東京大学の山口慎太郎教授の著書『子育て支援の経済学』(2021年、日本評論社)に掲載されたグラフの誤りが、X上で一般ユーザーによって指摘され、訂正版が公開された(アゴラで既報)。
ところが、この一件は単なる誤記の話で終わらなかった。指摘を受けて教授本人が迅速に対応した一方で、「素人がプロに文句をつけるな」という趣旨の権威主義的な姿勢が目立った。
最初の図は山口慎太郎氏がすぐ訂正
最初に指摘したのは経済学者ではなく、X上の一般ユーザーだった。書籍を読み込んだ上でOECDの原データを自ら取得し、グラフを書き直した結果、「統計的に有意な相関なし」と結論づけ、山口氏もミスを認めた。
山口慎太郎先生に
『子育て支援の経済学』の冒頭第1章(6ページ)掲載の図 1.3 につきまして
訂正とその後の補足分析をおまとめ頂きました。https://t.co/KEBdvEmFbBぜひこちらの内容と、政策の効果検証を具体的に議論している第2章以降の内容もあわせてご覧いただければ大変幸いです。 https://t.co/6EKLKM7OwN pic.twitter.com/ucN2PGz72d
— 経済セミナー編集部 (@keisemi) September 16, 2026
ところがX上で目立ったのは、誤りそのものより「誰が指摘したのか」をめぐる反応だった。慶應義塾大学ビジネス・スクール教授の太田康広氏はこう投稿した。
評価の定まったジャーナルに掲載された経済学の実証論文を、ド素人が論評するツイートを見て、なんとコメントしたらいいか窮する。批判して叩いてみたらいい。意味のある批判ができたなら、それは立派な研究業績。(ただ、その辺の喧嘩自慢がプロのボクサーに喧嘩を売るくらいの感じではある。)
— 太田康広 (@yohta) September 15, 2026
この投稿は「素人がプロに文句をつけるな」という態度の典型として引用され、批判を集めた。書籍のグラフは査読付き論文そのものではない一般書の導入図であり、データは公開されているOECD統計だ。
こういうの見れるのがTwitter(現X)の醍醐味 pic.twitter.com/X85mnyDt8t
— ano_ano (@ano_ano_ano) September 16, 2026
他にも「素人の意見は捨て置いてよい」といった擁護の空気を指摘する投稿が相次いだ。あるユーザーは「プロの話のマクラに素人が文句をつけるな」と書いた。
指摘されている図は、本著の主題である子育て支援について一般読者向けの話のマクラに過ぎない。芸人さんの話をファクトチェックするような野暮な切り抜きとしか言えない https://t.co/nA8IwThAln
— 伊芸研吾 Kengo Igei (@KengoIgei) September 15, 2026
査読論文を書いたこともない学者が「国際的トップジャーナル」に載る大先生が間違えるはずがないという投稿を書いた。
この発言が、国際的トップジャーナルはおろか査読論文もほぼない稲葉先生から出てくるところが味わい深いです。
2023年のJournal of Philosophy of Life の論文も招待論文でしょう。
私は稲葉先生のご著書にたいへん多く学んでおり尊形しているので、こういう指標がいかに難しいかということですね。 https://t.co/kYHn24Czts
— しゃーろっと🏊♀️ (@CdeWitte1997) September 16, 2026
学者先生の権威主義?って
素人にはとても理解できないwどうして実名で言い切っちゃうんだろう
と思ってしまう稲葉振一郎 明治学院大学社会学部教授?
太田康広 慶応義塾大学ビジネス・スクール教授
伊芸研吾 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任准教授関東学院の中泉生生は訂正済 pic.twitter.com/btrlNH1vg9
— みさりん (@sqiasV7A0034101) September 16, 2026
今回の件のきっかけは、本田由紀東大教授の投稿をめぐる炎上と、オープンレター問題が連なっており、山口教授もその文脈で名前が挙がっていた。権威ある学者の著作や発言が、ネット上の検証にさらされやすい状況が続いていた。
AIが、事実誤認、因果の過大主張、恣意的なデータ引用などを短時間で指摘してくれるようになったので、過去の研究は次々に間違いが暴かれていくと思います。AIで検討するとわかりますが、多くの本や論文に、びっくりするくらい間違いがあります。 https://t.co/U6z3sljR6i
— 古市憲寿 (@poe1985) September 16, 2026
AI時代には、専門家と素人の境界もなくなる。まして専門家の明白な誤りを素人が指摘しているのに素人をバカにする(専門家ともいえない)経済学者は、査読論文の数だけを基準に学者をランキングする風潮の生んだ恥ずかしい状況である。







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