社民党リスク - 岡田克敏

岡田 克敏

 共通の敵と闘っている仲間は結束が強いのが世の常です。しかし敵が消滅するや否や仲間割れが始まることもまた世の常であります。自民党という共通の敵が消え去ろうとしている今、次の記事はこの先の民主党と社民党の関係を暗示しているようです。

『社民党の福島瑞穂党首は23日、民主党が衆院選のマニフェストにインド洋での海上自衛隊による給油活動中止を盛り込まないことについて「野党がみんな反対した法律だ。なぜマニフェストから落としたか理解できない」と述べ、民主党の対応を批判した 』(23日 NIKKEI NET)
 また非核三原則をめぐり民主、社民両党の不協和音が大きくなってきたとも伝えられています(24日 中国新聞)。


民主党が政権獲得を意識して現実路線に転向することは止むを得ないことです。しかしそれは多方面から批判されているように、過去の反対が反対のための反対であったことを露呈することになりました。

 それはまあ措くとして、民主党が次の選挙で単独過半数をとれなかった場合、参議院と同様、社民党の協力が不可欠という状況が考えられます。社民党がキャスティング・ボートを握る状況では、社民党は民主党と協力して国政を担うという責任感を持って現実路線に妥協できるのでしょうか。両者が連立すれば事態は少しましになると思われますが、連立の協議はこれからのことでどうなるかわかりません。

 連立できなかった場合、社民党は民主党に反対することによる自党のプレゼンスを優先する可能性はないでしょうか。責任を負うことなく、反対することが最大の「存在理由」であったような党だけに不安が残ります。

 社民党の公式ホームページには党の理念が載っています。その中に「非武装の日本を目指す」「在日米軍基地の整理・縮小・撤去を進める」などの文言があり、国際情勢の認識の点においても、政策の現実性においても疑問を感じます。長年にわたった朝鮮労働党との友党関係はいまだ解消されず、凍結されているだけです。非現実性が特徴である社民党と民主党の連立は簡単ではありません。もとより左から右までの寄り合い所帯と言われている民主党はさらに撹乱要因を抱え込むことにもなります。

 もし何らかの形での協力が不可欠となれば、民主党の選択の幅は狭くなり、左へ傾斜する可能性があります。その結果、民主党が掲げるマニフェストは実行が難しくなることが考えられます。

 社民党は1%前後(7月のNHK調査では0.6%)の国民に支持されている政党ですが、キャスティング・ボートを握ればその1%が政治を大きく左右する状況が生まれます。次回の総選挙は自公か民主かの選択ではなく、場合によっては自公か民主・社民の選択と捉えることが必要かと思います。

 政権党としての責任感のない立場では、民主党のバラマキには賛成しても、増税には大反対ということはあり得ます。政権が終わってみれば、国債残高が大きく増えただけ、ということが杞憂であればよいのですが。

コメント

  1. hogeihantai より:

    私は創価学会には生理的嫌悪感をもつのですが、公明党の政策は自民党との連立以来、非常に現実的であったと感じています。支持母体が都市部の零細業者や貧困層が多く、やや福祉を中心にばら撒き志向であり、平和憲法支持のハト派であるが、外交政策は現状追認的で特に問題はなかった。

    社民党のように公労協、日教組、労働組合とのしがらみもなく既得権集団との癒着も少ない。都市政党であるが故に、農民、農協、地方の土建屋の圧力も受けない。民主党が連立を組むなら、社民党や国民新党よりも好ましい相手だ。常に権力に擦り寄る公明党だから民主との連立も拒否しないだろう。こんどの選挙では自民は公明におんぶに抱っこだろう。今のうちに民主は公明との連携をさぐるべきでは。民社との連立は同床異夢で長続きはしない。

  2. aizu1945 より:

    どうもよく分かりませんので、はっきりして欲しい。
    民社党の「非武装」への反対は、その究極には「日本の核武装」にいかざるをえませんね。これへの見解を聞きたい。
    もうひとつ。「米軍の縮小」への反対は、「思いやり予算5000億」も継続し、「日米地位協定」の存続へ賛成ですね。沖縄をはじめ日本の各地域での米兵の犯罪への捜査や逮捕や裁判が実質的にないことが頻発することをこれからも甘んじるというのかな?日本への愛国心はどこに?

  3. true_lie より:

    はじめまして。
    記事と関係ないコメントで申し訳ございません。

    一部の官僚組織と一般人組織が組んで、
    あらゆるところで、あらゆる不正・悪行をしているとしたら
    信じますか?

