木村英紀氏の『ものつくり敗戦』を読んだ。まことに有益だった。
システム思考の不足が「宿阿」ともいえる日本の欠陥だということは、私自身も痛感していたし、その旨を指摘したりもしていた。しかし、私には技術やその歴史について十分な知識がないので、その原因やインプリケーションについては立ち入った理解ができていなかったのが、少しは蒙(もう)が啓かれた気がする。
自然ではなく、人工物を対象とする科学の確立という「第三の科学革命」の後の世界をわれわれは生きているのだということに、私もほとんど無自覚だった。ただし、改めて気づかされると、日本の抱える問題の根深さに慄然とする。
コメント
ものつくりだけでなく、会社組織つくりや経営においても、池尾さんが仰るように、経営者のシステム思考が不足していると思います。
こんな事も分からなかった。無自覚であったとは。あきれますね。
前に「現在の主流派経済学がある意味で行き詰まっていることくらい(わざわざ他人から指摘されなくても)まともな経済学者なら自覚していますよ。」と言われましたが、やはり自覚していなかったのですね。
それに、科学は昔から人工物のみを対象にしていますよ。人間が考える自然という人工物をです。傲慢に、自然と人工を区別する思考を、科学的ニヒリズムというのです。