温室効果ガス「25%削減」の世界 - 池田信夫

民主党の鳩山代表は、今月7日、「温室効果ガスを2020年までに1990年比25%削減する」という目標をあらためて表明しました。これは民主党のマニフェストにも数字が書かれ、先の連立合意でも確認されたので、民主党政権で実施されることはほぼ確実だと思います。これを実施するには何が必要かを内閣官房の資料で予測してみましょう。

  • 太陽光発電:現状の55倍に増やす

  • 次世代車:新車販売の90%、保有台数の40%、従来型車は販売禁止・車検不合格
  • 断熱住宅:新築の100%、既築も100%改築を義務づけ、現在の給湯器は使用禁止
  • 民間設備投資:-0.4%
  • 可処分所得:年-22万円/世帯
  • 光熱費負担:年+14万円/世帯
  • 失業率:+1.3%
  • GDP:2020年に-3.2%

もう一つ重要なことは、2020年にきびしい削減目標を設けなくても長期的な削減は可能だということです。技術革新は時間の関数なので、2020年に90年比-4%という削減目標でも、図のように2050年に60~80%削減するという長期目標は達成できます。IPCCの予測でも、地球温暖化の影響がはっきり出てくるのは2050年以降とされており、今年の異常気象を「温暖化のせいだ」などという話は誤りです。

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つまり現在の政府の「1990年比-8%」という目標でも民主党案でも、長期的な気候変動に与える影響はほとんど変わらないのです。これに対してコストは、政府目標だとGDPの0.6%であるのに対して、民主党案ではその5倍以上の3.2%で、これは実質GDPをマイナスにするでしょう。しかも排出権取引のためにはエネルギー関連産業に排出量を割り当てる必要があり、この部門は統制経済になります。

民主党も国内だけでこの削減目標を実現するのではなく、海外から排出権を買うことを計算に入れているのだと思われますが、この場合も上とほぼ同じGDPの損失が出ることは変わりません。この政府見通しについて民主党の岡田幹事長は「脅しに近い」とコメントしていますが、それに代わる試算を出したわけでもなく、目標を実現する道筋を示したわけでもありません。鳩山氏の話も、よく聞くと「すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が前提」という逃げ道を用意しており、国際社会の足並みがそろわなければ実施しないとも解釈できます。

しかし日本が議長国になった京都議定書を国会が全会一致で批准しながら、その「2012年に1990年比-6%」という目標が実現できないことは確実です。この上、さらに実現できない約束をして嘘の上塗りをすることは、日本の国際的な信用を下げるだけでしょう。非現実的な目標をかかげる前に、本当に地球温暖化というのはそれほど緊急性の高い問題なのか、そして国民はそのコストを承知の上で賛成しているのか、をあらためて国会で議論する必要があります。

コメント

  1. disequilibrium より:

    CO2の削減については、EUなんかは露骨に国益を狙ってきていますが、日本もそれに倣えば良いのではないでしょうか。

    例えば、あらゆる製品に、製造工程で発生するCO2も含めて、CO2排出税を課すことです。
    そうすれば、製造工程でのCO2排出量の多い輸入製品に対して、非関税障壁を設けることができます。
    同時に、他の国に対しても同じ施策を勧めれば、日本企業はますます有利になります。

    CO2排出税の税収を財源とするときっちり宣言して、そのお金でEUから排出権を買えば、国際社会からの批判もかわしやすくなるし、CO2削減の枠組みに参加しない途上国を無理やり巻き込むことになるので、「地球のため」にもなります。

    この際、エコを大義名分にして、エゴを貫くのが戦略と言えるのではないでしょうか。

    間違っても、外国から排出権を買うだけとか、外国に対して環境技術をタダで提供するとか、民間企業に対して排出量を割り当てる統制経済にしてしまうとか、すべてマイナスになることをやってはいけないと思います。

  2. gari より:

    自分は独自に温室効果ガス削減の案を考えてみました。

    温室効果ガス1990年比25%削減は可能か?
    http://d.hatena.ne.jp/skymouse/20090915/1252948446

    私の案では、特に問題もなく削減が可能と見ています。
     
    削減項目

     電気     :1.88億トン(地熱/太陽電池/風力/人口減少/LED/ペアガラス)

     ガソリン・軽油:0.92億トン(電気自動車/太陽電池)

     鉄鋼生産   :0.62億トン(ハイテン化)

     森林吸収分  :0.35億トン(諸外国よりも特別に多く割り当てられている)

     灯油     :0.14億トン(ペアガラス)

     牛のげっぷ  :0.07億トン(特殊な配合飼料)

     合計     :3.98億トン(2020年の温室効果ガス削減目標)

    この案のキモは、グリーンバンクという銀行で、石油の暫定税率や電気に課税したお金をグリーンバンクにプールし、無利子融資をするという案です。手持ちのお金がなくても、グリーンバンクによる無利子融資によってスムーズに自然エネルギーや省エネ設備の導入が可能となると言う案です。もし興味がおありでしたらお読みください。