デジタル教科書の導入に関する辻元氏の記事を読んだが、ぼくには理解できなかった。辻氏は「デジタル教科書の優れた点をデータで示すべき」としているが、今さら何を言っているのだろう。
中学英語について、学習指導要領は、正しい英語の音声が身に付くように視聴覚機器を活用したり、ネットを使って教材に関する資料や情報を入手したり、電子メールによって情報を英語で発信したりすることを奨励している。小学校理科では、学習指導要領の解説に次の記述がある: 「人の体のつくりと運動」においては、骨格模型や人体模型などを中心にして学習が展開されることになるが、そこにコンピュータシミュレーションなどの動画を組み合わせることによって、骨と筋肉のつくりと動きの関係の理解の充実を図ることができる。
このように、学習指導要領はすでにデジタルの活用を推奨しているのだが、これは教育効果が明らかだからではないのか。
今までは、紙の教科書は視聴覚教材やドリルと分離して提供されてきた。一方、デジタル教科書は、ワンクリックで視聴覚教材やドリルにジャンプする、教科書と教材が混載されたコンテンツである。例を挙げれば、英語なら文章をクリックするとネイティブの音声が流れるもの、理科なら卵からカエルまでの成長過程を短い動画で提示するもの、算数なら四則演算のドリルが組み込まれたものである。
デジタル教科書の導入は、確かに現状の変更である。しかし、すでに学習指導要領でも推奨されている教育方法を取り入れるにすぎない。なぜ、今さら徹底的な議論が求められるのか。
付言するが、デジタルの利点はメディア変換が容易なことである。ルビを表示する、音声で読み上げる、といった機能を付加できるので、難読症(ディスレクシア)の子供たちの教育に役立てようという研究も進んでいる。
山田肇 -東洋大学経済学部-