ぺゼシュキアン大統領のNY訪問を恐れるイラン強硬派

イランのマスード・ぺゼシュキアン大統領は23日(米国時間)、ニューヨークの国連総会で演説するが、テヘランの強硬派から厳しい監視の目が注がれる一方、改革派からは「ひょっとしたら、トランプ米大統領との会談が実現できるかもしれない」といった期待の囁きが聞かれる。このコラムはぺゼシュキアン大統領の国連演説前の、イラン国内の権力中枢部の動向に焦点を合わせている。

国連総会で演説するためニューヨークに到着したイランのぺゼシュキアン大統領、イラン国営IRNA通信から

医者出身の同大統領は国内ではイランの現体制を維持しながら緩やかな現実的な改革を支持する指導者だ。ペゼシュキアン大統領は、緊張の高まりと近隣諸国への攻撃継続に関して、イラン革命防衛隊(IRGC)の強硬路線を批判し、戦闘下の国民経済の影響について警告、「停戦がなければ、イラン経済は3週間から1ヶ月以内に完全に崩壊する可能性がある」と警告してきたことがある。ぺゼシュキアン大統領は、他の指導者とは異なり、「このままいけば、イラン国民経済は崩壊の危機にある」という認識を有している指導者だ。イランの現体制を支持する一方、クールに現状を受け取っている。

その大統領の言動に神経を使っているのがイラン革命防衛隊(IRGC)や頑迷な聖職者たちだ。IRGCは、米イランが6月、戦闘終結の合意覚書に合意し、最終的合意の実現を目指して動き出したことを快く思わず、ガリバフ議長やぺゼシュキアン大統領らを「クーデターを企てている」と批判したほどだ。海外のイラン・メディア「イラン・インターナショナル」はペゼシュキアン大統領とIRGCのアフマド・ヴァヒディ(Ahmad Vahidi)司令官の間で、戦争への対応と、それが国民生活や経済に及ぼす影響を巡り、深刻な意見の相違が生じていると久しく報じてきた。

ペゼシュキアン大統領は23日早朝にジョン・F・ケネディ国際空港に到着し、同国の国連大使および国連代表部代理大使に出迎えられた。同大統領はテヘランからNYに向かって出発する前、「国連ではわが国の立場を毅然と主張する」と述べている。

同大統領のニューヨーク訪問を巡り、イラン国内は期待論と警戒論に分かれている。期待論者は「ニューヨーク滞在中、トランプ大統領と会って話し合うべきだ」と願っている。一方、保守強硬派のテヘランの主要日刊紙「カイハン」はペゼシュキアン氏の米国入りに対し「ニューヨークは笑顔や交渉の場ではない。国連総会を米国の犯罪の裁判所とすべきだ」と主張し、「ニューヨーク訪問中に、敵にイラン側の弱さと解釈される可能性のある信号は一切出さないよう注意しなければならない」と書いている。そして大統領に「自国の領土や軍事基地を米国に提供している地域諸国を批判するように」と求めている。RGCに近い立場の半国営通信のファールス通信はさらに踏み込んで、「ペゼシュキアン大統領はそもそもニューヨークに行くべきではなかった」と言い放っている。

また、保守派政治家のホセイン・カナニ・モガダム氏は「たとえ偶発的な米当局者との接触であっても、ワシントンはエネルギー市場への圧力を緩和するために利用する可能性がある。トランプはイラン大統領の訪問を利用して世界市場の原油価格を引き下げようとしている」と憶測している。

一方、穏健派は「トランプ大統領はペゼシュキアン氏との会談に備えていると述べており、この機会を利用して直接対話すべきだ」と促している。穏健派の日刊紙エテマドは「2000年の元イラン大統領モハンマド・ハタミ氏とビル・クリントン大統領、2013年のハッサン・ロウハニ大統領とバラク・オバマ大統領の会談の機会を逃した。イラン・アメリカ関係の歴史は長年にわたり、行われた会談ではなく、行われなかった会談によって書かれてきた」と指摘し、両大統領の会談を実現すべきだと発破をかけている。元議会国家安全保障・外交政策委員会委員長のヘシュマトラ・ファラハトピシェ氏は、「ペジェシュキアン大統領は国連での演説にとどまらず、真剣な交渉を行うべきだ」と述べている。(以上、イラン関係者のコメントは海外イランメディア「イラン・インターナショナル」から引用した)。

イラン当局者は、「ペゼシュキアン氏はトランプ大統領との会談に前向きだが、会う予定はない」と述べている。そのような中で、公の場での握手や会談は、ペゼシュキアン氏にとって国内でかなりの政治的リスクを伴うだろう。また、新最高指導者モジタバ・ハメネイ師の立場が依然として不確かであるため、パゼシュキアン大統領を取り巻く状況を複雑だ。

なお、ペゼシュキアン大統領は国連総会で演説するほか、5日間の米国滞在中、外国当局者との会談、米国の学者やシンクタンクとの会談、そして米国在住のイラン人との会合が予定されている。

ところで、イラン国営IRNA通信は、ぺゼシュキアン政権が8月21日に発足して2年目を迎えたことについて、かなり好意的な論評を報じている。曰く「第14期政権の2年目は、最も困難な戦争および治安状況下でイランを外部からの脅威に対して耐え抜く国民的結束の記録を築いた。ぺゼシュキアン大統領は政権初日から『国民合意』戦略を主なスローガンとして選び、国内に緊張緩和の雰囲気を作り出し、敵の過剰に対抗するための統一を支持してきた。ペゼシュキアン大統領は参加型のマネージメントを通じて、国家権力を強化するために最も重要な一歩の一つを踏み出した」と論評している。

ちなみに、トランプ米大統領は22日の国連総会の演説でイランに対し、「偉大な国家」となるか、さもなければ「壊滅する」と警告する中、米国とイランの交渉担当者が同日、ニューヨークで接触したことを明らかにした。米イラン当局間の協議は6月下旬以来。トランプ氏は、原油輸送の要衝ホルムズ海峡開放を求めてイランへの圧力を強める一方、外交交渉の継続も模索。硬軟両様で臨む構えとみられる。トランプ大統領自身は「米国の中間選挙後に両者が合意に達することを期待している」と述べただけだ。

イランの国営メディアは、同国のアラグチ外相と米国のウィトコフ中東担当特使が会談したと報道。ウィトコフ氏はSNSで、仲介者を通じた間接的な協議だったと明らかにしただけだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年9月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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