ホンダ インサイトのエコグランプリについて - 小川浩

先日のエントリーでトヨタのプリウスとホンダのインサイトの、いわゆる”ハイブリッドカー戦争”について触れました。

インサイトのハイブリッドシステムはプリウスのそれと比べると”電動アシスト”的な簡便システムであり、実用的な燃費向上には実はハイブリッドシステムではなく、そもそものガソリンエンジンそのものの省燃費システムにあるのに、ハイブリッドカーとしてプリウスに真っ向から挑んでいるかのような発売の仕方が、トヨタの不興を買い、しなくていい”戦争”に巻き込まれることになったと書きました。つまり、マーケティング上の失敗だという意味です。

ところが、今回、ホンダはにAppleとナイキのNIKE+にヒントを得たであろう、素晴らしいマーケティング戦略を打ち出してきました。

それは、エコグランプリという企画であり、インサイトオーナー同士で、日本全国で燃費の良さを競わせるというものです。僕は林信行さんとの共著『アップルとグーグル』で、トヨタがAppleとGoogleと組んで、ナビとiPhone/iPodと、クルマのCPUをつないだら家庭と路上と車内での素晴らしいエコシステムができる、と書きましたが、その夢が実現するかもと思わせてくれる良い企画です。

しかし、それでもホンダがちょっと分かってないな、あるいは惜しいなと思うところが2点あるのでここで触れておきます。

まずは、自社サイトで、「20世紀のレースは速さを競ったが、21世紀のレースは燃費を競う」と書いていることです。これ自体は間違ってない。しかし、ホンダを積極的に選ぶユーザーには、ホンダ=F1、というイメージを持つ者も少なくないはずです。長年かけて作ったイメージを簡単に否定してしまうかのような言い方は問題だと考えます。僕なら、オルタナティブなレース、つまり、速さだけでなく、燃費を競う、もう一つのレース始まる!というメッセージにしますね。

もうひとつは、分かってないというより惜しいなと思うところです。
物理的に間に合わなかったのでしょうが、カーナビではなく、NIKE+のように、iPhone/iPod touchを使ったキャンペーンであれば、もっとパブ効果が高かったし、車種をインサイトに絞ることもなかったのではないか、ということです。燃費データをiPhone/iPodに登録して、ホンダ運営のWebにiTunes経由で送る。そして、燃費を競わせると同時に、CPUへの燃費向上用のプログラムをiPhone/iPod経由でアップデートさせるのです。これができれば、世界全体でキャンペーンを行うことができます。

いまからでも遅くない、iPhoneを自社のエコシステムの中に取り込むことは、ホンダにとって、素晴らしい世界戦略になると僕は考えます。

コメント

  1. leoleoleo3 より:

    はじめまして、よろしくお願いします。
    わたしも、インサイトに限定する必要があるのかなと思った人間です。もちろん、インサイトの販促企画として成立したと思うのですが、好評ならば、他の車種、他社も含めて参加できるようにすると、燃費競争の裾野が広がっていいですよね。
    要は、アイドリングストップなどの省エネ運転が普及すればいいわけで、色々な会社の様々な車種でサーキットレースも行われているのですから、燃費を競うもう一つのレースも、今まで同様にやってみると面白いんじゃないでしょうか?
    他社を参加させるあたりは、結構、ジレンマなのかも知れませんけども。

  2. edogawadamo より:

    そもそも論を言わせていただければ、燃費記録を出す為に無駄に走り回ること自体が「エコ」ではありません。一番「地球に優しい」のは車を走らせない事、次善の策としては出来るだけ走らない事です。インサイトで年に2万km走行する人よりも、ハマーで1000kmしか走らない人の方がCO2排出量は少ないのは自明です。

    周りの交通の邪魔をしなければ、燃費競争をして楽しむのは構いませんが、それは燃料を浪費するレジャーという意味で他のモータースポーツと本質的に同じであると自覚すべきです。「エコ」と名がつけば何をやっても許される、自分が偉くなったように錯覚する消費者には嫌気が差しますが、それに悪乗りするというか炊きつけるメーカーは偽善もいいとこです。

