共同親権で地方に残された7つの課題:横浜市長選候補者からの回答

横浜市長選挙の投開票が10月18日に行われます。山中竹春前市長の辞職に伴う選挙で、7人の候補者が舌戦を繰り広げています。共同親権についての議論は深まっていませんが、前回の記事では、子どもが通う学校や転居窓口での対応など、親権問題をめぐって地方行政に残された7つの課題について、候補者全員に公開質問状を送り、その趣旨を解説しました。

共同親権から半年、地方自治体に残された7つの宿題:横浜市長選候補者に問う
横浜市長選挙の投開票が10月18日に行われます。山中竹春前市長の辞職に伴う選挙で、候補者は市政の立て直しを語ります。ただ、4月に始まった共同親権は、まだ選挙の争点としては薄いままです。法律は変わったものの、子どもが通う学校や転居の窓口、災害...

今回、候補者の一人、山本理顕氏から回答をいただいたのでご紹介します。以下、質問とその回答です。

A. 基本姿勢について

——改正民法の共同親権・共同養育の趣旨を、横浜市政でどう位置づけますか。市長として最優先すべき「子どもの利益」を、どのように定義しますか。

【検討する】共同親権などの法改正に伴う対応は、これまでの私の政策に直接の言及はありませんが、子どもの孤立を防ぐ観点から検討します。私が市長として最優先する「子どもの利益」は、人間の尊厳が守られ、安全で快適な住宅に住み、地域の中で食事や学びを楽しめる権利の保障です。「地域社会圏」という地域のつながりの中で、子どもが豊かに育つ環境づくりを進めます。

——共同親権は選択制であり、単独親権も残ります。市の支援は共同親権世帯だけでなく、別居親・非監護親・単独親権世帯にも公平に届くべきと考えますか。

【検討する】親権の形態にかかわらず、支援からこぼれ落ちる人をなくすための公平な支援を検討します。私は基礎自治体となる町内会ごとに「町内会サロン」を整備し、そこに役所の窓口や相談機能を持たせる構想を持っています。行政の縦割りによる孤立を防ぎ、地域社会全体で様々な立場の親子を支え合える環境づくりを進めたいと考えています。

——地方議員の会が求めた「親子交流を同居親の努力義務として明文化する」方向について、市長として国へ意見書を出す考えはありますか。ある場合、文言を「努力義務」のままにするか、より強い位置づけを求めるか、理由も書いてください。

【慎重に検討する】親子交流の重要性は理解しますが、国に対して「努力義務」等の明文化を求める意見書を出すかについては、現場の実態や多様な家庭の事情を踏まえ慎重に検討します。私は国の中央集権的なルールやトップダウンの制度よりも、自治体や地域の現場の裁量を重視しています。形式的な法制化よりも、「町内会サロン」など地域での対話や相談体制の充実を優先すべきと考えます。

B. 学校・園の行事参加について

——親権の有無にかかわらず、別居親の学校・幼稚園・保育所・認定こども園の行事参加を原則認める市通達・ガイドラインを出す考えはありますか。出す場合の例外(DV、接近禁止、子どもの拒否等)をどう定めますか。

【検討する】学校や公共施設は地域社会に対して開かれているべきだというのが私の信念であり、設計した小学校でも地域住民が見守れる構造にしました。別居親の行事参加についても、この「開かれた学校」の理念に基づき前向きに検討します。ただし、DVや虐待の懸念、子ども自身の拒否など、安全と尊厳に関わる「急迫の事情」等がある場合の例外規定については、専門家の意見を交えて慎重に定めます。

——現場が「混乱回避」を理由に一律拒否している実態について、教育委員会と保育所管部局へ実態調査する考えはありますか。調査項目と公表の可否を示してください。

【検討する】行政や教育委員会が「前例踏襲」や「管理のしやすさ」を優先し、市民の参加を一律に拒否するような閉鎖的な体質には強い問題意識を持っています。現場の混乱回避を理由とした参加拒否の実態について、調査の実施を検討します。市役所をガラス張りにし、情報を市民に開示していく姿勢に基づき、個人情報に配慮した上での結果の公表についても検討します。

