中道が流行らない時代:明白な色付けを好むようになった日本の有権者

我々が子供の頃、こんなことを耳にした人は結構多いのではないでしょうか?

「アメリカではYES、NOがハッキリしている。日本人はすぐに『どっちでもいい』というけれど意志をはっきり示さないと彼の国では通用しません」と。

当然ながら私の19歳から始まる欧米遍歴ではこれを意識し、自分の意見とまでは言えないけれどYES、 NOは明白に提示する癖をつけました。それが社会人になってから「お前はドライだ」と言われた所以の一つかもしれません。当時、炊飯器で「ファジー機能」がついたものが売りだされ、私も早速購入しました。ファジー、つまり「あいまい」という意味ですが、日本では「割り切れないことだってあるのだ」という意思表示の製品だったのかもしれません。

日本の政治を見れば政党の色はあれど基本は中道路線だったと思います。特に自民党がより中道化し、野党も中道化し、最終的は与野党の差は何処にあるのかわからなくなり、少し前の選挙戦では有権者が「えー、それでそれぞれの違いはなんですか?」と困惑したようなこともありました。

高市首相 首相官邸HPより

最近、その傾向は大きく居所を変えています。つまり右か左か、それもあいまいな色ではなく、明白な色付けを好むようになりました。政治の世界以外でも例えば食べ物は極辛を好む人はいるし、旅行や趣味の世界でもエキストリーム(極限)を求める方が増えています。芸能界でも個性が強い方が押し出しが良かったりします。わかりやすいということもあるのでしょう。

先日もユーチューブで極辛の中華料理を食べる番組があったのですが、正直、この方は食事を楽しんでいるのか、単に辛いことに挑戦をしているのかわからず、時折苦悶の表情を見せると「あぁ、これはパフォーマンスね」と底の浅さが見えてしまうのです。

たとえば羊羹にしろ洋菓子にしろバランスを大事にします。極甘のケーキなんて食べたくないでしょう。私はいまだに多くの人は「やりすぎはダメ」で「絶妙のバランスこそ最上のセンス」と考えている人が多いと思うのです。ただ、残念なことに影響力ある人たちが極端なテイストを好むことで一般大衆がそれに流されてきていることは否めません。

ドイツで行われた州議会議員選挙では極右と極左が支持率を伸ばし、中道のCDU出身であるメルツ首相に早くも辞任論すら出ています。アメリカの中間選挙の行方も注目されます。民主党の優勢が伝えられ、共和党はトランプ氏頼みですが、トランプ氏のこのところの政策はほとんど空振りで収拾すらつかなくなっています。ニューヨーク市では左派でイスラム教徒のマムダニ氏が市長になったのも必ずしも右派の時代ではなく、極論同士のぶつけ合いの中で有権者が振り回されているように感じるのです。

中道が流行らない時代のことをポラライゼーション化(Polarization)と言います。英語を直訳すると分極化であります。なぜ二極化するのか、その理由としては社会構造に対する不満、社会の急激な変化に対する抵抗、SNSによる分断化の促進、中庸な現状を打破するスッキリ感が直接的理由だ思います。また冒頭、日本人は「あいまいがお好き」の寓話を入れましたが、デジタル化が進み、個々人が明白な選択をすることが当たり前になったこともあるでしょう。

社会が分極化すると基本的にはもめ事が生まれる素地ができます。「好きじゃない奴は排除せよ」であります。最近の社会事件を見ていてもほぼ反射的=動物的な行動が先走り、理性のかけらもない事件ばかりです。特に殺人絡みも「カッとなって」というケースが多く、衝動的行動が理由とみられています。

我々の社会は中道の世界に戻れないのでしょうか?私の予想では当面はないとみています。人類があるところに到達するまで徹底的にエスカレートするでしょう。たとえば中東の紛争が激化を辿っていますが、いつの間にか主役はフーシ派とサウジアラビア。ほんの少し前まではアメリカとイランでしたから形を変えて発展的にそしてより不都合な状況に向かっているのです。喧嘩しているのですから中道ではないのです。仲裁する人もいない、だから双方やりたい放題になるリスクがあるのです。

お前はどうなのか、と言われれば私は穏健派ですし、かつて近代外交史を学んだときは幣原喜重郎こそが鏡のような人だと思いましたが今の外交官に幣原氏のことを知っている人は少ないぐらいでしょう。元首相で今の憲法の草案に深く関与し、外務省時代の部下だった吉田茂がその憲法を発布しています。幣原のようなスタンスは今の社会では主流ではないことは100も承知ですが、受け狙いで信条がぶれることもないのです。私は22歳の時から幣原政治に深く感じるものがあったのです。

そのバランス感覚こそが私を今の地位に導いてくれたことは確かな事実であります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年9月24日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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