「食べ過ぎは体に悪い」と分かっていても、気になるのは体重や血糖値ぐらいでしょう。ところが、脳の情報伝達にも影響する可能性が、分子レベルで見えてきました。

食べ過ぎの影響は脳にも
東京科学大学などの研究チームが、高カロリー食で認知機能が低下する仕組みをマウスの実験で明らかにしました。研究の鍵となったのは「PQBP1」というたんぱく質で、これは遺伝子の情報を使ってたんぱく質を作る途中で、RNAを適切に加工する「RNAスプライシング」に関わります。
実験では、高脂肪・高カロリー食を与えたマウスでPQBP1が減少しました。その結果、神経細胞同士の接点であるシナプスに関わるたんぱく質に異常が生じ、情報伝達が損なわれました。いわば、脳の通信設備を正常に働かせるための工程が乱れたのです。
通常食のマウスと比べ、1週間または6週間この食事を与えたマウスでは、成熟したシナプスなどの減少が確認されました。少なくともこの実験条件では、脳への影響が短期間でも現れたことになります。
「認知機能の低下」と「認知症」は違う
注目すべきは、単に食事と認知機能の関連を調べるだけでなく、その間にある仕組みを示した点です。原著論文は、高脂肪・高カロリー食からPQBP1の減少、RNAの加工異常、シナプス機能の障害へと至る経路を報告しています。www.nature.com
しかし、マウスの認知機能に異常が生じたことと、人間が認知症を発症することは同じではありません。「脂っこい食事を1週間続ければ認知症になる」と読み替えてはいけません。
また、実験で使われたのは高脂肪・高カロリー食です。カロリーの総量だけが問題なのか、脂質の割合や食事の組成がどこまで影響するのか。この研究だけから、あらゆる高カロリー食品を一括して危険と判断することもできません。大食いする人や体格の大きい人の知的能力を決めつける根拠には、もちろんなりません。
治療への手がかりも見つかった
ただし「高カロリー食でボケる」と即断はできません。今回の成果は、食事と脳の関係を解き明かす重要な一歩ですが、認知症の発症を証明した研究ではありません。
既存の薬が使われたからといって、人間の認知症予防に有効だと確認されたわけでもありません。大学の発表も、ヒトへの応用には今後の検討が必要としています。
マウスでは、脳の働きを損なう仕組みが確認されましたが、人間への影響はさらに検証が必要です。腹囲ばかりを気にしていた食生活の問題に、脳という新たな視点が加わりました。ボケるかどうかは別にして、太りすぎないように注意することは大事です。






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