    裁判所で偽裁判官が法を悪用して判決をし、
    警察署で偽警官が取り調べをしたり、
    証拠持参にも関わらず被害届を受付てくれない、
    役所で、偽装文書の作成・発行をし、
    郵便物が横取りされ、書留追跡内容がでたらめだったり・・・

    あってはならないことが当たり前に起きていたら・・・

  4. satahiro1 より:

    今後、民主党が社民党との関係を見直し、公明党との関係を築いてゆくことは十分有り得るのではないだろうか?

    2001年の民・由合併の際、小沢一郎氏は党内でもその考え方が一番離れている横路孝弘氏との連携に動いた。
    これは地方の1人区で参議院選挙を戦う際、地方に根強い”旧社会党の残党”を取り込む上で有効であった。
    今回の衆議院でも当地では互いに、民主党と社民党で候補者を推薦しあっている。

    現時点ではこの組み合わせが機能し民主党+社民党+国民新党で過半を制することができるだろう。

    しかし、政権内で社民党が独自色を強めてゆけば、平行して民主党(小沢一郎氏)は、公明党に来年夏の参議院選挙で”非自民化”を促し既に公明党なくしては地方区(1人区・2人区)で議席を取れない自民党に壊滅的な打撃を与え、選挙後に民主党+公明党(+国民新党)で政府を構成する、に至るのではないだろうか?

    福島瑞穂氏ら社民党が「非武装の日本を目指す」「在日米軍基地の整理・縮小・撤去を進める」との党是を掲げることは、大いに結構。

    民主党との連立政権で、それを具体化するのではなく、単独で過半をとるくらいの勢いで党勢を拡大して国民の理解と納得を得て、実現して頂きたい。
     
     

  5. キーン より:

    「非核三原則」、「非武装」「在日米軍基地の整理・縮小・撤去」を目標として掲げることが現実的でないということは、岡田さんは「武装国家を目指す」、「米国の核戦略のアジア拠点を目指す」という目標が現実的なのでしょうか。
    北朝鮮など周辺諸国の状況を考えると今日からノーガード戦法なんてナンセンスではありますが、米国に尻尾を振ったり、軍事産業の票を当てにした格好だけの武装もまたナンセンスでしょう。

    政党に多様性があることで政府の情報公開も進みますし、連立だから政策が一致している必要もないと思います(一致しているなら統合すればよい)。

  6. courante1 より:

    ご意見、ありがとうございます。

    公明党は宗教団体が母体のわりにはまとものように思います(宗教が政治力をもつことに私は反対ですが)。民主党の連立の相手は公明党ということもあり得ないことではないと思います。

    自民党などからの離脱者や諸派が新党を結成して、それと連立ということも考えられます。

    非武装が現実的でなければ武装国家を目指すことになるのでしょうか。必要最小限の軍事力のままでよい、という「現実的な」選択肢はないのですか。

    岡田克敏

  7. satahiro1 より:

     
    オバマ米大統領による核兵器廃絶に向けたプラハ演説、クリントン・ガイトナー氏らによる米中戦略経済対話。
    G7からG20、そして米中によるG2へ。

    IAEAの重要監視国である日本から次期事務局長が選出されたことや温暖化防止に役立つとして、原子力発電が再評価されている中で原子炉技術で強みを持つ東芝・その子会社の米WH。

    このような情況の中で、「非武装の日本」、その対極の「(核)武装国家日本」を目標として掲げることは現実的だ、ととても言えないだろう。

    幸か不幸か、私たち日本人が外交・安全保障分野で取り得る選択肢は多くはない。
     

  8. courante1 より:

    ところで、誰が「(核)武装国家日本」を目標として掲げ」ているのですか。なぜそんな議論になるのか、わかりません。
    岡田克敏

  9. satahiro1 より:

    例えば、安倍元首相。

    例えば、中川(酒)氏。
     

  10. courante1 より:

    了解しました。民主党・社民党の問題からは離れていたわけですね。

  11. qwertyunion より:

    幸か不幸かサヨクが騒がずとも日本はまもなく(実質的に)非武装国家になりますよ。
    陸の主力兵器である戦車なんか冷戦期の1200両がすでに半分の600両になりました。しかも現状ではそれすらも大幅に割り込む見通しです。
    日本と同じ島国の台湾よりもはるかに貧弱な自衛隊なんかもはや軍隊もどきですらなくなりそうです。
    台湾の十倍の国土と五倍の人口があるんだから五倍とはいいませんがせめて今の倍の予算と人員を防衛に割いてもいいはずなんですが。

