医師の処方箋なしで一部の医療用医薬品を販売する「零売(れいばい)」をめぐり、東京地裁は9月18日、零売薬局側の主張を退ける判決を言い渡した。角谷昌毅裁判長は、医療用医薬品の販売は処方箋に基づくことが原則だと判断した。

「医療用医薬品」の市販は法律で禁止されていない
零売とは、医療用医薬品のうち法律上の処方箋医薬品に指定されていない医療用医薬品を、薬剤師が処方箋なしで販売する仕組みだ。厚労省は従来、こうした医薬品についても処方箋による交付を原則とし、零売は一般用医薬品では対応できず、受診も困難であるなど「やむを得ない場合」に限定してきた。
これに対して零売薬局を運営するグランドヘルス、まゆみ薬局、長澤薬品の3社は、処方箋医薬品以外について薬機法は処方箋なしの販売を明文で禁止しておらず、厚労省が「通知」によって事実上営業を規制するのは行き過ぎだと主張し、約800万円の損害賠償なども求めていた。
東京地裁「実質的に医行為になる」
しかし東京地裁は薬局側の主張を認めなかった。判決が重視したのは、医療用医薬品はそもそも医師や歯科医師が患者を診察し、その患者に薬を使用することが適切か、どの用量で投与するかを判断することを前提として承認されているという点だ。
薬剤師が処方箋なしで日常的に薬を選択して販売すると「実質的に医行為」に踏み込むことになるので、それを禁じる厚労省の通知は合理的であり、違法な規制とはいえないという。原告側は判決後、「不当な判決」と反発し、控訴する意向を明らかにした。
「薬剤師を活用せよ」と言いながら権限は狭める矛盾
日本では軽い症状でも医療機関を受診し、医師から処方箋をもらわなければ薬を入手できないケースが多い。これが医師会の利権になっているため、零売のように開業医の既得権を侵す業者には、厚労省が目を光らせている。
他方で厚労省はセルフメディケーションやOTC化を推進し、薬剤師の専門能力を活用する政策を掲げている。2025年の改正薬機法では零売を原則禁止する方向が明確化された一方、国会の附帯決議では、零売薬局が医薬品アクセスに一定の役割を果たしてきたことを考慮し、「必要最小限かつ合理的な規制」にとどめるよう政府に求めた。
改正制度は2027年5月に本格施行される予定で、今後は「やむを得ない場合」の具体的な範囲が焦点となる。薬剤師の活用を言いながら、薬剤師が薬を販売できる範囲を狭めるのは矛盾している。医師に集中している医薬品アクセスの権限を、どこまで薬剤師と患者に移すのか。高齢化で医療費が膨らむ日本にとって大きな問題である。






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