「核のゴミ」って何?

2013年11月18日 23:37

小泉元首相が「原発をすぐゼロにしろ」という発言をして、元気のなくなった反原発派の人々が久しぶりに盛り上がりました。でもその中身を聞いてみると、小学生みたいなまちがいだらけで困ったものです。

彼の日本記者クラブの講演を聞くと、半分近くが「核のゴミを捨てる場所がないから、原発をゼロにすべきだ」という話です。核のゴミというのは正確にいうと、原発で燃やした使用ずみ核燃料のウランやプルトニウムです。これは再利用する方法もあるので、本当はゴミではありません。

日本は核燃料サイクルで使用ずみ核燃料を再処理して、また使うことにしています。次の図は小学生にはむずかしいと思いますが、要するに燃やした核燃料から再処理工場で核燃料(プルトニウム)を取り出して、それを高速増殖炉の核燃料として使うのです。石炭を燃やしたら燃えがらになってしまいますが、その燃えがらを元の石炭に変えられるという夢みたいな話です。


ただ、この夢はなかなか実現しません。高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」は、もう20年近く止まったままで、動いても採算がとれるかどうかわかりません。これが設計されたころは、ウランは80年ぐらいでなくなるといわれたのですが、今は300年から700年分ぐらいあるといわれます。ほぼ無限にある海水の中のウランを取り出す費用も下がってきたので、こんな大がかりな工場で再利用する必要がないのです。

そこで再処理をやめて、使用ずみ核燃料をそのままゴミとして捨ててしまおうという話が出てきました。これを直接処分といいます。小泉さんが視察に行ったフィンランドの最終処分施設は、実際に使用ずみ核燃料を地下に埋めています。別に安全性には問題なく、なぜ小泉さんが「これはだめだ」と思ったのか、よくわかりません。

一番おかしいのは、原発ゼロにしてもゴミはなくならないということです。これは小学生でもわかりますね。「ゴミの捨て場所がない」という話が本当だとしても、それは原発ゼロにする理由にはなりません。すでに日本には1万7000トンの核のゴミがあるので、それを捨てる場所は決めないといけません。

小泉さんは何をかんちがいしているのかよくわかりませんが、たぶん世の中でよくいわれる「ゴミの捨て場所がなくなるから原発の運転を止めるべきだ」という話とごちゃごちゃにしてるんだと思います。今は核のゴミは原発の中のプールで冷やしているのですが、これはあと6年ぐらいでいっぱいになります。

しかし運転を止めても、ゴミはなくなりません。プールに置いてある状態は危ないので、埋めたほうがいいのです。逆に原発を動かすとゴミは増えますが、広い最終処分場をみつければ、動かしても止めても同じことです。小泉さんは「政治が決断すれば原発ゼロにできる」といいましたが、それなら政治が決断すればゴミ捨て場ぐらい決まるでしょう(実は内々に決まっています)。

彼は「10万年後の安全に責任がもてない」というが、そんな責任をもつ必要はありません。いま候補地になっている場所は山の中で、万が一地震でゴミの入れ物が割れても、海にもれることはありません。プルトニウムは水にとけないので、地下水をよごすこともありません。

前にもこども版で書いたように、プルトニウムの経口毒性(飲んだときの毒性)は水銀などより小さいので、マグロのほうが危険です。プルトニウムは空気にまじって吸い込んだら危険ですが、地下数百メートルのところにあるプルトニウムが空気中に出ることはありません。

これはとても簡単なまちがいだと思うのですが、なぜか自民党の人も小泉さんに遠慮して指摘しません。なんかアンデルセンの有名な童話みたいですね。だれか小泉さんに「王様は裸ですよ」といわないと、彼もかわいそうです。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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