
【起】日米・米中首脳会談の対比が示した日本の現在地
予想していたとはいえ、先週の光景は衝撃であった。
毎年決まってこの時期、国連総会時にアメリカに数多くの各国首脳が訪れるわけだが、その際に行われた日米首脳会談と米中首脳会談の対比のことである。
発表されている会談の成果の話ではない。乱暴に言えば、合意の中身については、国際政治ウォッチャーたちから見れば、特に注目すべきものはない。衝撃なのは、両首脳会談のショーとしての扱いの差だ。
トランプ大統領自らが習近平国家主席を空港で出迎えて、盛大な晩餐会が開かれて……という米中首脳会談の前に、せめて日米の紐帯を確認しようと35分だけ開かれた日米首脳会談。
その努力をあざ笑うかのように、トランプ大統領はスピーチという「ショー」のハイライトで、習近平国家主席をはじめとする関係者の前で「かつての」(第二次世界大戦時における)米中の同盟関係に言及した。どちらが現在の同盟国か分からないような対応の差であった。
高市総理・政権や日本政府の対応が悪いわけではない。むしろ、直前に日米首脳会談を何とか入れ込むなど、よくぞやったと言うべきアクションで、かなり努力したと言えよう。本質的な問題は、日本と中国との間でついてしまっている圧倒的な国力の差であり、これは、小手先の政治ショー・外交ショーではいかんとも挽回しがたい。これが現実である。
【承】「カルタゴの悲劇」から考える日本の地政学的危機
9月10日に行われた青山社中フォーラムでは、小泉防衛大臣をお招きして、私がモデレーターを務め、佐橋東大教授(青山社中リーダーシップ公共政策学校講師)にもご登壇いただいての鼎談が行われたが、その際、私から「カルタゴの悲劇」の話を出した。
ローマとの戦い(第二次ポエニ戦争)に敗れたカルタゴは、再び武装することを禁じられ、元の領土に押し込められた。が、その後奮起して経済的な大繁栄をすることになる。アメリカに戦争で敗れ、国土を焦土化され、植民地をすべて失った後に奇跡の経済成長を遂げた戦後の日本と重なる。
しかし、カルタゴは背後で強大な勢力となったヌミディアに脅かされるようになり、仕方なく再武装を開始する。ローマも黙認していたが、ある時から、ヌミディアとローマが直接ディールすることになり、カルタゴは勝手に武装したことを難詰されて無理難題を押し付けられる中で、やむなくローマと事を構えて第三次ポエニ戦争となり、結局は滅ぼされる。ヌミディアを中国と考えると背筋が寒くなる。
小泉防衛大臣は、大臣になってから見えた景色として、すべてを話すことはできないが、こんなことになっているのか、ここまで認知戦その他が広がっているのか、ともいうべき状況が現実にあると強調していた。防衛大臣になるまで見えなかった現状があるとのことだった。可能な限り、それを国民にしっかり伝えるのがご自身の役目であるとも述べておられた。
外交や安保は、一般の国民からは見えづらい。しかし、言うまでもなく、実は最も大事だったりもする。リーダーシップ理論の大家であるロナルド・ハイフェッツ教授(ハーバード大)は、リーダーは、ダンスフロアという現場で踊る立場と、フロアから一段上にあるバルコニーに上がって全体を眺める立場とを行ったり来たりする必要があると喝破しているが、外交や安保に向き合うこととは、さしずめ、バルコニーの上から、ダンス会場の外に迫っている嵐やギャング団を認めて、楽しく踊っているフロアの人々に警告するような役割だと思う。
消費税がどうしたこうしたと、フロアで議論することも大事ではあるが、嵐でダンス会場が吹き飛ばされたり、ギャングに会場が襲われてしまったりしては元も子もない。たとえ見えにくくても現実は存在する。
【転】第二次高市改造内閣に欠けた「外向き」の視点
先日、第二次高市改造内閣が発足した。一言で言えば、良くも悪くも「内向き・骨格維持内閣」である。現状の高い支持率を考えれば、確かに陣容を大きく変える必要は感じられない。
また、国民生活以上に皇室典範改正や副首都法案に精力をつぎ込んで一度7月に落ちかかった支持率を支えたのも、結局は食料品にかかる消費税率を1%に下げる決断をしたことだと考えると、10月からの国会で、着実に関連法案などを通していくためには、小幅改造・実務派内閣でいくべきだと考えられたのも理解できる。
「骨格の維持」には、大きく3種類のパターンがあって、私はSRUと総称している。SはStayで文字通りの留任、RはReuseで一度入閣したことがある人のことで、最後のUは、すでに入閣している人(副大臣なども含め)の他のポジションでの処遇(Upgrade)のことである。
