定年後再雇用給与引き下げに合理的説明義務化で現役世代の給与はどうなる?

10月1日から、「同一労働同一賃金」をめぐる指針が改正され、定年後に有期雇用などで再雇用される高齢者の待遇について、企業側にこれまで以上に合理的な説明が求められることになった。

「定年後だから」では説明不十分

今回の見直しでは、正社員と非正規社員の間に賃金差がある場合、業務内容や責任の程度、配置転換の範囲などを踏まえて、その違いを説明することが重視される。定年後再雇用についても、「定年を迎えたから」「嘱託社員になったから」といった理由だけで賃金を引き下げることは、十分な説明にはなりにくい。

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厚生労働省は、同一労働同一賃金の考え方について、待遇差がある場合にはその性質や目的に照らして不合理でないかを個別に判断する必要があるとしている。定年後の再雇用者についても、職務内容や責任が変わっていれば一定の賃金差は認められるが、仕事がほとんど変わらないまま大幅に給与を下げる場合には、企業側がその根拠を説明する必要がある。

背景には、働き方改革関連法による同一労働同一賃金の本格施行から5年が経過したことがある。非正規労働者の待遇改善や就業意欲の向上を図る狙いがあり、社労士などからも、定年後再雇用を含めた人事・賃金制度の見直しが必要になるとの指摘が出ている。

定年後の賃下げが難しくなる可能性

一方、企業側にとっては別の問題もある。

日本企業では長く、現役時代には年功的に賃金を上げ、定年後の再雇用で給与水準を引き下げる仕組みが広く採用されてきた。定年後の賃下げが難しくなれば、企業がその前段階で賃金上昇を抑制する可能性も否定できない。

一度引き上げた基本給は下げにくい。さらに、定年後も同じ水準の賃金を維持する必要があると企業が判断すれば、「後から下げられないのであれば、最初から大きく上げない」という行動につながる可能性がある。

「賃下げ防止」が昇給抑制につながる逆説

これは、日本で長期間続いてきた賃金停滞を考える上でも重要な論点だ。賃金の下方硬直性や雇用調整の難しさが強いほど、企業は将来負担を警戒して基本給の引き上げに慎重になる。景気が改善しても、恒久的な賃上げではなく賞与や一時金で対応する傾向が強まる。

今回の改正は、高齢者や非正規労働者の待遇改善という点では一定の意義がある。ただし、制度設計を誤れば、賃下げ防止が逆に現役世代の昇給抑制につながる可能性もある。

問われるのは賃金体系全体の見直し

本来求められるのは、年齢によって賃金を一律に上下させる仕組みではなく、職務内容や責任、成果に応じて賃金を決める制度への移行だろう。

定年後の賃金だけを問題にするのではなく、現役期を含めた賃金体系全体をどう設計するか。今回の指針改正は、日本企業の人事制度そのものに見直しを迫る可能性がある。

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