コロナが教えてくれたバーとカクテルの愉しみ(おすすめオーダー10選つき)

金子書房の編集者である加藤浩平さんの誘いで、「バーという居場所」について、同社のnoteに寄稿した(リンクは末尾に)。知らない方のために添えると、金子書房は心理学や教育、発達支援が専門の出版社である。

前も書いたけど、加藤さんと知りあったのは2020年の秋、コロナ禍が小休止してGoToとかやってたときの静岡だった。ボードゲームで居場所を作る活動をしている現地の団体YokaYokaが、講師として呼んでくれたのだ。

簡単と難しいのパラドックス|與那覇 潤
昨日のゲームマーケットでは、色んな来場者の方とお話しできて楽しかった。ブースに立ち寄ってくださった方、ありがとうございます。 販売した『ボードゲームで社会が変わる』(共著)の個性は、全面的にケアや社会支援の切り口に立って、〈対面で人と遊ぶ〉...

なので、依頼としてはボードゲームカフェとかをめぐる記事を期待されてたのかもだけど、色々あって今回はバーの魅力を語ることにした。ぱっと察しがつくとおり、「ひとりで行ける」のが長所だけど、それだけじゃない。

金子書房のnoteに寄稿するのは、コロナの最初の年の暮れだった2020年12月の、以下の記事に続き2回目になる。なので(?)コロナの “自粛期間” にむしろ通いまくったバーの魅力について、たっぷりお話ししている(笑)。

100年前の少女たちに学ぶ「成熟による安心」 ~映画『フェアリーテイル』とコロナパニック~(與那覇 潤:歴史学者)#私が安心した言葉|「こころ」のための専門メディア 金子書房
2020年の疫病と不安  世の中には2種類の人がいる。「不安」で他人を動かそうとする人と、「安心」でそれを行おうとする人である。  もちろん正確には、存在するのは2種類の「行為」であって、同じ人が双方のやり方を使いわけることもある。ただ、こ...

以下ではより実践的に、ぼくの楽しみ方を「おすすめカクテル」と共にご案内したい。これらもぜーんぶ、コロナで “自粛しなかった” おかげで学べた。元気なのにセンモンカを信じて、機会を失ったみなさんは、お疲れさまでした(苦笑)。

まずなにから頼むか?

せっかくバーテンダーさんがいるお店に入ると、”他では置いてない” ものが飲みたくなるのが人情だ(と、ぼくは思う)。なので、あえてハイボールでなく①ハイランド・クーラーで始めることが、けっこう多いです。

友だちと一緒に来たりして、酒量が増えそうだから度数低めに始めるときは②レッドアイ。「ビールをトマトジュースで割るだけだろ?」と思うかもですが、胡椒やタバスコを添えてもらうと、コースの前菜スープに化けます。

とくに暑い季節なんですが、いちばんオーダーするのは「③赤ワインをコブラ―・スタイルで」。氷を詰めて薄くなる分を、リキュールの濃さで補ってもらい、ストローでゆっくり、暑さを冷ましながら飲むのがたまらない。

サングリアに比べて
ワイン感を残す感じ

名前の由来が諸説あって、判然としないのもカクテルの常だが、もとは靴の修理屋(Cobbler)が仕事中にちびちびやってたという説が好き。フードもだけど、昔からそういう “お仕事飯” に弱い。

資料室: 山本七平と「漁師めし」の日本論|與那覇 潤
今月の8日に、ぶじ愛媛県の伊予西条市で登壇させていただいた。歓迎してくださった地元の学習塾「伸進館」のみなさま、および共演の先生方、改めてありがとうございます。 実は前月に体調を崩したこともあり、なるべくゆったりした旅程を組むことにして、前...

なお詳しい人の間では、初めてのお店を知るには「ジンフィズがいい」とされるらしいので、こっそりマネてました。味・炭酸・氷・技術と、色んな要素につき、お店の個性がわかるからとか。鮨屋でいうコハダですかな。

のんびり居るにはなにを飲む?

スマホ時代の知られざる長所は、マイナーなカクテルを気軽に頼めるところだ。店員さんもレシピをその場で検索するし、素人(ぼく)もまた「あ、ネットで見て飲んでみたくて」で、通ぶったりせずにオーダーできる。

ハーブの効いたリキュールがぼくは好きらしいとわかってからは、ドランブイに目がなくて、使ってるカクテルをずいぶん調べた。で、いちばん気に入って定番になったのが、なんとテキーラと混ぜる④コルコバード。

縦長のグラスが正式だけど
ロックやクラッシュドアイスでも

いやーすごい。コルコバードはブラジルの観光名所だけど、スコットランドのハーブ酒を、メキシコの竜舌蘭酒と混ぜる。カシスウーロン並みの「なぜ思いついた?」レシピだが、ぼくの中では同じくらい定番になった。

なおドランブイを使うカクテルで、最も有名なラスティ・ネイルは、俺たちのTAKAICHIが恥ずかしい写真を撮られちゃった際のXの曲名でもあるが、品薄で在庫が逼迫してるそうだ。お前は踊ってないで円安をなんとかしろ。

現役世代はなぜ「高市依存症」なのか|與那覇潤の論説Bistro
高市早苗政権の "高すぎる" 支持率だが、イラン戦争の頃からようやく下がる兆しが見えてきた。「高市離れ」を先導しているのは若年層で、もともと高齢層には「高市嫌い」もわりと多いから、最近はこんな感じらしい。 高市内閣支持率、若年層が初の50%...

