イランでNPT離脱を求める声高まる

イラン原子力庁のモハマド・エスラミ長官は、14日に始まった国際原子力機関(IAEA)加盟国の年次総会に出席し、演説を行う予定だったが、米国が「スナップバック」発動による国連制裁からの免除措置に反対したため、IAEA総会に出席できなかった。イラン政府はこれに反発し、同国のIAEA担当大使は総会で「この取り消し、およびそれに対して示された法的根拠は、政治的行為であり、IAEAの政治化が進んでいることを明白に示すものだ」と批判した。

原子力エネルギーの平和利用を進めるIAEAの旗(IAEA公式サイトから)

IAEAがイランを国連安全保障理事会に付託し、イランの原子力庁長官がウィーンで開催された同機関の年次会議への出席を禁じられたことを受けて、イラン指導部内で核拡散防止条約(NPT)からの離脱を求める声が強硬派の間で高まっている。イランの政治体制内には、「NPT加盟がほとんど保護をもたらさない」と主張する声と、「離脱すればテヘランの残された外交的・法的優位の一つを放棄することになる」と警告する意見とに2分している。

海外のイランメディア「イラン・インターナショナル」 マリヤム・シナイー記者は17日、「イランではNPT離脱を求める声が高まる一方、批判者たちは戦略的罠を警告している」という見出しで、イラン指導部内のNPT離脱論争を報じている。以下、「イラン・インターナショナル」の記事内容を紹介する。

イラン最高国家安全保障会議の書記官モフセン・レザエイ氏は13日、「IAEAによる政治的かつ破壊的な行動はNPTからの離脱へと押しやる」と述べている。その一方、インド訪問中のマスード・ペゼシュキアン大統領は同日、イランが核兵器を求めているわけではないことを改めて強調し、「もし核兵器を求めていたなら、NPTのメンバーにはならなかっただろう」と主張し、欧米諸国の「イランの核保有疑惑」を一蹴している。

NPT離脱支持者は、「NPT加盟がイランを国際的な圧力や核施設への攻撃から守ることに失敗している」と指摘し、「加盟国の継続は、加盟国の核権利が義務と同等に重視される場合にのみ意味がある」と強調する。

ライシ元大統領の下で政府情報評議会の議長を務めたセペール・ハラジ氏は、「なぜイランが条約に残っているのか」と疑問を呈し、「彼らは核施設を爆撃し、科学者を殉教させ、核技術を承認し、残りの核施設も攻撃すると脅迫している。彼らはイランの件を安全保障理事会に付託し、原子力機関の長官がIAEAに入ることを許さない。では、なぜ私たちはまだIAEAにいるのか?」とXに書き込んでいる。

この議論は議会にもまで及び、議員たちはイランのNPT離脱案を準備中という。国会議員のハッサン・アリ・アフラギ氏は16日、ファールス通信に対し、議員たちは議会指導部の承認を得れば投票にかけられる法案を準備したと語った。そしてアフラギ氏は「イランはできるだけ早く条約を離脱すべきだ」と述べた。しかし、この提案はまだ正式に議会の国家安全保障・外交政策委員会に届いておらず、議会の議題にも挙がっていない。

保守系「ホラーサーン紙」は16日、「NPT条約離脱が革命的かつ抑止力のある対応のように見えるかもしれないが、別の憂慮すべき状況が浮かび上がる」と書き、「アメリカとイスラエルはイランの政治的議論を核実験、核ドクトリンの変更、NPTからの即時離脱など、より過激な立場へと意図的に誘導してきている」と、警戒を呼び掛けている。

同紙によると、「イランが抑止力を達成する前に条約を離脱することは、強さを示すどころかテヘランの意図を露呈させ、敵対勢力に行動の機会を与える可能性がある。イランは公式かつ高額な脱退を行わずに実質的な成果の重要な部分を獲得した。IAEAは以前のアクセス権を失い、テヘランはNPT加盟の法的保護とロシア・中国の政治的支援の恩恵を受け続けている。公式な撤退は、新たな戦略的優位を生み出すことなく、この有用なグレーゾーンを破壊することになる」というわけだ。要するに、NPT撤退はイランに利益をもたらさない。イスラエルの目的に沿ったものになるという深読みだ。

ちなみに、ワシントンの核監視機関が分析した新しい衛星画像によると、イランは2024年以降2度攻撃を受けているパルチン軍事複合施設の強固な施設「タレガン2」を急速に再建している。9月13日のヴァントル・テクノロジーズの映像には、テヘラン南東部の「タレガン2」で大規模な工事が行われており、イランが破壊された地下構造物の上に大きなタープを張り上げている様子が映っている。画像にはダンプトラック、ブルドーザー、コンクリートポンプトラック、ミキサー、クレーンが敷地内で稼働している様子が映っています。

同施設は2024年10月のイスラエルの攻撃で破壊されたが、イランは2025年5月に再建を開始し、最終的にコンクリートで覆われ土で覆われた鉄筋構造物を建設した。2026年初頭までに、このサイトは実質的に強化されたバンカーとなり、コンクリートのバリアやドローンからの防御などの追加の防御施設が設けられた。空爆を受けた後もイランは「タレガン2」の再建を諦めておらず、近年は攻撃を耐え抜くための「要塞化」を急速に進めているという。

「タレガン2」(Taleghan 2)は、イランの首都テヘランの南東約30キロメートルに位置するパルチン(Parchin)軍事複合施設内にあって、イランの核兵器開発計画と深く結びついた極秘施設。 かつてイランが組織的に進めていたとされる秘密核開発計画「アマド計画(AMAD計画)」において、核兵器のデザインや研究・テストに使用されていたとされています。 米国やイスラエルの情報機関、および軍事専門家から「核兵器開発の核心拠点」とみなされてきた。

「イラン・インターナショナル」のよれば、「タレガン2」にはかつて特別に設計された高性能爆薬チャンバーと爆発圧縮の研究に使われたフラッシュX線装置が収容されていた。2003年にインプロージョン型核兵器の起爆に関連する多点起爆システムの縮小試験が行われた。米国やイスラエルは、「タレガン2」の再建と防衛力強化をイランの「核野望の継続」として厳重に警戒している。

なお、IAEAのグロッシ事務局長は、「IAEAは6月のブシェール原子力発電所の査察を除いて、イランの核関連施設への査察は行っていない」と述べ、イランが最大60%の純度に濃縮されたウランを440.9キログラム保有していると推定されているが、「現在の保管場所を確認できず、イランの4番目の濃縮施設であるイスファハーンの状況も依然として特定できない」と述べている。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年9月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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