米6月ミシガン大消費者信頼感・速報値

ミシガン6月

米6月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値は94.3と、市場予想の94.0を上回った。2015年6月年以来の高水準となる前月の94.7と、ほぼ変わらず。内訳をみると、現況指数は111.7と前月の109.9を超え2005年7月以来の高いレベルだった一方、見通し指数は83.2と約1年ぶりの高水準である前月の84.9を下回った米5月雇用統計後に米景気減速の懸念が台頭しつつ、米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が6日の講演で今週14~15日会合の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ懸念が後退。現況指数を中心に、センチメントを下支えしたとみられる。

原油先物が51ドルと約10ヵ月ぶりの高値に到達する過程にありながら、インフレ見通しは1年先につき2.4%と前月と変わらず。2009年9月以来の低水準を維持した。5−10年先に至っては前月の2.5%から2.3%へ引き下げられ、過去最低を更新した。

ミシガン大学の主席エコノミスト、リチャード・カーティン氏は、今回の結果を受け「家計が強く2007年以来で最高だった一方、米経済見通しが弱かった」と振り返る。後者については「雇用増加のペースが持続的に減速すれば、消費を抑制させ貯蓄にまわしかねない」と指摘。ただし、全体的に個人消費見通しの大勢が変わるとは見込んでおらず、2016年の個人消費見通しを「2.5%増」、2017年は「2.7%増」で据え置いた。

ミシガン大消費者信頼感、見通し指数が下向きヘッドラインの伸びを抑制。

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(作成:My Big Apple NY)

・1年先の家計見通し指数 125<前月は128と直近で最高
向上する 35<前月は37
変わらず 51=前月は51、悪化する 10>前月は9

・所得と物価の伸び率に対する1−2年先の家計指数は84>前月は82
所得の伸びが物価を上回る 26>前月は24
所得の伸び率と物価が同じ 31<前月は32
所得の伸びが物価を下回る 42=前月は42

・所得が1年先に拡大するとの回答
今回 49.9%、直近で最高>前月は49.8%

・1年先のビジネス見通し指数 103<前月は106
向上する 25、少なくとも1年ぶりの高水準>前月は24
変わらず 48<前月は55
悪化する 22>前月は18

・1年先の失業率見通し指数 93<前月は97
低下する 18<前月は21
変わらず 56>前月は54
上昇する 25>前月は24

・1年先の金利見通し指数 43<前月は50(低下を見込む場合に指数は上昇)
低下する 7>前月は6
変わらず 28<前月は37
上昇する 64、5ヵ月ぶり高水準>前月は56

・1年先のガソリン価格指数 20.0、5ヵ月ぶり低水準<前月は21.2(値上がりを見込む場合に指数は上昇)
下落する 5>前月は4
変わらず 35<前月は37
上昇する 59>前月は58

・自動車購入指数 144<前月は152
買い時 70>前月は74、4ヵ月ぶりの高水準
分からない 4=前月は4 買い時ではない 26>前月は22、4ヵ月ぶりの低水準

・住宅購入指数 155<前月は156
買い時 76<前月は77
分からない 3>前月は2
買い時ではない 21=前月は21

・主要機器 167、7ヵ月ぶり高水準>前月は162
買い時 79、5ヵ月ぶり高水準>前月は78
分からない 9>前月は6
買い時ではない 12、直近で最低<前月は16

――米6月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値は、以下の興味深い点が浮き彫りとなりました。

1)1年先の家計見通し指数は低下も、所得と物価の伸び率を踏まえた1−2年先の家計見通しや所得が1年先に拡大するとの回答も上昇
2)1年先のビジネス見通し指数をはじめ1年先の失業率見通し、1年先金利見通しは全て低下、1年先及び5-10年先インフレ見通しに反し金利上昇懸念の台頭を現す
3)1年先のガソリン価格が上昇する見通しも増加
4)購入見通し指数は金利上昇懸念から住宅と自動車が低下も、主要機器が直近で最高

米6月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値は、現況指数が2005年7月以来の高水準を達成した割に見通し指数がさえず、数字より楽観度が後退したように見えるのは筆者だけでしょうか。しかも金利に始まりガソリン価格は上昇を意識し、ビジネスをはじめ失業率の見通しですら前向きな意見が後退しています。

アトランタ地区連銀が発表した米4-6月期GDP予想値は2.5%で据え置き、1-3月期から回復が見込まれます。ミシガン大学のカーティン教授の2016年個人消費予想値2.5%増に届く期待がくすぶる半面、米6月新車販売台数に急ブレーキが掛かれば暗雲が垂れ込めそうです。

▽米5月財政赤字は予想以下、カレンダー要因が影響

米5月財政収支は前年同月比525.07億ドル赤字と、市場予想の560億ドルの赤字を下回った。前年同月の840.68億ドルの赤字からは、37.5%減少している。米議会予算局(CBO)によると、5月1日が週末にあたるなどカレンダー要因が影響したという。歳入が5.8%増の2246.03億ドルだったところ、歳出が6.5%減の2771.11億ドルとなり赤字縮小につながった。

年度初来(2015年10月~2016年3月)までの財政赤字は前年同期比11.0%増4070億9900万ドルと、3ヵ月連続で増加を示す。CBOの予想では、2016年度(2015年10月~2016年9月)の財政赤字は5440億ドル。2015年度の財政赤字は9%減の4390億ドルと2007年以来で最低だったが、7年ぶりに増加する見通しだ。2015年12月に企業向け優遇税制法案が通過したほか、2015年11月に合意した2017年度までの予算案で強制削減を上回る支出を承認し、裁量支出も2016年度に500億ドル、2017年度に300億ドル増額することを盛り込んだため、赤字拡大が見込まれている。

(カバー写真:Nika Vee/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年6月13日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。