被害額62億円で157人が処分:プルデンシャル生命の経営は「逆ピラミッド」

プルデンシャル生命保険は10月8日、営業社員らによる不適切な金銭授受について、社外特別調査委員会の報告書を公表した。同社は不正に関与した社員64人を懲戒解雇・諭旨解雇とするなど、157人を処分した。得丸博充社長ら幹部3人は、月額報酬の30%を3カ月間自主返納する。

プルデンシャルタワー(MODERN STANDARD)

「売れる営業」が上司より強い

報告書が明らかにしたのは、営業社員の暴走を止める仕組みが働かず、経営側も監視を怠っていた実態だ。調査対象となった従業員・元従業員は159人、金銭授受に関係した顧客等は794人。顧客等の申告を基礎に集計した金銭授受総額は61.6億円に上る(これは申告ベースで、人数や金額も確定していない)。

問題の中心にあるのは、同社の看板だったライフプランナー(LP)制度である。LPは自らの人脈を使って顧客を開拓し、営業経費の多くを自分で負担する。報酬は新契約の獲得実績に強く連動する歩合給で、営業方法にも広い裁量が与えられていた。

自由な営業にはそれに見合う監督が必要だが、同社ではその監督役である支社長や営業所長の報酬も部下の営業成績に連動していた。部下が売れば上司も潤う仕組みでは、営業活動に問題があっても厳しく指導する動機が弱くなる。

報告書には、高成績のLPが組織内で強い立場を持ち、上司が注意しにくかったという証言があり、売上を立てる社員を頂点とする逆ピラミッド状態だったという

顧客との信頼関係が会社の外で悪用された

不適切行為は、保険契約の募集を通じて築いた信頼関係を足場に広がった。社員が顧客から投資資金を受け取る、外部の投資先を紹介して第三者に送金させる、顧客から借金するなど、手口はさまざまだ。

顧客はLPを保険の担当者としてだけでなく、金融や投資にも詳しい相談相手として信頼していたため、詐欺的な行為が広くおこなわれていた。こうした勧誘や金銭のやり取りは、私用のLINEや電話、飲食店やホテルでの面談などを通じて行われ、会社の記録に残りにくかった。

内部通報や顧客の苦情は以前から寄せられ、2019年には営業偏重の制度や監督機能の弱さを指摘する報告が出ていた。2025年4月には、金融庁から営業モデルや報酬制度に踏み込んだ見直しを求められていたが、対応は既存の仕組みを維持したまま、規則や点検を追加するものにとどまった。

解雇と報酬返納で終わらせてはならない

不正に関与した社員の処分は必要だが、長年にわたり同種の問題を発生させた制度を残したままでは、再発を防げない。委員会が求めているのは、営業モデルの再設計である。

顧客との接点を担当LPだけに限定せず、報酬や昇格の評価に顧客保護を実質的に組み込み、管理職には責任に見合う権限を与える。本社も苦情や内部通報を集約し、個別の不正の背後にある共通の原因を分析する必要がある。

社員には厳しい処分を科す一方、経営側は報酬返納で区切りをつけるのなら、責任の取り方として十分なのかという疑問は残る。経営に問われるのは、改革の結果を継続的に示すことだ。

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