縄における若年雇用問題」調査レポート149号(就業者構成比の高い産業ほど労働生産性が低い) PDF
・日本政府観光局(JNTO)「高付加価値旅行マーケティング戦略」(訪日1回あたり総消費額100万円/人以上、国際航空券代を除く) サイト海外事例(報道・機関データベース)
・外務省「モルディブ共和国 基礎データ」(観光客205万人、観光がGDPの21.5%、1人当たり名目GDP13,379ドル) サイト
・The Portugal News「Tourism contributed 11.8% to Portugal’s GDP in 2025」2026年8月3日(ポルトガル統計局INE 観光サテライト勘定。362億ユーロ、実質成長への寄与の低下) 記事
・The Portugal News「’Uber Law’ comes into force」(Lei 45/2018によるTVDE制度、10年ライセンス、仲介手数料5%の拠出) 記事
・日本経済新聞「アイスランド中銀総裁『銀行救わず危機脱す』」(観光と漁業による回復、資本規制の解除) 記事
※TVDEの2026年改正(Lei 59/2026、研修50時間・罰金最大4.4万ユーロ等)は民間の解説サイトによる情報で、法令原文には当たれていません。・観光庁「訪日外国人消費動向調査」2024年年次報告書(国籍別1人当たり旅行支出) PDF
・観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年確報」(1人当たり22万9千円、ドイツ39万2千円・英国39万1千円・豪38万7千円、買物代はシンガポールが10万1千円で最高) PDF
・沖縄県「入域観光客数概況」令和7年4月確定版(国籍別構成比)、令和8年3月確定版(グレーターベイ航空の那覇-香港線) PDF
・りゅうぎん総合研究所「沖縄県内における台湾からの入域観光客」(2023年度の国籍別構成比、台湾路線 週70便) PDF高単価商品の比較に使った価格(公式サイトで確認)
・Star of Honolulu 公式サイト(Pacific Star $128.88/Three Star $178.95/Nova $218.82。いずれも大人・2時間) サイト
・Waikiki Sport Fishing 公式サイト 乗合料金(4時間$300/6時間$350/8〜10時間$400、最大6名) サイト
・沖縄・那覇港のディナークルーズ(大人7,000円、WEB割6,700円) サイト/那覇セントラルホテル サイト
・ハレクラニ沖縄 カタマラン船サンセットクルーズ(50分・定員14名・大人8,900円) サイト
・ザ・ブセナテラス サンセットクルーズ(45分・定員40名・一般9,900円) サイト
・沖縄の船釣り相場(那覇発 半日6,300円、嘉手納 4時間6,500円・2時間5,800円、那覇の貸切4名44,000円) たびらい沖縄/海友丸/ミツワ
・Discover Yosemite 2026年料金(4名まで ハーフ$1,000/フル$1,325/ハイカントリー$1,500) サイト
・Yosemite Conservancy「Tour Operators」(1〜4名 ハーフ$500/フル$850) サイト
・沖縄バス「20名護西線/120名護西空港線 時刻表」(令和5年10月16日実施。万座ビーチ前の平日・上り23本、下り23本は筆者が集計) PDF/運行路線一覧 サイト
自動運転バス
・RoAD to the L4「自動運転移動サービス社会実装・事業化の手引き」第2版(2025年7月)。永平寺町のレベル4、ひたちBRTが2025年2月から運行中 PDF
・総務省「令和6年版 情報通信白書」(茨城県境町の定常運行、永平寺町のレベル4) サイト
※境町の累計乗車3万1,632人(2024年9月時点)と、永平寺町が2026年4月から当面運休した経緯・理由は、いずれもネット上の解説記事によるもので、町の公式発表そのものには当たれていません。
筆者計算
年率換算(8.0%/9.1%/5.2%)、追加消費額と賃金原資の試算、付加価値率73.9%(5,890億円÷7,970億円)、付加価値の対県内総生産比12.7%(5,890億円÷4兆6,333億円)、雇用誘発の対労働力人口比約20.6%(15万3,574人÷74万6千人)は、上記一次資料をもとにした筆者の計算です。
編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2026年9月14日の記事より転載させていただきました。









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