- 高市政権が掲げる「成長」は、実質成長ではなくインフレによる名目GDPの押し上げにすぎず、持続的成長には生産性向上が不可欠だ。
- 韓国は通貨危機を契機に財閥改革や外資導入で「創造的破壊」を進めた一方、日本は補助金や金融支援で低生産性企業を温存し、人材・資本の新陳代謝を妨げてきた。
- 日本に必要なのは財政支出の拡大ではなく、企業の退出と新規参入、対内投資、労働市場改革を進め、企業ではなく失業した個人を守る制度への転換である。
高市首相の好きな言葉は「成長」である。確かに高市政権になってから、名目成長率(実質成長率+物価上昇率)は上がったが、その原因はインフレである。物価上昇率を引いた実質成長率は1%前後で横ばいだ。
彼女の取り巻きのエコノミストは「財政支出を増やせば成長する」というが、これは錯覚である。GDPは経済活動の短期的水準で、財政支出をやめれば元に戻ってしまう。持続的に成長率を上げるには生産性の向上が必要だが、日本の生産性はここ30年、一貫してG7で最低である。
韓国の「創造的破壊」
企業に生存権はない。生産性の低い企業が退出し、そこで使われていた人材や資本が生産性の高い企業へ移る創造的破壊が、資本主義の中核だとシュンペーターは述べた。企業は初期に成長するが、収穫逓減で成長が衰える。そこに新しい企業が新しい技術で参入し、競争によって古い企業が淘汰され、結果として生産性が上がるのだ。
このメカニズムを鮮明に示すのが韓国である。韓国の近代化は日本のまねで、日本の高度成長から20年近く遅れて始まった。1965年の日韓条約のころは世界の最貧国だった韓国は、その後、財閥(チェボル)を中心にして急成長を遂げた。政府は財閥と癒着してその利権を守り、1990年には財閥の売上げ合計はGDPの16%を占めた。
ところが1997年に始まったアジア通貨危機で財閥系の銀行が破綻し、IMF(国際通貨基金)は総額580億ドルの資金援助をおこなった。その条件としてIMFは財政赤字の削減を求めるとともに、財閥の独占を解除し、対内直接投資の自由化を求めた。
倒産や失業は急増し、韓国社会にとってきわめてきびしい時代だったが、その危機が韓国経済の新陳代謝をうながした。財閥を解雇された若い人々がベンチャー企業を起こし、IT企業が続々と誕生した。金融など財閥が独占していた分野にも競争が入り、対内直接投資も大きく増えた。
サムスンのような財閥も、電機以外の不採算部門を整理して半導体など競争力のある分野へ経営資源を集中した。危機によって古い企業が退場し、人材と資本が新しい産業へ移ったのだ。海外からの対内直接投資はGDPの26%から55%に増えた。その結果、韓国の一人当たりGDPは2010年代に日本を抜いた。何が日韓の差をもたらしたのだろうか。

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