SBエナジーIPO延期:ウォール街が孫正義氏のAIギャンブルに「待った」

孫正義氏のAIギャンブルに、ウォール街が待ったをかけた。NYタイムズによると、ソフトバンク傘下のSBエナジーは予定していたIPOを延期した。500億ドルを超えるとされる企業価値に投資家が難色を示し、十分な買い手を集められなかったという。

オハイオ州のデータセンターの起工式(日本経済新聞)

孫氏の描く利益はいつ出るのか

孫氏がSBエナジーに託しているのは、単なる電力事業ではない。AI時代のインフラそのものだ。SECへの届出書によると、同社の契約済みデータセンター容量は8.8GW。電力事業を合わせたバックログ(受注残)は約4390億ドルに達するという。

この数字だけ見れば、孫氏がまた巨大な鉱脈を掘り当てたように見えるが、今SBエナジーが稼働させているデータセンターはゼロである。2026年上期の売上高は1.4億ドルに対し、純損失は32億ドルと、売上の22倍だった。

これまでのAI相場なら、それでも「AIは世界を変える」の一言で、評価額も飲み込まれたが、IPOでは投資家自身がカネを出す。そこで孫氏の壮大な未来予想図に対し、「利益はいつ出るのか」という質問が突きつけられた。

1700億ドルを先に使うAI革命

孫氏の構想がさらに豪快なのは、これから必要になる資金である。SBエナジーは今後、1700億ドルを超える設備投資が必要になる。その費用の多くは借金でまかなう。

AIモデルの効率化で計算量が減ったらどうなるのか。OpenAIなど主要顧客の資金調達が行き詰まったらどうなるのか。AI需要が予測ほど伸びなければどうなるのか。すでに世界のAIのシェアの68%は、中国のDeepSeekである。

市場の警戒はSBエナジーだけではない。AI向け電力需要を追い風にIPOを計画していた原子力関連企業Holtecも9月17日に上場を延期し、データセンター開発をめぐる不確実性を理由に挙げた。

成長と利益はまったく別

孫氏は一貫して、AIを人類史上最大級の産業革命と位置づけてきた。その見方は間違っていない。インターネットも人類史上最大級の革命だったが、もうかった企業はごく一部だった。これは2000年のドットコム・バブルで孫氏が体験したはずだ。

当時、光ファイバーなどのインターネットのインフラは急成長し、莫大な投資が集まった。だが過当競争で採算割れになり、ドットコム企業は倒産し、大手ベンダーも破綻した。ソフトバンクの投資した200社以上のドットコムのほとんどは破産し、ソフトバンクの株価は1/100になった。

AIが成長することと、もうかることはまったく別である。半導体メーカーなら売上も利益も確認でき、クラウド企業にもキャッシュフローがあるが、建設前のデータセンターの資金調達は、投資家の期待にかかっている。その期待もかげり始めた今、投資家を説得できるのは孫氏の未来像ではなく、確実なキャッシュフローの計算である。

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