  12. hogeihantai より:

    敵の上陸艦艇を叩くことが出来れば戦車は必要ではありません。戦闘機やミサイルのほうが防御力が高いので島国の日本が国土防衛のため戦車を配置する戦略的理由はありません。陸路で侵略される可能性のある欧州は別だがそうでない北米、オーストラリアでも本土防衛のための戦車の重要性は低下している。

    もし戦車を倍に増やしたければ国産でなく米国から輸入すればよいのです。価格は半分以下です。戦闘機もライセンス生産でなく、輸入したほうが遥かに安い。米国が技術的に日本より数十年進んでいて、追いつく見込みも全く無いのに技術の継承を理由にライセンス生産にこだわるのは愚かなことだ。

    防衛省の役人がメーカーに天下りするために国産にこだわるのです。防衛予算は全く減っていません。日本は台湾と違って米国と軍事同盟を結び核の傘で守られている。

  13. キーン より:

    >非武装が現実的でなければ武装国家を目指すことになるのでしょうか。

    岡田さんは「非武装の日本を目指す」政策を非現実性とおっしゃっています。
    「目指す」ことすら非現実的というなら、武装路線以外に何があるのでしょうか。

    また、非核三原則見直し(米軍による核持ち込み)を「現実路線」とおっしゃっているのですから、
    米軍の核戦略のアジア拠点となることが「現実的」とお考えなのですよね。

    武装は国の権利として当然だと考えていますが、重工業産業の票集めのために
    武装が目的化することは、税金の無駄でしかありません。
    また、中国との経済的関係の重要性が高まっている現状で、核持込を容認して
    米国のご機嫌を取り、アジアの反発を招くのは得策とは思えませんね。

    民主党は「現実路線」ではなく「自民化路線」に切り替わっているだけでしょう。
    目先の利益に目がくらんで日本を迷走させるという点では自民も民主も同じです。
    (社民は死に体なので問題外)

  14. satahiro1 より:

     
    日本を取り巻く東アジア情勢の中で外交・安全保障分野で日本の取り得る選択肢はわずかである。

    “ならず者”国家をどうするか、と言う6カ国協議で日本が強硬路線を取っても、東アジアにおける権力の空白・流動化を恐れる議長国中国やアメリカにより日本はいいようにあしらわれている、ように見える。

    中国や他のアジア諸国に取り横須賀や佐世保の米軍の存在は、”ビンのふた”のようなものであろう。
    米軍の存在があることで東アジア全体の不安定化を阻止している、と彼らは考えている。

    彼らはさすがに、横須賀、佐世保に入港する際に米軍が核を降ろして来るとは考えてないだろう。
    米軍が日本を核戦略のアジア拠点とすることで、日本が独自に核武装化に走ることを阻んでいる。

    このような状況の中で日本ができることは少ない…
     

  15. hogeihantai より:

    費用対効果の点で在日米軍と第七艦隊の存在は自衛隊より遥かに優れている。自衛隊がなくとも在日米軍の存在だけで抑止力は充分である。核の配備には原子力潜水艦と航空母艦が必要で、日本が自前でそろえるのは財政的に不可能だ。

    核持込は近隣諸国も承知しており、中国からも非難されたことはない。中国は日本が米国の核の傘から外れ自前で核武装することを恐れている。核が有ったとしても、有るとも無いとも言わないのが外交で、中国や北朝鮮が、自分達は核武装しているのに、日本に反発する訳がないし、現に反発していない。

  16. aizu1945 より:

    ちょっと視点を変えますが。
    核武装が費用がかかると思う人が多いようですが、そうともいえないのでは?原発の粉末廃棄物やプルトニウムの黄色い粉さえ手に入れれば十分です。核爆弾にする必要もなく、それを運ぶロケットも原潜も必要ありません。廃棄物粉末かプルトニウム粉末を瓶につめて、これ持病の薬ですよと運び、上水場でぶちまければいいだけです。これで十分「核攻撃」になりえます。いま心配すべきはこのような粉のぶちまけ合いです。

  17. qwertyunion より:

