プルデンシャル生命元トップ営業マンが特殊詐欺組織の幹部に?

生命保険大手プルデンシャル生命の元営業社員が、全国で15億円以上をだまし取ったとされる特殊詐欺グループの幹部として逮捕されていたことが分かった。文春オンラインが9月26日に報じた。

【参照リンク】プルデンシャル生命営業マンは“総額15億円”特殊詐欺グループの幹部だった! 元同僚を「かけ子」に勧誘も…福岡大時代にはミスターコンで準グランプリ 文春オンライン

もちろん、元社員が起こした犯罪をそのまま会社の責任にすることはできない。しかし、同社では社員や元社員による大規模な金銭トラブルも発覚している。ここまで重なると、「たまたま問題のある人材が紛れ込んだ」で済ませてよいのかという疑問は残る。

むしろ問われるのは、プルデンシャルが長年売り物にしてきた独特の営業文化ではないか。

プルデンシャル生命HPより

15億円詐欺の幹部に元トップ営業マン

文春オンラインによると、逮捕されたのはプルデンシャル生命の元営業マン、秋山涼容疑者(33)。2025年11月ごろ、副業あっせん会社の社員を装い、20代女性から保証金名目で50万円相当の暗号資産をだまし取った疑いが持たれている。

警視庁は秋山容疑者について、全国1000人以上から計15億円以上を詐取したとされる特殊詐欺グループの幹部とみているという。「かけ子」の勧誘や売り上げ管理などを担当していたとされる。

注目されるのは、その経歴だ。

文春オンラインによれば、秋山容疑者は2018年ごろプルデンシャル生命に入社し、東京の品川第一支社に勤務していた。同支社は営業力の高い社員が集まることで知られていたという。

さらに秋山容疑者は、プルデンシャル時代の元同僚まで詐欺グループに勧誘し、その人物が「かけ子」のリーダー格になっていたと報じられている。

保険営業で培った人脈形成力や勧誘力が、そのまま犯罪組織でも生かされていたとすれば、あまりにも皮肉である。

「営業力」がすべてになる危うさ

プルデンシャルは従来の保険会社とは異なり、優秀な営業人材を他業界からスカウトし、個人の能力と人脈を最大限に活用する営業モデルで成長してきた。

商品を売るというより、顧客との信頼関係をつくり、その人脈を次の顧客へ広げていく。営業担当者個人のブランドが会社の看板と同じくらい重要になる世界だ。

成功すれば高い報酬と社会的評価を得られる。一方、成果が出なければ厳しい。

この徹底した成果主義は、優秀な営業マンを生み出す反面、「数字を作れる人間こそ価値がある」という文化にもなりやすい。

営業力とは結局、人の懐に入り込み、信用させ、意思決定を促す能力である。それ自体に善悪はない。生命保険を売れば「トップ営業マン」だが、同じ能力を別の方向へ使えば、悪質商法や詐欺の強力な武器にもなる。

31億円問題は偶然だったのか

しかもプルデンシャルでは、今回とは別に、社員や元社員100人超が顧客などから不適切に金銭を受け取っていた問題が明らかになっている。その総額は約31億円に上るとされ、同社は新規契約の販売自粛に追い込まれた。

これも一部社員の個人的な逸脱と説明することは可能だ。

しかし、金融機関で100人を超える規模の金銭問題が発生し、その直後に元社員が大型詐欺グループの幹部として逮捕されたとなれば、個人の問題だけで説明するには無理が出てくる。

「優秀な営業マンを集め、自由に稼がせる」という仕組みは、平時には驚異的な営業力を生む。しかし、社員個人の裁量と人脈に依存するほど、会社の管理が届きにくくなる。

「営業のプロ」の前に金融機関の社員

プルデンシャルに必要なのは、営業力をさらに磨く研修ではないだろう。

必要なのは、「売れる人間」を称賛する前に、その人物が金融機関の社員として信用に値するかを厳しく見る文化である。

トップ営業マンの華やかな成功物語は企業のブランドになる。しかし、その成功を支える価値観が「売った者勝ち」になれば、ブランドは一瞬で逆回転する。

文春オンラインが報じた今回の事件は、特殊詐欺グループの摘発というだけではない。

プルデンシャルが誇ってきた「営業のプロフェッショナル集団」という看板の裏側に、どのようなインセンティブと組織文化が存在していたのか。それを改めて検証する契機になりそうだ。

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