アスピリンは大腸がんを予防するか

2015年08月19日 13:08

パーキンソン病の治療薬の一種であるアマンタジンが、日本ではインフルエンザの治療薬としても認可されたように、もともとはまったく別の病気治療のために開発された薬が違う病気にも効果があることがわかることはよくある。ちなみに、アマンタジンのインフルエンザ治療では、副作用などに注意しなければならない。

頭痛薬としてよく知られるアスピリン(aspirin、アセチルサリチル酸)は、非ステロイド性の抗炎症鎮痛剤だが、頭痛だけではなく関節炎や痛風、生理痛などや手術後の鎮痛剤として使われる。ちなみに、アスピリンはドイツのバイエル社が名付けた商標名だ。

ヤナギの樹皮にサリチル酸が含まれていることから、ヤナギが鎮痛剤となることは古代からよく知られていた。しかし、単なるサリチル酸は副作用が強く、1897年にアセチル化させてアセチルサリチル酸に合成したバイエル社により医薬品となった。

このように長い歴史を持つアスピリンだが、抗炎症性と鎮痛というその薬理機能が解明されたのが1971年のことだ。アスピリンは、炎症と発熱を引き起こし、痛みを感じるための伝達物質プロスタグランジン(prostaglandin)を抑制する。これらの発見者らは、1982年のノーベル医学生理学賞を受賞している。もちろん、アスピリンにも妊娠後期などには使用しないなどの禁忌がある。

表題の記事で紹介している研究は、大腸がんに高リスクでかかる可能性のある遺伝子変異を持つ人に対し、定期的にアスピリンを投与することでそのリスクを低減させることができるがわかった、というものだ。英国のリーズ大学やニューカッスル大の研究者らによる研究。

この遺伝子変異はリンチ症候群(Lynch Syndrome、遺伝性非ポリポーシス性大腸がん、Hereditary Non-Polyposis Colorectal Cancer、HNPCC)と呼ばれ、遺伝性腫瘍としてよく知られていて大腸がん患者の2~5%程度がこの遺伝子変異を持つ。また、約80%は一生のうちに大腸がんを発症し、女性の場合、20~60%が一生のうちに子宮内膜がんを発症する、という報告もある。また、大腸がんは日本では女性のがん(リンチ症候群患者を含む)の死亡率の第1位だ。

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「Aspirin reduces obesity cancer risk」という英国リーズ大学のリリースページより。

記事の研究では、16カ国、43機関の約1000人の患者を10年にわたって調べている。リンチ症候群で肥満した患者は肥満していないリンチ症候群患者より高リスク(2.75倍)で大腸がんにかかるが、定期的にアスピリンを服用する肥満したリンチ症候群患者は肥満していないリンチ症候群患者と同じリスクに下がったようだ。

肥満していないリンチ症候群患者のアスピリン服用によるリスク低減につながるかどうかが問題だが、研究者らは3000人規模の世界的な調査を続ける。がん化と慢性炎症の関係はよく知られているが、もしかするとアスピリンによる抗炎症作用は大腸がん以外にも効果があるのかもしれない。

ScienceDaily
Aspirin reverses obesity cancer risk


BitTorrent と DDoS 攻撃の関連性: 放置すると、その UDP が悪用されるかもしれない
Agile Cat ─ in the cloud
ファイル共有ソフト「BitTorrent」は、その高速な処理と多くのユーザーが多種多様なクライアントソフトでデータをアップすることによる量的な効果で一気にこの手の標準になった。なにしろ人気のあるファイルであればあるほどダウンロードするスピードが上がるわけで便利なことこの上ない。しかし表題の記事では、このBitTorrentに重大な脆弱性がある、と警告している。これはまさに人気があるファイルへのアクセスを逆手にとったもので、メリットはデメリットとウラオモテ、というありがちな話だ。

Healthy mood spreads through social contact, depression doesn’t
PHYS.ORG
類は友を呼ぶ、などと言うが、この記事で紹介している研究によれば、健全な友人たちに囲まれていることが、うつ病の治療に効果的らしい。重要なのは、健全な気分、雰囲気といったものがソーシャルネットワークで広がり、その結果、うつ病にかかっている人間も癒やされる、という循環になっていることだ。これを逆に言えば、ネガティブな人間にばかり囲まれていると精神の病になりやすいのだろうか。いずれにせよ、うつ病などの社会的なコストは大きな悪影響を与えている。こうした研究は、予防のためのヒントになるのかもしれない。

音楽を聴くとハードトレーニングがつらくなくなる
マイナビ 学生の窓口
よくイヤホンを耳に突っ込みながらジョギングをしている人間がいる。車や他人にぶつかりそうになったりしていて危ないが、音楽を聴きながら走っているのだろう。音楽を聴くと、ヘロインやモルヒネなどと同じ鎮痛性の脳内物質オピオイドというのが出るらしい。この記事によれば、なぜ身体的なトレーニングをする人間が音楽を聴きたがるのか、という理由がこの物質にあることがわかったようだ。ジムなどでイヤホンをするのはかまわないが、公道で聴覚をシャットダウンさせるのは止めたほうがいい。

<記事紹介> 論文の査読を引き受けたが期限に間に合わない! あなたならどうする? / エディターのアドバイス
ワイリー・サイエンスカフェ
『nature』や『science』などの学術雑誌や科学雑誌では、投稿された論文を評価した上で掲載するのが普通だ。これを査読(peer review)というが、この過程を経て問題がないと評価されて論文は掲載される。査読をするのは、その論文と同じ分野の研究者、とりわけライバルの研究者であり、通常は無報酬で査読者となる。査読者からのアドバイスにより論文が修正されたりデータが追加されたりすることがよくある。もちろん、論文の重大な間違いがあったり、新規性がなかったり、価値が低いと評価されれば投稿論文が日の目を見ることはなくなるか、よりインパクトファクター(IF、impact factor)の低い雑誌でなんとか掲載されたりする。査読者も同じ分野の忙しい研究者である場合がほとんどで、しかも無報酬が普通なので、こうしたジャーナルの役割によほど理解のある人間でなければ受けない。この記事では、査読を引き受けたのはいいが、期限に間に合わなくなったらどうすればいいのかを教えてくれているが、他人の論文の重箱の隅をつつくようにして査読するのは大変だ。いい加減に査読すれば、STAP細胞騒動のような原因になるなどの責任もある。なかなか微妙で難しい立場が査読者、というわけだ。


アゴラ編集部:石田 雅彦


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