    >>12軍事系サイトじゃないんであまり専門的なことは言いたくないんですが、
    まずはじめに、海も空も歌にあるように極めて広大であり常時哨戒など到底不可能。
    日本周辺空海域の九割は常に闇の中であり、本気で海空戦力だけで日本を防衛するつもりなら海自と空自を最低でも十倍に増強する必要がある。現に海自や空自の将官で戦車不要論を唱えているものなど一人もいない。
    そもそもWW2以降戦略的奇襲に対し事前に対応できた例がなく(イスラエルですら奇襲された)軍事演習と侵略の区別は困難。
    敵が軍事演習を名目に戦力の集中を始めたら日本がそれに対応するのは極めて難しい。
    総理大臣が自衛隊に出動準備命令を出して空振りに終わったら確実に内閣は吹っ飛ぶだろうし、その次の総理が政権崩壊覚悟でまた出動準備命令を出せるかどうか・・・
    無論敵は何度でも軍事演習を繰り返すことが可能なのだから第一陣の迎撃は実質的に不可能と見ていい。
    そして日本に陸上戦力がなければその第一陣だけで日本を占領できるだろう。
    だいたい日本と同じ極東の島国である台湾が日本よりも大きい陸上兵力を維持してることをどう説明するのか?
    世界で最も急激な軍拡地域である極東とカナダやオーストラリアを比較することに意味があるとも思えない。

  18. qwertyunion より:

    それから日本90式やTK-Xの半額以下で買える米国製戦車とは一体何か?
    M1A2戦車なら米軍調達価格ですら90式以上であり、サウジはメンテナンス料込みの契約とはいえ90式の倍の値段で購入している。
    M60系列ならまあ鉄屑みたいなものだから実質ただで購入できるだろうが、あんな50年代の設計の骨董品に一体どんな価値があるというのやら。それこそ米軍がやったように漁礁にするのが関の山ではないのか?
    だいたい米国は材料工学もディーゼルエンジンも日本よりも大幅に劣っており、主力のM1戦車の装甲は時代遅れの劣化ウラン装甲でしかない。しかもM1戦車の基本設計は70年代で、マイナーチェンジをいくら繰り返しても所詮は70年代の技術でしかない。
    それに対し21世紀のそれも装甲に必要な材料工学でもエンジン技術でも世界一と言っていい日本の最新技術の塊のような新型戦車TK-Xの一体どこが米国よりも数十年劣ってるというのか?
    そこまで言うのなら70年代の米国の材料古学やディーゼルエンジンが21世紀の日本の材料古学やディーゼルエンジンよりも数十年進んでる根拠をお教え願いたい。

  19. hogeihantai より:

    よく読んで下さい。数十年遅れているのは戦車の技術でなく戦闘機の技術です。いつかは自前の技術で最先端の日の丸戦闘機を開発を夢見てきたから高くはつくが完成品の輸入でなく技術取得の可能なライセンス生産にこだわってきたのです。(勿論天下り先確保の目的もある。)ところが巨額な開発費をつぎこむ米国は更に日本の数歩先を常に進んでいるので逃げ水を追う様なもの、F22の登場で米国には逆立ちしても追いつけないことを悟ったはずです。だから安い完成品の輸入に切変えたらどうかと主張しているのです。

    戦車の重要性の低下についてはqwertyunionさんが御自身で指摘されてます。詰まり70年代の技術を40年後もそのまま米国が使っているという事実です。戦闘機やミサイルでは有り得ないことです。10年に一度は大きな戦争を起こし新旧の兵器の実証テストをしている米国は新型戦車の必要性を感じていないということになります。

  20. satahiro1 より:

     
    今、戦車の話題が出ているが、中国・九州地方の国道やそこに架かる橋を今自衛隊が保有している戦車が、作戦行動中に通行することが出来るものなのだろうか?
    また冷戦期に北海道に偏在していた戦車を国際情勢の変化により、中国・九州地方に移動することが必要になる、のだろうか?

    それと共に中国や”ならず者”国家は、戦車での迎撃を必要とする重武装な装甲車や戦車を持ち、米海兵隊が持つような上陸用舟艇で上陸作戦を、歩兵1個師団規模以上をもって日本に戦争を仕掛けると言う、戦略を描いているものなのか?

    私たちが知りうる限りでは、西日本を中心として敵国が侵攻して戦車が用いられる軍事作戦は起こらない、ように思える。

    むしろ敵国に上陸を許し戦車で対抗すると言う事態は、日本にとって多大な損害を被る事になるので、是非とも避けなければならないと言えるだろう。

    それで、相手がその様な軍事行動を起こす気持ちすら起きないような、”仕掛け”が必要となってくる。

    在日米軍・第七艦隊の存在や、”核の傘”はそのような仕掛けとなっている。