NTT法を廃止して情報通信法に統合せよ

2010年11月07日 11:23

ソフトバンクの提案している「光の道」について、私がソフトバンクがNTTを買収しては?と提案したところ、孫社長から「池田さんが政府を説得して来れるなら買収資金は用意しますよ」という返事をいただきました。私はかねてから「光の道」をソフトバンクのリスクで行なうなら賛成すると言ってきたので、これは大きな前進です。


まずNTT法を廃止して完全民営化すべきだという点については――原口前総務相やNTT自身を含めて――多くの専門家が賛成しています。情報通信法の当初の構想でも、「NTT法のような特殊会社法ではなくレイヤー別の一般法で規制すべきだ」ということで総務省の改革派は一致していました。むしろNTTが自由になることで競争条件が不利になることを恐れる同業他社の反対がネックなので、ソフトバンクが廃止に賛成するというのは大きい。

もちろんNTTを完全自由にするわけにはいかないので、情報通信法案を考え直して通信規制をこれに統合することが考えられます。この場合、インフラ(物理層)への公平接続を担保するためには、シェアの大きいインフラについて(最小限度の)非対称規制を行なうことも考えられるでしょう。「水平分離」に反対してきた放送業者も、今度の放送法改正では賛成に回ったので、通信・放送全体をレイヤー別に規制して個別の業法を廃止するする当初の情報通信法に戻すことが望ましい。

NTT法を廃止して政府が33.7%の持株をすべて売却すれば、NTTは普通の民間企業になります。このときソフトバンクが政府持株の買収を提案し、その価格が他の事業者より高ければ、政府は応じなければならない(公取委の審査は必要でしょう)。NTT株には外人株や流動株が多いので、ソフトバンクがTOBをかければ、50%を超す株式を取得することは不可能ではありません。NTT法が廃止される見通しが立てば、内外のファンドからLBO資金を調達することも可能でしょう。

時価総額2.9兆円のソフトバンクが5.8兆円のNTTを買収するとすれば、日本では史上最大ですが、世界のM&Aの中では、ボーダフォン=マンネスマンやAOL=タイム・ワーナーの半分程度です。以前の記事でも書いたように、世界の通信業界では兆円単位の企業買収は珍しい事件ではなく、新興企業が古い企業を買収することによって業界が再編されてきました。

NTT法の廃止と政府持株の売却によって資本市場が活性化すれば、成長率を引き上げる要因になります。むしろ論議になるのは、NTT法の廃止で外資規制(20%)がなくなると、チャイナモバイル(時価総額はNTTの2倍以上)などの外資系企業が政府持株を買収することでしょうが、この場合は中国も外資規制を撤廃することを条件にすればよい。

日本の通信業界が世界から置き去りにされている一つの原因は、半官半民のNTTが強く規制され、県域ごとに分断されたインフラで非効率な経営を強いられていることです。中核となる東西会社は海外事業も禁止されているので、ドコモが孤軍奮闘していますが、NTT法の規制で株式交換による企業買収ができないため、ITバブルのときは現金で買収して大損害をこうむりました。

現在のNTT経営陣はよくやっていると思いますが、強い規制と余剰人員が重荷となって自由な経営ができない。IP化についても移行期間15年という計画を発表しましたが、これはドッグイヤーで100年。このままでは日本は、中国に追い抜かれます。日本のICT産業はほとんどの分野で連敗しており、通信サービスで失敗すると、もう未来はありません。この際、NTT法を廃止して自由な経営を可能にし、その価値をもっと高める経営者が代わって経営することを含めた大改革が必要です。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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