今回の内閣改造では、高市総理を除く18人の閣僚のうち、Sが8人で、Rは3人。Uはいないが、新顔はわずか7人である(党人事では、梶山国対委員長を総務会長にするというUがあった)。身体検査ができている人(メディアや国民からの目線にすでにさらされている人)、あるいは「傷」はあるものの、膿をすでに出し切っている感のある人で内閣を構成すれば、メディアからのスキャンダル追及は基本的には避けられる。安定化を図るのは分かるが、それにしても地味な改造であった。
新顔の7名も、簗農水大臣や関文科大臣は、いわゆる裏金議員で旧来的イメージがある。簗大臣は実は若いのだが、こうした背景もあって清新感は出ていない。藤井総務大臣や井林国交大臣は出身省庁の大臣になった。高市内閣発足時に若くして大臣になった鈴木農水大臣(当時:農水省出身で農水大臣)と異なり、藤井氏も井林氏も50歳を超えていて、役人でいてもシニアな課長〜審議官レベルである。刷新感はない。環境副大臣だった笹川環境大臣や古川デジタル大臣も「新顔」感は強くなく、維新から入閣した中司氏も、当初取り沙汰されていた馬場氏や藤田氏の入閣に比べて地味である。
Rの3人については、まず、検察出身の山下法相、警察出身の葉梨国家公安委員長は実務派である。もう1人のRの細野復興大臣が、おそらく、最もPR力のある人材で、民主党国会議員から自民党に鞍替えして大臣となったことが特に目を引く。ルックスの良さから、過去の不倫スキャンダルのイメージも根強く残ってはいるが、当選回数の多さもあって、ひな壇その他で総理の脇を固めることとなった。ただ、上記のとおり、総じて「内向き・骨格維持内閣」である。
メディア的には、総裁選のライバルのうち唯一林氏が閣外・党執行部外に去ったこと、維新の中司氏入閣があったこと(その他、維新からは2人の副大臣や3人の政務官)、参院人事への介入(石井幹事長や参院枠の官房副長官の交代)、内閣以上に骨格維持となった党人事でのわずかな変化(国対委員長と総務会長)、それに副大臣や政務官にタレント議員が入ったことなどが面白おかしく報じられたが、繰り返しにはなるが、総じて「内向き・骨格維持内閣」であると言えよう。
【結】全方位外交を担う「第二外務大臣」という選択肢
もちろん、内政あってこその外交・安保ではあるが、逆に言えば、外交・安保がしっかりしてこその内政であるとも言える。中国にレアアース規制、訪日客規制、中国における日本関連イベントの中止などのプレッシャーをかけられ、ロシアからも敵視されてプーチン大統領の択捉島訪問もあり、北朝鮮からは連日、日本海などにミサイルが発射される中、東アジアにおける国家としての唯一の味方が韓国という状態に陥っている日本。その韓国も、少し前までは反日の嵐だったような時期もあり、李政権は本来は反日の革新系の政権でもあり、安閑とはできない。
そして、頼みの綱のアメリカも、冒頭に述べたような「直接ディール」を中国とする構えであり、そのディールの中で、日本はいつ何時見放されるかも分からない。アメリカにとって、犠牲を払って日本を守るメリットは実はなかなか見えにくい。アメリカも未来永劫頼りになるとは限らない中、カルタゴの悲劇も念頭に置きつつ、日本はこれから、戦争が常態化している国際社会の中を巧みに歩んでいかなければならない。
ミドルパワー連携・グローバルサウス連携などの言葉が飛び交っているが、要すれば、私見では、米国以外との連携の模索が限りなく重要になる。東南アジア、オセアニア、ヨーロッパ、インドや中東、中南米、アフリカと、世界は広いが、多層的に各種ネットワークを多様な国家と取り結んでいく必要がある。
高市総理には、今回の改造において、グローバル社会におけるいわゆるミドルパワー連携・グローバルサウス連携などを専門に担当する特命大臣、いわば第二外務大臣を設置するくらいの目線・迫力が、対国際社会・外交面をクローズアップする形で示してほしかったと私は感じている。
もちろん、内閣法上、総理を除く国務大臣数は14人であり、特別に必要がある場合の3人の増員を入れても17人であるが(復興大臣や万博、オリパラ担当大臣は別)、法改正をして、第二・第三の外務大臣を設置して全方位的外交を進めるくらいの改造を次に期待したい。







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