「彼氏がAVを見ていることがわかって、ショックを受けました」
そんな悩みを抱える女性は少なくないでしょう。恋人がいるのに、なぜ他の女性の裸を見たいのでしょうか。自分では満足できないのでしょうか。
女性にとっては深刻な問題でも、男性からすれば「AVを見ることと浮気はまったく別」という感覚かもしれません。
実際、AVを見ることは浮気なのでしょうか。この単純な問いには、男女の恋愛観や性的欲求、そして令和のカップルが抱える意外な対立が隠れています。

男性にとっては娯楽、女性にとっては裏切り?
男性の立場からすれば、AVを見ることは必ずしも恋人への不満を意味しません。
好きな女性と付き合っていても、性的な映像に興味を持つことはあります。そこに恋愛感情があるわけではなく、特定の出演者と交際したいと思っているわけでもありません。
一方、女性の側には違う感覚があります。
「私という恋人がいるのに、どうして他の女性を見て興奮するの?」
こう考える女性にとって、AV視聴は単なる娯楽ではありません。恋人の性的な関心が自分以外の女性に向けられること自体が、裏切りに感じられるのです。
もちろん、すべての男性がAVを肯定し、すべての女性が嫌悪しているわけではありません。女性にもAVを見る人はいますし、恋人の視聴をまったく気にしない人もいます。
問題は男女の違いというより、「性的な欲望は恋人だけに向けるべきなのか」という価値観の違いなのでしょう。
AV視聴をめぐるカップルの意外な実態
興味深い研究があります。
米ブリガムヤング大学のBrian J. Willoughby氏らが2024年にオンライン発表した研究では、異性愛の恋愛関係にある3385人を対象に、ポルノ視聴についてカップルがどのようなルールを設けているかを調べました。
研究によると、多くの回答者はポルノ視聴について明確なルールを設けていないか、そもそも話し合っていませんでした。
一方、ルールを設けている場合には、視聴する作品の内容や視聴する状況などについて、一定の制限を決める傾向が見られました。
つまり、恋人がAVを見てもよいかどうかは、多くのカップルにとって暗黙の了解に任されているのです。
また、2025年に発表されたカナダの研究では、327組のカップルを対象に、35日間にわたってポルノ視聴の動機と恋人への態度を調べています。
その結果、ストレス解消や嫌な感情から逃れる目的でポルノを見た日には、恋人に対する肯定的な行動が少ない傾向が見られました。
一方、性的な楽しみを目的として視聴した日には、恋人への否定的な行動が少ないという関連も確認されました。
ただし、これは視聴の動機とその日の行動との関連を調べた研究であり、AVが直接その行動を引き起こしたと証明するものではありません。
AVを見ること自体が問題なのではなく、なぜ見るのか、恋人との関係にどのような影響があるのかが重要なのです。
どこからが浮気なのか
さらに厄介なのは、デジタル技術によって「AVを見る」という行為の範囲が曖昧になっていることです。
一般的なAV作品を視聴するだけなら許せるという女性でも、特定の女性配信者に毎月課金していたらどうでしょうか。
さらに、その女性と個人的にメッセージを交わし、自分だけに向けた性的な動画を購入していたら?
ここまで来ると、「ただの映像だから浮気ではない」という説明に納得できない人も増えるでしょう。
従来の浮気は、恋人以外の相手と実際に会うことや、肉体関係を持つことが中心でした。しかし現在では、会ったことのない相手に恋愛感情を抱いたり、お金を払って親密なやり取りを楽しんだりすることもできます。
AIで作られた理想の恋人と、恋愛感情を伴う会話を楽しむサービスまで登場しています。
生身の人間と接触しなければ浮気ではないのでしょうか。それとも、恋人以外に性的な関心を向けた時点で浮気なのでしょうか。
この境界線は、ますます複雑になっています。
恋人の性的欲望まで独占できるのか
私は、AVを見ること自体を浮気と決めつけるのは、少々無理があると思います。
恋人がいるからといって、他の異性を魅力的だと思わなくなるわけではありません。性的な空想まで一人の相手に限定することは、現実的ではないでしょう。
女性だって、恋人がいてもイケメン俳優の写真集を買ったり、男性アイドルの肉体美にときめいたりすることがあります。
それを浮気だと言われたら、多くの女性は反発するのではないでしょうか。
もちろん、AVと男性アイドルの写真集では性的な意味合いが違うという反論もあるでしょう。しかし、恋人以外の誰かに魅力を感じるという点では共通しています。
そもそも、恋人ができた途端に他人への性的な関心が消えるという考え方の方が、不自然ではないでしょうか。
ただし、AVを見ていることを理由に恋人との性生活を軽視したり、嫌がる相手に視聴を強要したりするなら話は別です。
また、「浮気ではないのだから文句を言うな」という態度も、恋人への思いやりを欠いています。
AVを見る自由がある一方、それを不快に感じる自由もあります。ただし、不快だからといって、相手の行動を何でも禁止できるわけではありません。
本当の問題はAVではなく、恋人との信頼関係
結局、AVが浮気かどうかについて、万人に共通する答えは存在しません。
AV視聴を許せない女性を「束縛が強い」と決めつけるのも、AVを見る男性を「不誠実」と非難するのも、どちらも短絡的です。
恋人同士であっても、性的な価値観が完全に一致するとは限りません。だからこそ、どこまでを許容し、何を裏切りと考えるのかを話し合う必要があります。
AVの視聴履歴をこっそり調べて問い詰めるような関係も、恋人の不安を無視して開き直るような関係も、あまり健全とはいえないでしょう。
しかし、もっと根本的な問題があります。
恋愛とは、相手のすべてを独占する契約なのでしょうか。
恋人の身体を独占したいという気持ちと、恋人の頭の中まで独占したいという気持ちは、似ているようで大きく違います。
恋人が自分以外の誰かに性的な魅力を感じることまで禁止しようとすれば、それは愛情というより、相手の内面を支配しようとする行為に近づいてしまいます。
本当に大切なのは、恋人が何を見ているかではなく、自分とどのように向き合ってくれているかではないでしょうか。
AVを見ることよりも、恋人の気持ちを無視することの方が、よほど深刻な裏切りなのかもしれません。
令和のカップルに問われているのは、AVを許すか禁止するかではありません。お互いの性的な自由と、恋人としての信頼をどう両立させるかです。
そして、あなたならどうでしょうか。
恋人がAVを見ていたら、浮気だと思いますか。それとも、まったく気になりませんか。







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