J-POPに未来はあるか

山田 肇

日本レコード協会の統計によれば、2012年の音楽ソフト生産金額は、CD等のオーディオが2277億円、音楽ビデオ1960億円、合計4237億円である。2002年には、順に4431億円、1359億円、5790億円であった。音楽ビデオが伸びたもののオーディオの落ち込みが激しく、合計で市場規模は3割ほど縮小したことがわかる。

それでは、有料音楽配信の市場は成長しているのだろうか。同協会の調べでは、2012年にはネットダウンロード180億円、着うた348億円、その他も併せ合計543億円である。統計が発表され始めた2005年は合計343億円だったから、成長は意外に鈍い。

ミリオンセラーも減少した。2002年にはアルバム15、シングル1がミリオンを記録したが、2012年はアルバム5、シングル5である。2012年にはシングルは、すべてAKB48であった。アルバムはMr. Childrenが二枚、ほかはコブクロ、AKB48と少女時代。同じアーティストの作品を12曲連続して聞くという習慣が、人々から失われたのかもしれない。


一方で、日本レコード協会では把握できない、ゴールデンボンバーに代表されるインディーズの市場が存在する。多くの若者がインディーズに挑戦しているが、千人単位でファンができれば何とか生活できる。

ところで、コンサート市場は成長を続けている。『情報メディア白書2013』によれば、2011年の総売上額は1596億円で、2002年の815億円から倍増した。観客一人当たりでは4883円が5756円に伸び、この間にチケット代が上昇したことがわかる。

日本レコード協会は、違法ダウンロードが音楽ソフトの売れ行き不振を招いたと主張してきた。しかし、上の数値を眺めていると、人々の音楽への接し方が変わってきたように思われる。音楽ソフトよりもライブイベント、有名歌手よりも大好きなインディーズといった具合に。そうだとすると、ライブに観客を呼ぶために無料配信するインディーズバンドは、正しい方向を向いていることになる。ちなみに、Muzieからは、3万以上のアーティストの20万曲以上が無料配信されている。「初音ミク」に象徴されるボーカロイドも多くの関心を集め、音楽の新たな楽しみ方を生み出している。

音楽産業は今後、どのように動いていくのだろうか。J-POPに未来はあるのだろうか。ICPFでは、最近『誰がJ-POPを救えるか?』を刊行された麻生香太郎氏をお招きして、5月22日にセミナーを開催する。どうぞ、ご来場ください。

山田肇 -東洋大学経済学部