——こども家庭庁が示す園行事参加の参考例を、横浜市立園・認可園に導入する考えはありますか。私立園への働きかけ方法も書いてください。

【検討する】こども家庭庁の参考例の導入や私立園への働きかけについては、市が一方的に通達を押し付けるのではなく、園と地域が協働できる体制づくりを含めて検討します。行政主導の制度先行ではなく、町内会を中心とした「地域社会圏」の中で、地域住民が園の行事や安全見守りをサポートする仕組みを作り、園側の負担を軽減しながら柔軟な対応ができるよう伴走します。

C. 転居・転入・転校について

——未成年の転居届・転入届について、共同親権の場合は両親権者の同意確認を原則とする運用を市独自に進める考えはありますか。国の様式改正を待たず、市の申請用紙に同意欄を設けることは可能と考えますか。

【慎重に検討する】共同親権下での転居・転入時の同意確認や、市独自の申請様式の変更については、法的な整理や実務上の課題が多いため慎重に検討します。ただし、私は市民の住環境を守るため、市内全住宅の「住み方調査」を実施し、契約や居住実態を見直すことを掲げています。この調査や「町内会サロン」の窓口機能と連携し、家庭の孤立や不当な住環境の変化を防ぐ実質的な運用を模索します。

——「急迫の事情」(DV・虐待からの避難等)がある場合、同意なし受理をどう担保しますか。避難の必要性と、他方親の養育関与を両立させる基準を示してください。

【検討する】DVや虐待からの避難といった生命・身体の安全に関わる「急迫の事情」がある場合、人間の尊厳を守るため、同意なしでの受理や安全確保を最優先に対応できるよう検討します。私は、危険な建物の応急処置や公営住宅の活用など、命と安全を守る住環境整備を急ぐ立場です。安全確保と他方親の養育関与の両立基準については、行政だけでなく専門家を交えた体制で検討します。

——転校・転園手続で、共同親権の場合に他方親権者への確認を学校・園に求める考えはありますか。確認漏れが起きた場合の是正手順も書いてください。

【慎重に検討する】小・中学校は地域コミュニティの基盤であり、安易にその環境が奪われないようにすることは重要です。しかし、転校・転園時の同意確認や是正手順のルール化は、教育現場への負担やDV避難者へのリスクも伴うため、慎重に検討します。問題が起きた際には、教育委員会や学校という閉鎖的な組織の中だけで処理するのではなく、地域社会や専門家と連携して子どもの最善の利益を守る仕組みを検討します。

D. 災害・緊急時について

——災害時に、同居親だけでなく別居親へ子どもの安否を伝える仕組みを、市として整備する考えはありますか。対象(共同親権/単独親権)、同意の取り方、個人情報保護との整理を示してください。

【検討する】大規模災害から市民の生命を守り、安否を確認する仕組みは極めて重要です。別居親への安否連絡についても、DV等のリスクがないことを前提に、同意の取り方や個人情報保護の整理を含めて検討します。私は約1,300人単位の「町内会サロン」を拠点とした助け合いの環境整備を掲げています。この地域社会圏のネットワークを災害時の安否確認や情報共有に活かす方法を模索します。

——学校・園の緊急連絡先に、別居親を原則追加登録できる運用にする考えはありますか。

【検討する】緊急時の連絡先に別居親を追加登録することについては、子どもを守るための重層的な安全網の観点から検討します。学校を地域に開き、多様な大人が子どもの安全を見守る体制は私の理念に合致します。一方で、学校現場の事務負担や、家庭間のトラブル(DV等)に学校が巻き込まれるリスクへの対策も必要であり、地域社会や行政がどうバックアップできるかを含めて議論します。

E. 相談・交流支援の拡充

——横浜市の親子交流支援事業は、父母間合意がある場合に限定されています。合意形成前の相談、調整、第三者立会い交流まで広げる考えはありますか。予算規模の目安も書いてください。

【検討する】親子交流支援について、合意形成前の相談や調整への拡充を検討します。ただし、具体的な予算規模について現時点で根拠のない明言は避けます。無駄な大型開発や事業を見直し、必要な福祉に予算を振り向けます。支援の場としては、特定の施設に限定せず、地域住民が運営しカフェやホールを備える「町内会サロン」のような開かれた場所を活用することも検討に値します。

——養育費確保支援(公正証書補助、保証契約補助、強制執行費用補助)を、共同親権施行後どう拡充しますか。取決め率・受給率の目標を置きますか。

【検討する】養育費の確保支援の拡充について検討しますが、具体的な取決め率等の数値目標の明言は差し控えます。補助金の拡充だけでなく、根本的な経済的自立を支援することが重要です。私が進める「職住一体型の住宅」の供給により、自宅で仕事ができる環境を作ることや、町内会サロンを通じた信用金庫との連携など、生活基盤そのものを底上げするアプローチで親子を支えます。

