犬が引き起こす人間関係の摩擦の回避策

内藤 忍

動物病院での避妊手術のミスにより愛犬に障害が残り、獣医師側が謝罪のうえ解決金300万円を支払うことで和解が成立したというニュースが話題になっています。

このニュースが話題になるのは、愛犬が事故や医療過誤などで「高度障害」を負った際の損害賠償金額として法外だと思う人が多いからだと思います。民法上では犬は「物」としての扱いであり、一般に売られている価格の10倍近い支払いをすることに違和感を感じる気持ちもわかります。

しかし犬好きで家族のように可愛がっている人の立場からすれば、精神的苦痛は代替の犬で癒されるものではありません。今回の裁判では将来の介護費用やオムツ代などを積み上げてようやくこれだけの和解金を勝ち取りました。

裁判のような深刻な事態ではなくても犬に対する価値観の違いは人間関係に摩擦を生み出すことがあります。

例えば、私の住んでいるマンションでは廊下やエレベーターでは犬を抱きかかえるのがルールになっています。犬嫌いの住人の中には廊下の犬の足跡を見て管理人にルール違反を通告する「ワンコ警察」がいたりします。

またエレベーターに犬と一緒に乗るのを拒否する犬アレルギーの住人もたまに見かけます。

平時なら価値観の衝突があっても何とか折り合いをつけることができますが、私が心配しているのが災害時の避難場所のような極限状態における対応です。

災害で避難所に避難せざると得ない場合、そもそも犬や猫のようなペットを連れていって良いのかという根本的な疑問があります。

連れていけたとしてもペットにも大きなストレスがかかりますし、避難した人の中には犬の鳴き声や抜け毛、ニオイなどが気になる人も少なく無いと思います。重度の動物アレルギーを持つ方や、過去のトラウマから犬を強く恐れる人も存在します。

そんな人たちとペット好きの人たちの対照的な価値観はお互いに精神的に余裕がない極限状態で大きな問題になります。

そもそもペットに興味や関心の無い人たちにとっては避難所にペットを連れてくること自体が非常識とさえ思っている可能性があります。

ペットのケアをする前に一人でも多くの人間の快適な環境を優先すべきという価値観を持っている人がいてもおかしくないからです。

異なる価値観を持つ人たちが極限状況で狭いスペースに押し込まれた時に生じる摩擦をどうやって和らげるかは難しい問題です。

法律論だけではなくマナーや周囲に対する配慮、そして寛容の精神が無ければお互いに気分の悪い対立に終わってしまいます。

災害時であっても避難しないで自宅に留まれるような場所を選んで住む。価値観の違う人たちとは距離を置いてできる限り関わらない。それしか避難所での軋轢を避ける手立てはないと思っています。

GlobalP/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2026年9月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。

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