ニデック取締役会が岸田社長を解任か:「1兆円減損」で露呈した永守後の迷走

モーター大手ニデックで、また経営トップをめぐる騒動が起きている。ダイヤモンド・オンラインは9月28日、ニデックが25日に開いた臨時取締役会で、岸田光哉社長の解任を決議したと報じた。不正会計問題を受け、2026年3月期に資産の1兆円規模の減損を修正計上する方針となり、その責任を問われたという。

岸田社長(ニデック公式サイト)

突然出てきた「1兆円の減損」に株式市場も仰天

この数字が事実なら、単なる会計処理の問題ではすまない。これまで高値で買収してきた企業や事業資産の価値を、大幅に見直すということだろう。

ところがニデックは同日、「役員変更及び大規模な減損処理について検討をしているのは事実」と認めながらも、「現時点で当社として決定した事実はない」とコメントした。

株式市場も混乱した。ニデック株は28日、前営業日比500円安の2340円とストップ安で取引を終えた。下落率は17.6%。投資家が驚いたのは社長解任よりも、むしろ「1兆円減損」という数字だろう。

1兆円減損は「岸田社長の失敗」なのか

ニデックでは不正会計や品質問題が次々と表面化している。第三者委員会の調査では、巨額の利益水増しが指摘され、顧客の承認を得ない部品変更なども明らかになっている。

ただこうした問題は、2024年に社長になった岸田氏が突然つくり出したものだろうか。ニデックは長年、創業者の永守重信氏が圧倒的な求心力で率いてきた会社である。高い成長目標を掲げ、M&Aを繰り返し、結果を出した者を評価する。

その強烈な経営スタイルが世界的なモーターメーカーをつくった一方で、現場に過大な数字を求める企業文化を生んだ可能性は否定できない。1兆円の減損が必要になったのであれば、それは永守社長以来の経営モデルの決算書ではないか。

「脱・永守」のために選ばれた岸田社長

岸田氏はソニー出身で、2022年にニデック入りし、2024年4月に社長に就任した。ポイントは、岸田氏が内部昇進ではなかったことである。永守氏のカリスマ経営から脱却し、ガバナンスの効いた普通の上場企業へ移行するための「外部人材」として期待されたのが岸田氏だった。

岸田氏自身も、「創業者のカリスマに依存することなく」成長する企業を目指す趣旨の発言をしていた。ところが、その岸田氏がわずか2年余りで退任するとなれば、ニデックの後継者問題は再び振り出しに戻る。

ニデックでは過去にも、永守氏の後継候補とされた経営者が短期間で会社を去っている。つまり問題は「岸田氏が優秀だったか無能だったか」ではない。そもそも永守氏の後に、誰が来ても安定して経営できる仕組みができていないのではないか、ということだ。

社外取締役10人でもガバナンスは機能しない?

現在のニデック取締役会は、社内取締役3人に対して社外取締役10人という構成だ。取締役会議長も社外取締役が務めている。しかし社外取締役を増やせば企業統治が改善するほど、話は単純ではない。

重要なのは人数ではなく、取締役会が経営トップに対して実際に「NO」と言えるかどうかである。もし1兆円規模の減損が突然表面化したのであれば、取締役会はそれまで何を監督していたのか。

もし不正会計を生んだ背景に過度な業績プレッシャーがあったのであれば、なぜ取締役会はそれを是正できなかったのか。そして今回、岸田社長を解任するのであれば、なぜ岸田氏だけが責任を取るのか。

「永守後」をつくれないことこそ最大の経営リスク

創業者が強すぎる会社には共通する問題がある。創業者がいる間は圧倒的なスピードで意思決定できるが、創業者が経営の第一線から退いた瞬間に、組織が何を基準に動けばいいのか分からなくなる。

ニデックは、まさにその壁にぶつかっているように見える。必要なのは次の「カリスマ経営者」を探すことではない。悪い数字を悪いまま報告できること。無理な目標に対して現場が「できない」と言えること。

ニデックが永守重信という巨大な創業者の影から、本当に抜け出せるのか。今回の人事は、その試金石になる。

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