——区役所の離婚前後相談で、共同親権・監護の分担・親子交流・転居の意味を、中立に説明する研修を全窓口職員に行う考えはありますか。

【検討する】区役所の窓口職員に対する研修の実施を前向きに検討します。市役所の職員は市民のための存在であり、風通し良く適切な対応ができる体制が必要です。また、行政の縦割りや前例踏襲を打破し、区役所の窓口だけでなく、市民に身近な「町内会サロン」にも市の窓口機能を持たせることで、離婚や子育てに関する相談を日常的かつ中立に行える環境づくりを目指します。

F. 安全と権利の両立

——DV支援措置の運用で、正当な避難と、不当な親子断絶が混在し得るとの指摘があります。横浜市は見直しや第三者点検を行いますか。誤適用時の是正手続をどうしますか。

【慎重に検討する】DV支援措置の運用において、正当な避難と不当な断絶が混在するリスクがあるとの指摘については、行政の密室的な判断を是正する観点から慎重に検討します。私は行政の閉鎖性や官僚機構の問題を指摘しており、透明性の確保は重要です。一方で、被害者の命に関わる重大な事案であるため、専門委員会の設置や第三者的な点検の仕組みを含め、誤適用を防ぐ手続を慎重に議論します。

——児童相談所・こども家庭センターが別居親の情報提供や意見聴取を行う基準を、公開する考えはありますか。

【検討する】児童相談所等による別居親への情報提供や意見聴取の基準公開について検討します。私は市庁舎のゲートをなくしガラス張りにすべきだと主張しており、行政の不透明なブラックボックス化には反対です。密室での判断が市民の不信を招かないよう、子どものプライバシー保護と行政の透明性のバランスを取りながら、情報開示のあり方や地域社会(町内会サロン等)との連携を検討します。

——子ども自身の意見表明(会いたい/会いたくない、転校したくない等)を、市の支援手続にどう組み込みますか。

【検討する】子どもを管理対象(エサを与えられる動物)のように扱うのではなく、一人の人間として権利と尊厳を尊重すべきというのが私の強い思いです。子ども自身の意見表明を支援手続に組み込む方法について検討します。役所の会議室ではなく、子どもが日常を過ごす快適な学校の食堂や「町内会サロン」など、リラックスして本音を話せる居場所づくりを通じて、子どもの声を行政に届ける仕組みを模索します。

G. 庁内体制と数値について

——共同養育・親子交流の所管を、こども青少年局・教育委員会・区役所のどこが統括すべきと考えますか。横断会議を設けますか。

【検討する】現在の行政の縦割りや前例踏襲は市民の力を発揮しにくくしており、横断的な体制の構築を検討します。単にこども青少年局や教育委員会など役所内の所管を整理するだけでなく、私が基礎自治体と位置づける「町内会(地域社会圏)」を中心とした住民自治と行政が伴走できる体制への移行を目指し、現場の声を直接拾える会議体や仕組みづくりを検討します。

——初年度に把握・公表すべき指標を挙げてください。例:共同親権世帯数、転入届の同意確認件数、行事参加の拒否件数、交流支援利用組数、養育費取決め率。

【検討する】初年度から把握・公表する指標については、行政の透明性確保の観点から検討します。私は市長就任後、初年度(フェーズ1)で横浜市内の全住宅を対象とした「耐震・延焼・地盤・住み方」の4項目の徹底調査を行うことを掲げています。この「住み方調査」の中で、ひとり親や別居親世帯の実態、地域コミュニティでの孤立状況等もあわせて把握し、具体的な支援指標の策定につなげることを検討します。

——国制度の隙間で市が先行できること、逆に条例や予算だけではできないことの仕分けを示してください。任期中の工程表(3か月/1年/4年)も書いてください。

【検討する】国制度と市の先行施策の仕分けについては、市の条例制定権や自治権を活かせる範囲で検討します。任期4年の中で、まずは1年目(フェーズ1)に全住宅の住み方調査等を実施し、市の現状を把握します。その後のフェーズ2で、地域の受け皿となる「町内会サロン」や職住一体型住宅の整備を進める方針です。これと並行し、市の権限で可能な窓口運用の改善やガイドライン整備を検討します。

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