民主党は「与党」になれるのか - 池田信夫

自民党の自滅で、総選挙では民主党が圧勝する可能性が出てきました。前の総選挙と逆に、民主党が300議席という選挙予測まで出てくるありさまです。しかし有権者は、民主党の政策がすばらしいから支持しているのではありません。自民党があまりにもひどいから、「とにかく一度は政権交代をやらしてみよう」と思っているだけです。

事実、1993年の細川政権のときは、自民党は「ハト派」の河野洋平氏を総裁に選ぶなど、変身を印象づけようとし、予算編成でも課長補佐しか説明に来ないなどの屈辱的な状況に、かなり謙虚になりました。いろんな理由をつけて離党する議員も相次ぎました。たぶん今度も、その程度の効果はあるでしょう。しかしこうした変化は、10ヶ月後に連立与党が崩壊すると消え、自民党は昔の自民党に戻ってしまいました。


今回の民主党は、16年前の連立与党よりはましでしょう。特に旧社民党の勢力が弱まり、派閥抗争がそれほど目立たなくなりました。しかし昨年の参議院選挙で小沢一郎氏の掲げたマニフェストは、自民党以上のバラマキで、本当に与党になったら実現できる政策ではありません。それは民主党が徐々に政策を修正し、支出規模を縮小し始めていることでも明らかです。

私は今年、民主党の勉強会に呼ばれたときにも、この点について「農家に所得補償するなら専業農家に限定すべきだし、教育費を補助するならバウチャーにするなど、市場メカニズムを生かす工夫をすべきだ」と批判しました。これについて政調会の幹部は「おっしゃる意味はわかる。子供手当は一種のバウチャーのつもりだ」と答えました。ところが最近出てきた「高校無償化」などの政策は、昔ながらのバラマキです。

アメリカのブッシュ政権でさえ労働組合の反対で(連邦レベルでは)実施できなかった教育バウチャーを、日教組に依存する民主党が実施できるとは思えない。先日の派遣労働禁止といい、この学費無償化といい、新たに出てくる政策も労組べったりの露骨なバラマキばかり。これでは国会で(16年前のように)強力な野党になった自民党の攻撃を受け、また1年ぐらいで空中分解するのが関の山でしょう。

民主党の(特に旧社民党系の)議員に「小泉・竹中改革の否定」を掲げる人が多いのも気になります。そんな中身のない話が、政策論争のテーマになると本気で思っているのでしょうか。おまけに国民新党などと野合して「郵政国営化」をやろうとしています。本当にそういう方向に動き出したら、党内の改革派が自民党の中川グループなどと連携して政界再編が起こる可能性があります。

いずれにせよ今の民主党は、野党だからなんとか体裁を保っているだけで、与党になったら大連立とか分裂とか新党結成とか90年代のような動きが起こるだろうし、それが望ましい。「アゴラ」の読者には、鳩山代表のスピーチライターもいらっしゃるようですが、いずれにせよ鳩山内閣は長期政権にはならないので、どうせ短く散るなら、筋の通った政策を主張して党内の反対で瓦解する、という形をとってほしいものです。

コメント

  1. 池田信夫 より:

    TBで指摘がありましたが、私もこの岡田発言には驚きました。配偶者控除や扶養控除に問題があり、特に所得制限が主婦の労働意欲を阻害していることは事実ですが、それを子供手当とリンクすると、「子供を産まない(あるいは産めない)主婦は罰金を払え」というのと同じです。

    そもそも「少子化」などというのは、一人あたりGDPで考えればナンセンスな問題です。それが深刻な問題になるのは、年金会計が破綻しているからであって、これを子供手当なんかで解決することはできない。こんな有害無益な政策の財源として、わが家のような子供のいない家庭を差別する政策は、断じて許せない。

  2. satahiro1 より:

    1993年の細川非自民連立政権の時は、衆議院は中選挙区制だった。
    そのため、党からの公認を得られなかったり、現職議員が落選すると言う心配は少なかった。それで、機に聡い者たちは党を移ったり、他党との野合に走った。

    今日、小選挙区で雌雄を決するので大勝した側が、強いて野党に移動すると、言う形での”一本釣り”はナカナカ機能しないのではなかろうか?
    それは逆に落選したものが次回選挙のため与党に走り、自民党の基盤を脆弱化させるに違いない。

    例えば、岡山選挙区で「姫に狩られた、虎之助」さんのホームページを見ると、まだまだ意気健康で来年夏の参議院選挙に出馬するように思える。
    これでは次回選挙で、自民党内での現職との公認争いが泥沼化するに違いない。

  3. satahiro1 より:

