「光の道」についてのまとめ - 池田信夫

2010年06月18日 12:33

アゴラでは、延々と「光の道」をめぐる論争が続いてきましたが、きのうの孫正義社長と夏野剛氏との討論で「合意しないことに合意した」ので、これまでの論点をまとめておきます:

  • 全世帯をFTTH化するというソフトバンクの計画は、NTTなどの合意を得ておらず、今後も得ることがきわめてむずかしい。

  • NTTの構造分離はFTTHとは論理的に別であり、これをバンドルするとソフトバンク案はさらにむずかしくなる。
  • 他方、交換機を撤去してオールIP化する計画は、NTTも今年の秋に出す予定で、ほとんどの関係者の合意が得られるだろう(これは全員が合意)。
  • 全国をブロードバンド化するコストも、FTTHでは3兆円だがDSLなら600億円ですむので、FTTHの義務づけは効率が悪い(孫氏は「DSLのコストはもっと高い」とのこと)。
  • 緊急の問題は、来月にも結論が出て、その後は10年ぐらい変えられないUHF帯の周波数割り当て。
  • 日本の周波数割り当ては、電波部が密室で決めるため、きわめて不合理であり、抜本的な見直しが必要だ(全員が強く合意)。


ソフトバンクの「光の道」提案は、アイディアとしてはおもしろいので、NTTが構造分離ではなく連結子会社(機能分離)でやることを検討してはどうでしょうか。孫氏は「NTTがやったのでは公正競争が担保できない」とのことですが、これは総務省が内部補填を禁止するなどの規制を行なえばよい。構造分離のような「外科手術」をやってしまうと、後戻りできなくて危ない。

ただNTTの社員は、FTTHの採算性についてソフトバンクほど楽観的な見通しをもっていません。3兆円もの設備投資を政府の規制によって行なうことはきわめてハイリスクで、失敗した場合の責任を取らされるのはたまらない、というのが正直なところでしょう。したがって最終的には、やはり経営責任の所在が問題です。特に失敗したらどうするのか、赤字を誰が補填するのか、という問題が残ります。「税金を1円も入れない」とすると、NTTの株主がそのリスクを負担するかどうかが問題です。特に大きな比重を占める外資系ファンドが拒否したらできません。

そういうわけで、私の提案は次のようなものです:

  • まず今の周波数の割り当てを凍結し、全帯域にわたってゼロベースで見直す。

  • NTTのインフラのオールIP化を「10年後」ではなく前倒しで進める。
  • FTTHは中長期の課題として、需要の動向をみながら進める。

インフラ会社の構造分離は(私も含めて)多くの人が今まで提案してきたものですが、私はもう古いと思います。今や有線のインフラがユニバーサルサービスの意味をもたないからです。むしろ分離するならドコモでしょう。夏野さんもいうように、実質赤字の東西会社にドコモが巨額の内部補填を行なっていることが、ドコモの士気を低下させるとともに東西会社の合理化を遅らせています。

私はまじめな話、政府がNTT法を廃止して持株をすべて放出し、ソフトバンクが(ドコモと協力して)NTTを買収するのがベストの解だと思います。これによって日本の資本市場が活性化すれば、「光の道」よりはるかに大きな経済効果があるでしょう。

池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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