2026年3月、沖縄県名護市辺野古沖で同志社国際高校の研修旅行中の小型船2隻が転覆し、高校2年の武石知華さん(17)と船長が死亡した事故を巡り、武石さんの両親は学校関係者4人と船を運航した団体側7人の計11人を業務上過失致死傷容疑などで刑事告訴した。
ニューズウィーク日本版が9月26日に報じた遺族へのインタビューによると、事故後の5月27日に行われた学校側との個別交渉では、学校側の弁護士4人が同席した。
この席で示されたのが、交通事故の損害賠償実務で広く使われる「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」、いわゆる「赤い本」に基づく考え方だったという。
【参照リンク】「問われるべき責任がなぜ問われない?」辺野古転覆事故で命を失った武石知華さんの両親が、刑事告訴に踏み切った理由 ニューズウィーク日本版
学校側としては、将来的な損害賠償を念頭に法的な整理を進める必要があったとみられる。しかし遺族がまず求めていたのは、なぜ危険性のある船に生徒を乗せたのか、なぜ事前に十分な安全確認が行われなかったのかという事故原因の説明だった。
その段階で弁護士を前面に出し、一般的な交通事故を基準とする賠償の枠組みを示したことについて、遺族側は学校が責任の解明よりも早期の法的決着を優先していると受け止め、不信感を強めたという。
第三者委は「安全配慮義務違反」を認定
その後、学校側自身が設置した第三者委員会の調査によって、事故前の安全管理にも重大な問題があったことが明らかになった。
7月31日に公表された218ページの報告書は、学校法人同志社について、事前調査、安全な計画の策定・実施、生徒や保護者への説明などに関する安全配慮義務違反を認定した。
辺野古ボートコース導入時には現地での下見が行われず、船の大きさや性能、航路の安全性なども十分に確認されていなかった。調査委は「他人任せの連鎖」が形成され、安全管理体制の不備やリスク管理機能の不全が事故につながったと指摘している。
「危機管理」が遺族との溝を広げた
重大事故が起きた際、学校法人が弁護士を通じて法的責任を整理すること自体は異例ではない。しかし、今回の問題はその順序と方法にある。
第三者委自身が後に学校側の安全配慮義務違反を認めるほどの事故でありながら、十分な原因究明や説明が済まない段階で賠償交渉を進めれば、遺族には「学校が責任を限定しようとしている」と映りかねない。
両親は学校側の事故後の対応を「不誠実で、一貫して保身に走っている」と批判し、民事訴訟による責任追及も検討していると報じられている。
再発防止だけでは終われない
学校法人同志社は第三者委報告書を「真摯に受け止める」とし、再発防止策を検討している。
ただ、問題は安全マニュアルを書き換えれば終わるものではない。事故前には安全確認を他者に依存し、事故後には弁護士を前面に出したことで、遺族との信頼関係まで損なった可能性がある。
武石さんの両親が刑事告訴にまで踏み切った経緯を考えれば、学校側に求められるのは法的な責任の整理だけではない。なぜ事故を防げなかったのか、そしてなぜ事故後の対応でも遺族との溝を広げてしまったのか。組織として検証し、具体的に説明する責任が残されている。

同志社国際高校HPより








コメント