ここまで “濃ゆいミックス” だと、一気飲みとかありえないので、自ずとゆっくり過ごせてコスパもよくなる。もうちょい万人向けだと、ジャックダニエルにミントリキュールを足す、⑤テネシー・クーラーもよく頼みます。

右上です。
ジェノベーゼとカラーコーデ

ふたたび(?)ブラジルに戻って、甘党な人には⑥カイピリーニャも絶対のおすすめだ。カシャッサという「ブラジルラム」のようなサトウキビ酒に砂糖を足すが、刻んだライムをたっぷり入れるのでむしろ爽やかに飲める。

現地では日常的に愛飲されるらしく、行ってきた人が「なんだっけ、あの甘いのにさっぱりしておいしい…」と名前を忘れてたから自分が言ったら、「なんで知ってるの?」と驚かれた。まさにコロナのおかげである(笑)。

お店によりスプーン型の
マドラーで掬うのも楽しい

ところがこれまた、俺たちのSANAEが外為特会の運用をホクホクにしているせいで、輸入酒の値段が爆上がりしてしまい、カシャッサのようなマイナーなボトルを切らすお店が増えている。円安は文化を殺すのである。

ちなみにお酒弱い人が、度数低めで、ゆったり飲むならアメリカン・レモネード(居酒屋にもわりにあるので、バーで頼んだことはない)。赤ワインが徐々に混じっていく様子もきれいで、知ってると役に立つと思います。

最後の1杯をどう〆る?

バーで気になるのはやっぱり帰り方だ。サクッと飲んで席を立てる感じならキリリとしたショートがいいし、じっくり座って飲んでから〆るなら、ロックグラスに濃いめのロングが向いている。

後者は、有名な候補が多い。口元をさっぱりさせたければカミカゼ、逆に甘さで満足感を増すならゴッドファーザーが定番。せっかくだし作る人のこだわりに触れるなら、オールドファッションをアレンジで頼むとわかる。

ややレアなとこだと、テキーラとカルーアを混ぜる⑦ブレイブ・ブルのクラッシュドアイスなら、氷を溶かすペースで度数も調整できます。

〆のハーブティーならぬ、
ハーブ珈琲感も嬉しい

ショートなら “カクテルの王様” がマティーニで、女王様が(金子書房の方に書いた)マンハッタンだけど、〆の珈琲感覚で⑧エスプレッソ・マティーニも悪くない。別途カフェに寄るのを省略すれば、むしろお財布に優しい。

甘め・苦めもオーダーを。
これはキャラメル味

ハーブのリキュールには、フランスに黄・緑2色のシャルトリューズもある。使ってるカクテルって「ありませんか?」と訊いて、コロナの最中に作ってもらった⑨ラストワードは、禁酒法絡みの由緒もあってじんと来た。

チェリー味のお酒も入って
複雑なのに爽やかな味

緑の方がハーブ香が強く、度数も高い。そちらをジンで割る⑩グリーンアラスカは、たぶんクスリやる人ってこんな感じなのかなと思うくらい「トベる」1杯。もう一度言うけど、ジンを割るんじゃなく、ジンで割ります。

人でなしのセンモンカや支持者と違って、コロナのときはどれだけのお店が潰れ、心が追い込まれる人が出るかと気が気でなかったッスからね。なんと2杯飲んで(!)歩いて帰った日もあったけど、いまは怖くてとてもムリ。

薬と松葉杖のあいだ|與那覇 潤
先日、精神医療の本を多く出す金子書房の加藤浩平さんと、『アナログゲーム療育』の著者である松本太一さんとご一緒する機会があった。 加藤さんは私の『ボードゲームで社会が変わる』(共著)で、辻田真佐憲さんとのプレイングにも協力してくれた方。松本さ...

上記のnoteでも書いたとおり、ゲーム仲間でもある加藤さんとはこれまでも飲んだりしていて、金子書房に寄稿したnoteで「居場所」と呼んでるお店にも、先日行ってきた。お酒の写真の大部分も、そちらで撮っている。

とっておきの1枚は、「金やるから自粛しろ」系の補助金をきっぱり拒否して、闇で(?)お店を開けた際のこのメニューだ。入口前に飾られたのを見て、これは応援しなきゃと笑みがこぼれたことを、いまも忘れない。

下から2つめの
CUP NOODLEにご注目を!

では、いよいよお待ちかねの、今回の寄稿のドアを開けよう。そこからバーの文化を愛する人と、なにより「酒は飲んでも、時代の空気に呑まれない」主体性が育つなら、とても嬉しい。

バーという居場所(評論家:與那覇潤)特集:「居場所」を考える|「こころ」のための専門メディア 金子書房
コロナ禍をきっかけに出会ったバーが、なぜ「居場所」になったのでしょうか。そこには、人と人との間にある「心のアクリル板」を溶かす交流とユーモアがありました。人が安心して過ごせる「居場所」とは何か、著者自身の体験から考えます。 コロナ禍でバーと...

参考記事:

なぜ「まちがえた」と言えないのか(本日刊、新著のあとがき公開です!)|與那覇 潤
いよいよ本日10/21、拙著『なぜ「まちがえた」と言えないのか』が刊行になる。長年このnoteでも告知してきたとおり、2020年のコロナ禍以降の失敗の本質を振り返る、ぼくなりの令和史だ。 コロナの次に来た、22年からのウクライナ戦争。同年の...
ボードゲームが、自己啓発に「騙されにくい」大人を作る(8/6福岡イベント)|與那覇 潤
前に『ボードゲームで社会が変わる』を著書でご紹介くださった、米光一成さんが新刊を送ってくださった。デジタルで『ぷよぷよ』、アナログで『はぁって言うゲーム』を大ヒットさせたゲーム作家が、創作に満ちた実人生を語っている。 ……と聞くと、今日では...

(ヘッダーは、早川パオ『まどろみバーメイド』3巻17話より)


編集部より:この記事は與那覇潤氏のnote 2026年11月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は與那覇潤氏のnoteをご覧ください

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