射倖契約は犯罪なのだから

2016年01月26日 11:30

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いまどき、射倖という言葉を知っている人は、どれほどいるのか。しかし、金融の世界には、オプション取引、保険契約、保証契約など、射倖契約は数多くある。


射倖契約というのは、偶然の利益を得ることを目的とした契約で、賭博や富くじが典型例だ。偶然の利益というのは、利益が不確実な事象の生起に依存するものだから、当然に、賭け、あるいは投機の要素を含む。

射倖契約の構造は、偶然の事象の生起に関し、契約当事者の一方が、他方に対して、あらかじめ定めた給付の履行義務を負うものである。例えば、骰子の目が偶数ならば、AがBに対して、100円を支払うという約定が、射倖契約だが、これは、明瞭に骰子賭博である。

射倖契約は、賭博や富くじなど、基本的に、刑法では犯罪とされる。しかし、その全てが犯罪とはならない。別の法律等に根拠があって、刑法の適用を排除しているものもあるのだ。

例えば、死亡を含めた事故の不確実性についての保険契約、債務不履行の不確実性についての保証契約、金融商品等の価格変動の不確実性についてのオプション契約など、今日の経済金融取引のなかで重要な機能を演じているものは、契約構造上は、賭博と同様な射倖契約である。ただし、これらの契約には、それぞれの根拠法があって、合法性が保証されているのである。

では、そもそも、なぜに、射倖契約は、原則として、犯罪なのか。また、なぜに、競馬、宝くじ、保険、保証、オプションなど、同じ射倖契約でも、合法化されるものがあるのか。

これは、まずは、法政策的な問題である。競馬のように、合法化されている賭博がある以上、賭博そのものに本質的な違法性や反社会性があるのではないと思われる。要は、社会慣習や国民感情、あるいは国民道徳や社会規律の問題なのだ。

酒や煙草が合法で、麻薬が違法であることに、本質的な差を求めることはできない。事実、米国では、酒が違法であった時期もある。賭博についても、合法性の範囲は国によって違うし、日本にもカジノ解禁論がある。

なお、これは、被害者のいない犯罪の問題として、刑事政策の難問でもある。賭博や麻薬を禁じる背景には、組織犯罪集団を禁圧する目的もあると考えられるが、麻薬に典型的にみられるように、また禁酒法時代の米国のように、逆に麻薬や酒の違法化が犯罪集団の資金源を作っている側面もあるわけだ。

保険、保証、オプションなど射倖契約は、法政策上、経済取引としての社会的必要性に基づいて、一つの制度として、取引の枠組みが設けられているのである。故に、逆に考えれば、法律の形式要件の問題として、合法的な射倖契約となっていても、その実質を評価したときには、正当性を欠いて、社会的に許容され得ないような保険、保証、オプションも、あり得るということである。

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
HC公式ウェブサイト:fromHC
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