    私が住む所でも、1人区で昨年の選挙で自民現職が敗れた。彼はまだ若いので次回に向けて活動を行っている。
    来夏の改選議員は2005年の郵政選挙の際、恩師と慕う代議士と離党する寸前だった。
    これは次回選挙の自民党内での公認争いを激化させることになろう。
    現職は恩師を慕って、非自民に走り落選議員と争うかもしれない。
    そうすれば、55年体制の下で自民党の”金城湯地”と言われ常に自民党が8割を占めたこの地も”民主対自民”と言う図式になり、それは自民党の基盤を侵食することになる…

    自民党は”権力の維持や利権の確保”と言う、利害関係でその基盤が成り立ってきた。
    これは中選挙区制や、小選挙区でも多数を占めている時には機能したかもしれないが、その基盤が崩れ始めれば党の存立は危うい、いや、風や波に足元の砂が流されて、党は消滅するだろう。
     

  4. somuoyaji より:

    子どもはいませんが、各種控除を無くして子どもに回すことに大賛成です。38万の配偶者控除がなくなるのを「増税」と騒いでいますが税率10%として所得税は3,8万増えるだけ、「子育てがんばってください」ですよ。
    民主党は与党ではなく政権党になるのだそうです。有力者がみんな政府に入ることになるのだから「党内の反対で瓦解」より、さぞやりにくかろう官僚のサボタージュ具合のほうがみものです。

  5. hogeihantai より:

    人口の減少は、それが数百年にわたり緩慢なものであれば弊害も少ないし、日本のように人口密度の高い国では好ましいとも言える。ところが現在のように急激に少子高齢化が進むと制度的に対応出来なくなる。

    賦課方式は年金のみならず、医療、福祉でも現役世代が老人を支える仕組みでは少子化に歯止めをかけねばならない。今回の民主党の決定は止むを得ないのでは。

    老人が全て自助努力で自らを支えるという仕組みになっていれば、池田さんの主張に同意します。

  6. satahiro1 より:

      
    民主党は「子供手当て」の拡充を図ると言う。
    これはネーミングが間違っている。本来、子供たちに直に支給されるべきものなのに「子供手当て」とすることで、子供を持っている人とそうでない人の間に反目が出来る。自・公はそこを突いてくる。

    この日本はOECD加盟国のうち子供たちに対する、教育費はGDP比3.4%で最低である。北欧諸国は5.2%ほどを教育費に支出しているのだ。
    民主党が言う、「一人、月額26.000円0歳児~15歳まで年間支出5兆6000億円」は教育費をGDP比4%越えくらいに引き上げるだろうが、それはOECD加盟国で普通になるくらいだ。

    今現在この国は今、大人である私たちの”不甲斐なさ”のため財政赤字に苦しみ、本来受けれるはずの教育の機会を彼らは受けることが出来ないのだ。

  7. satahiro1 より:

    ましてやhttp://www.economist.com/businessfinance/displayStory.cfm?story_id=13825211の記事の中で3番目の表によると、5年後の日本の財政赤字はGDPの約2.3倍の1200兆円くらいになるという。

    http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/efda3403cd51b3f94af6cb3c8731802a
    >私の世代は払った以上の年金を受け取れるので、これはすばらしい制度だ。
    >しかし若年世代は、私の世代の最大18倍の税金を負担する。本当は、若者は暴動を起して、フリードマンのいうように公的年金制度を廃止させるべきなのだが、幸い彼らはそれに気づかない。
    >景気対策がどうとかいう話は、その目くらましである。

    本来であれば、16年前の夏に大人だった私たちはきちんとこの国の宿痾と向き合うべきだったのだ。
    それを怠った私たちは無駄に年月を過ごした。

    GDPの約2.3倍の1200兆円と言う借金の尻拭いをする彼らにその0.5%を毎年支出したとしても、どんな罪滅ぼしになると言うのだろうか…
     

  8. buttersstotch より:

    少子化対策は破綻しつつある社会保障制度の解決策にはなりません。
    仮に少子化対策が成功したとしても、その効果が現れるのは30~40年後です。新生児が年金や税金を支払い始めるのはおよそ20年は先の話で、しかも1年に1歳ずつ徐々にしか増えないからです。

    賦課方式の社会保障制度が問題なのは、1人の受益者を支える現役世代の人数が少なくなる場合です。
    これを少子化対策だけで解決するには、新生児が一番多くて高齢になるほど人口が少ないピラミッド型の人口構造にする必要があるが、そんなことはもはや不可能です。

    解決策の議論はいろいろあるでしょうが、世代間格差をなくすことを前提にすべきで、既存のインフラを延命できるなどとは考えないほうが良いでしょう。

    少子化対策という名の下のバラマキを許容する人は、その負担を結局は子や孫の世代に押しつけていることに気づいていません。単なる目くらましでしかない少子化対策など止めて、安心して子供が生める社会構造へと転換すべきで、そのためにまず必要なのは若年層の貧困の解決でしょう。