  3. eco_and_sport より:

    私の理解
    1.ホンダ(インサイト)はトヨタ(プリウス)と勝負したのは、勝負しない場合にくらべ利を得られるため。
    ただし、トヨタの旧型の併売や新型の定価引き下げは想定外。

    2.エコグランプリの実施はプリウスマニアの間では以前からあるランキングの様式で、状況によって仕様以上の燃費になることを活かした購買検討者に訴求する取り組み。

    この記事書いている人は以前の投稿ではホンダはトヨタと勝負してはいけなかった。勝負しなければより下位のセグメントで利を得ることができたから、といった内容を書いていたと思うけどどうなのかな?
    ホンダはこれまでハイブリッドカーを出しているけど成功していないんだよね。それでも従来の延長線上の方がよかったといえるのかな?

    プリウスの初期型を購入した私は今回のホンダのマーケティングについてトヨタをよく勉強したなと思うところが多々あるけれど。AppleとNIKEからヒントを得たのかな?どうなのかな?

    伝えたいことと乖離することを無理に詰め込まないほうがいいんじゃないかな?
    マーケティング、戦略、自動車などについて記事を書くよりも情報のクローリングに関するあれこれを書いたほうが意義があると思うよ。
    無理をする事情があるのかもしれませんが。

  4. pero_ikuro より:


    eco_and_sport氏に同感です。小川氏の見方は、今回のインサイトの件だけでなく、日揮のCFの論点についてもポイントが本質から大分ずれているように感じます。インサイトの意義は一次的には、事実上トヨタ一社といってもよかったハイブリッド市場に新風を吹き込んだことであり、二次的には、旧型プリウスの大幅値下げを結果的に引き出し、このマーケットセグメントの急拡大に貢献したことです。これを、トヨタのトラの尾を踏んだ戦略ミスと断言する感覚の持ち主では、そもそもホンダという会社が浜松のただの町工場から行政と巨人トヨタ、日産を向こうにまわしてこれまで成長してきた歴史のなぞを理解できないでしょうが。

  5. ゆうき より:

    エコマーケティングてそんなにおもしろいですか。
    クールビズみたいなもんじゃないですか。年配の方はそういうのにまんまとのってくのが不思議です。

    いちばんいいのはクルマに乗らないことですよ。

  6. zosojh より:

    もしオールホンダ(全車種)でやって、インサイト以外のオーナーさんたちがtopを占めたりしたら・・・。そのリスクも考えると、やはりオールホンダでやるのはいかがなものか。と反対意見を唱えるマネジャーさん辺りがいても不思議じゃない。そもそも、これは単なるインサイトの販促企画なんだから、部外者が、そんなに眉間にしわ寄せて語ることでも無いと思うなあ。

  7. nekeneke より:

    ホンダ=F1というイメージはもつにしても、それにどれほどの人が固執するでしょうか? もしもそういうイメージに固執するなら、誰がFitを買うのでしょう。いまさらホンダ車の走りについてはとりたてて言わなくても、ユーザーも、非ユーザーも全幅の信頼を置いているのでは?それがイメージです。ついでにいえば「あれもこれも」と詰め込んだコピーは耳に残りません。だって、ほかの自動車会社がみんなそうだから。差別化にならない欲張りなコピーより絶対いいと思います。
    それからなぜにiPhone/iPod? 持ってない人は燃費比較のために買わなくちゃいけないの? 何の関連性もない普及品をあたかも「みんな持ってるだろうから」的な視点で薦められても困ります。それならば「エコグランプリにも参加できるので、ぜひインターナビを付けてください」と言われたほうがよっぽど合点がいきます。
    アップル信者なのか、癒着してるのかはわかりませんが、もう少し公平な記事を書いてほしいもの。ちなみに僕はホンダユーザーでも信者でもありませんので。